■ノンパラメトリックの検定とは?
統計的検定は、母集団の分布が正規分布に従っていなければ、適用できないという制限があります。
ただし、正規分布でなくてもサンプルサイズが大きい場合、結論の正しさがあまり損なわれなければ、t検定が適用できます(これを「頑健」であるといいます)。
しかし、母集団の分布が不明でサンプルサイズが小さい場合(n数が30ぐらいまで)では、これから解説するノンパラメトリックの検定を用います。
ノンパラメトリックの検定には、数多くの手法がありますが、大半の手法は次の例で示す考え方で検定を行います。
■ノンパラメトリックの検定の種類
ノンパラメトリックの検定手法を下の表1に整理してみました。
表1 ノンパラメトリックの検定の種類
では、今回は「対応のある」場合の検定について、医学論文などでよく目にするウィルコクソンの符号順位和検定(サインランク検定)を解説していきます。
■ウィルコクソンの符号順位和検定(サインランク検定)
ウィルコクソンの符号順位和検定(サインランク検定)は、対応している標本に対して2つの母集団の分布に差があるかを検定する手法です。
【公式】
データ例(対応している標本)
順位付け
2グループ間の差を di=x1i-x2i とおきます。
絶対値diの小さい順に順位をつけます。同順位(タイ:Tie)があればウィルコクソンの順位和検定と同じように順位をつけます。
ウィルコクソンの順位和検定は、2つの母集団の分布の中央値に差があるかどうか、つまり2つの分布にずれがあるかどうかを検定する手法です。標本のデータを順位に置き換え、統計量を算出することから「順位和検定」と名付けられています。
なお、ウィルコクソンの順位和検定については、次回、詳しく解説いたします。
ウィルコクソンの符号順位和検定(サインランク検定)の解説に戻りますね。diが負のもの、正のものの順位を加算し、小さいほうの値をJとおきます。
[nが25以上]
次の統計量Tは標準正規分布に従います。
[nが25未満]
サインランク検定を用い検定します。
表2 ウィルコクソンのサインランク表
詳細は、ウィルコクソンのサインランク表を参照。
今回は、たくさんあるノンパラメトリックの検定の手法の中から、「対応のある」場合の検定について解説しました。
次回は、「対応のない」場合のノンパラメトリックの検定の手法について解説します。
t検定の種類と選び方については、『わかる統計教室 第3回 セクション12 t検定の種類と選び方』をご参照ください。