丸山です。
OracleとGoogleのAndroidをめぐる訴訟が、新しい展開を見せていますので、
トピックだけ簡単に紹介します。Androidにとっても、Javaにとっても、重要な
内容を含んでいますので、JAGとJJUGの両方のMLにクロスポストしています。
お許しください。
【これまでの流れ】
2010年の8月に、Oracleは、Javaに関する7件の特許を侵害しているとして、Googleを
訴えました。特許をめぐるこの裁判は、今年3月に、Oracleの一部の特許請求が米特許
商標局(USPTO)により却下されたことを受けて、Oracleが申立ての一部を取り下げ、
2件の特許について争っていました。そのうち一件の特許は今年12月に期限切れになります。
裁判所は、両者に4月13日までの和解を勧告。Googleは、和解案を受け入れ、「特許
侵害が認められれば、280万ドルを支払う」ことを表明。Oracleは、金額が低すぎると、
それを拒否し、新たな訴えを起こします。
【APIの著作権をめぐる争いに】
新しい裁判では、特許権侵害が主要な争点だったこれまでとは一転して、Oracleは、
Androidが、Javaの、次の37のAPIを利用していることが、著作権の侵害にあたるとして、
10億ドルの損害賠償を求めます。
java.awt.font, java.beans,
java.io, java.lang,
java.lang.annotation, java.lang.ref,
java.lang.reflect,
java.net, java.nio, java.nio.channels,
java.nio.channels.spi,
java.nio.charset, java.sql, java.text, java.util,
java.util.jar,java.util.logging, java.util.prefs,
java.util.regex, java.util.zip, javax.crypto,
javax.crypto.interfaces, javax.crypto.spec,
javax.net, javax.net.ssl, javax.security.auth,
javax.security.auth.callback, javax.security.auth.login,
javax.security.auth.x500, javax.security.cert, javax.sql,
java.nio.charset.spi, java.security,
java.security.acl, java.security.cert, java.security.interfaces,
java.security.spec
こうした展開は、議論を巻き起こしています。
"Can APIs be Copyrighted?"
http://www.infoq.com/news/2012/04/apis-copyrighted
を参照ください。
僕の考えです。プログラムのコードに著作権があるのは当然のことです。
オープンソースのGPLでもAPLでもそのことを前提としています。
ただ、今回のOracleの主張は、言語のAPI自身も著作権で保護されるべき
だというものです。もし、そうした主張が認められるなら、ScalaもJRubyも
Groovyも、Oracleの著作権を侵害していることになります。
Simon Phipps "If Oracle wins its Android suit, everyone loses "
http://www.infoworld.com/d/open-source-software/if-oracle-wins-its-android-suit-everyone-loses-190312?page=0,2
【Joshua Bloch vs. Mark Reinhold 】
多分、今日、GoogleのJoshua BlochとOracleのMark Reinholdが、証言台に
たっているはずです。今回の裁判で、APIの著作権と並んで、一つの争点に
なっている、Androidが、Sun/Oracleのコードとは独立に本当にスクラッチ
から書かれたのかという点で、Joshuaは告発されています。
Oracleは、Joshuaの手になる次のAndroidのコードTimSort.javaの一部が、
Sunのコードから、無断で利用されたものだと主張しています。もっとも、
Sunのコードといいますが、このコードは、Sun時代のJoshua自身が
かいたものだそうです。9行の短いものなので引用します。
private static void rangeCheck(int arrayLen, int fromIndex, int toIndex) {
if (fromIndex > toIndex)
throw new IllegalArgumentException("fromIndex(" + fromIndex +
") > toIndex(" + toIndex+")");
if (fromIndex < 0)
throw new ArrayIndexOutOfBoundsException(fromIndex);
if (toIndex > arrayLen)
throw new ArrayIndexOutOfBoundsException(toIndex);
}
Joshua BlochとMark Reinholdという、Javaの世界のエースたちが、会社の看板を
しょっているとはいえ、こう言う形で法廷で争うのは、僕には、悲しいことです。
【Blank Page?】
今週、法廷にたったGoogleのCEO、Larry Pageの証言は、さえないものだったようです。
「Androidは、重要だけど、Googleにとって一番大事なものではない」といってみたり、
Oracleの弁護人の質問に、「覚えていない」「記憶にない」を連発して、のらりくらりと
責任逃れに終始。この日のCNBCのビジネス・ニュースは、Larry Pageの証言を、
"Blank Page?"という見出しで伝えたそうです。この裁判、アメリカのメディアの関心は高いの
ですが、「二人の億万長者の争い」という興味もあるようです。二人のLarry、今年のフォーブス
の長者番付だと、Larry Ellisonが世界6位、Larry Pageが世界24位だそうです。日本で一番の
金持ちが、世界では88位ですからね。
”Android 'important but not critical' to Google, says Page in Oracle trial ”
http://www.guardian.co.uk/technology/2012/apr/18/oracle-google-android-page-important?INTCMP=SRCH
"Google CEO Larry Page evasive in Oracle patent suit testimony"
http://www.latimes.com/business/la-fi-oracle-page-20120419,0,401138.story
【裁判資料】
アメリカでは、裁判での冒頭陳述のプレゼン資料を公開しているようです。
興味ある方、ご覧ください。
Oracleのプレゼン資料
http://www.oracle.com/us/corporate/features/opening-slides-1592541.pdf
Googleのプレゼン資料
http://www.groklaw.net/pdf3/OraGoogle-Trial-GoogleOpeningStills.pdf