ノンパラメトリックの検定とは?

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鴨下賢一

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Feb 13, 2017, 3:06:35 AM2/13/17
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質問7 ノンパラメトリックの検定とは?(その1)

■ノンパラメトリックの検定とは?

統計的検定は、母集団の分布が正規分布に従っていなければ、適用できないという制限があります。

ただし、正規分布でなくてもサンプルサイズが大きい場合、結論の正しさがあまり損なわれなければ、t検定が適用できます(これを「頑健」であるといいます)。

しかし、母集団の分布が不明でサンプルサイズが小さい場合(n数が30ぐらいまで)では、これから解説するノンパラメトリックの検定を用います。

ノンパラメトリックの検定には、数多くの手法がありますが、大半の手法は次の例で示す考え方で検定を行います。

■ノンパラメトリックの検定の種類

ノンパラメトリックの検定手法を下の表1に整理してみました。

表1 ノンパラメトリックの検定の種類

表1 ノンパラメトリックの検定の種類

では、今回は「対応のある」場合の検定について、医学論文などでよく目にするウィルコクソンの符号順位和検定(サインランク検定)を解説していきます。

■ウィルコクソンの符号順位和検定(サインランク検定)

ウィルコクソンの符号順位和検定(サインランク検定)は、対応している標本に対して2つの母集団の分布に差があるかを検定する手法です。

【公式】

データ例(対応している標本)

データ例(対応している標本)
帰無仮説
H0:2つのグループの中央値に差はない
対立仮説
H1:2つのグループの中央値に差がある(両側検定)
H1:グループ1の中央値はグループ2の中央値より右にずれている(右側検定)
H1:グループ1の中央値はグループ2の中央値より左にずれている(左側検定)

順位付け

2グループ間の差を dix1ix2i とおきます。

順位付け

絶対値diの小さい順に順位をつけます。同順位(タイ:Tie)があればウィルコクソンの順位和検定と同じように順位をつけます。

ウィルコクソンの順位和検定は、2つの母集団の分布の中央値に差があるかどうか、つまり2つの分布にずれがあるかどうかを検定する手法です。標本のデータを順位に置き換え、統計量を算出することから「順位和検定」と名付けられています。

なお、ウィルコクソンの順位和検定については、次回、詳しく解説いたします。

ウィルコクソンの符号順位和検定(サインランク検定)の解説に戻りますね。diが負のもの、正のものの順位を加算し、小さいほうの値をJとおきます。

[nが25以上]

次の統計量Tは標準正規分布に従います。

図2 多重比較法の有意水準算出のフローチャート
両側検定
H1:|T|>Z(α/2) 対立仮説を採択
片側検定
H1:T>Z(α)   対立仮説を採択
H1:T<-Z(α)   対立仮説を採択

[nが25未満]

サインランク検定を用い検定します。

表2 ウィルコクソンのサインランク表

表2 ウィルコクソンのサインランク表

詳細は、ウィルコクソンのサインランク表を参照。

有意水準α、nに対応する値 J(α)を求めます。

〔例〕α=0.05、n=20のとき、J(0.05)=60

この値は下側%点を示しています。

リンク先の付表の( )内の数値は、帰無仮説のもとで、統計量TがJ(0.05)=60以下になる確率が0.0487であることを示しています。

両側検定
H1:J<J(α/2)
片側検定
H1:J<J(α)

今回は、たくさんあるノンパラメトリックの検定の手法の中から、「対応のある」場合の検定について解説しました。

次回は、「対応のない」場合のノンパラメトリックの検定の手法について解説します。

t検定の種類と選び方については、『わかる統計教室 第3回 セクション12 t検定の種類と選び方』をご参照ください。

今回のポイント

  • 1)母集団の分布が不明でサンプルサイズが小さい場合はノンパラメトリックの検定を用いる!
  • 2)ノンパラメトリックの検定もデータの「対応のある」「対応のない」で、検定の種類と選び方が異なる!
  • 3)ウィルコクソンの符号順位和検定(サインランク検定)は、対応している標本に対して2つの母集団の分布に差があるかどうかを検定する手法!
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