先週は「アマゾンが取引先に協力金を要求」「外務省が小学館に圧力」「コミックス売上、紙と電子が逆転」などが話題に。毎週月曜恒例の、出版業界関連気になるニュースまとめ、2018年2月26日~3月4日分です。
見落としていたので改めてピックアップ。「とらのあな」もついに海外進出。先行事例として、「アニメイト」は大手出版社とタッグを組んで
2015年からタイ・バンコクで店舗展開しており、初年度黒字を見込むほど好調だという
ニュースが1年ほど前にありました。
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電子コミックスの売り上げ、紙コミックスを初めて上回る〈ITmedia ビジネスオンライン(2018年2月26日)〉 
出版科学研究所が
1月25日に発表した2017年の数字で「コミックス単行本が約13%減と大幅に減少」とあったので、概算では紙と電子の売上が逆転することはほぼ間違いないだろうという状況でした。
2月26日の発表では「紙のコミックスが同14.4%減の1,666億円」と、概算時点よりさらに落ち込んでいます。

ご覧いただいたように、数年前までは、紙のコミック誌の減り方に比べると紙のコミックスは比較的堅調でした。ところがここ数年、紙のコミックスも急減しており、これがなにを要因とするものなのか、慎重に見極めたいところ。出版科学研究所が挙げている要因は「これまで市場を支えてきたビッグタイトルの完結や部数規模の縮小、またこれに替わる新たなヒット作が出ていないこと、読者の紙から電子へのシフト」です。紙から電子へのシフト――つまり、カニバリズムが起きてしまった! というのが「わかりやすい」仮説でしょう。
ところが、このブログでも何度か書いているように、複数の電子書店の人から新刊対既刊の販売比率が「2対8」とか「
12対88」という話を聞いていて、新刊の在庫が中心となるリアル書店とはかなり売れ方が異なるようです。「棚」という物理限界のない電子書店は、典型的な「ロングテール」になっていることが推測できます。まあ、どこまでを新刊とするか? という定義次第で厳密な数字はブレる可能性がありますが。
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大学生「読書時間ゼロ」半数超 実態調査で初〈日本経済新聞(2018年2月26日)〉 
毎月楽しみな、小田光雄氏の出版状況クロニクル。ソースが提示されていないのですが、アマゾンの出版社向け事業戦略説明会で、「年間1億円以上出荷している出版社55社が新たに直接取引を開始し、累計141社、年間100冊以上出荷していて1億円未満の出版社は605社が開始し、累計2188社、双方で直取引出版社は2329社と発表」したそうです。出版社の7割近くが!? と驚いたのですが、ある出版社の中の人から、全面的に直接取引しているのはまだ二桁で、恐らく雑誌バックナンバー販売のためだけに「e託」を利用しているケースもカウントされている、というのを示唆されました。なるほど。
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講談社のマンガ6誌読み放題アプリは、出版界の危機感から生まれた 「船が沈もうとしているのに…」〈ハフポスト(2018年3月1日)〉 
14カ月で来館者数18万3200人と、目標を大きく上回っているとのこと。すばらしい。民間の書店と競合しないようなラインアップ、というのがよく考えられています。なお、私は昨年5月に、「
著作権」と「
電子出版」のワークショップ講師としてお伺いしています。印象としては「限りなく図書館に近い書店」という感じ。
図書館法では「公立図書館は、入館料その他図書館資料の利用に対するいかなる対価をも徴収してはならない」と定められていますが、公営でも書店なら販売できるわけですよね。
ちなみに原稿執筆用の「カンヅメブース」はこんな感じです。

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