Feliciani et al. 2024 Funding lotteries for research grant allocation: An extended taxonomy and evaluation of their fairness
読むと役立つ人
研究ファンディング機関の政策担当者に特に有用です。従来のピアレビューの信頼性低下に直面する中で、どの抽選方式がどの公平性基準に合致するかを理解し、自機関に合った設計を考える手がかりになります。
この研究の面白さ・すごさ
本論文は「研究費抽選」という大胆な仕組みを、従来のピアレビューと比較しながらシミュレーションで徹底検証しました。従来の「部分抽選」も一様ではなく、抽選の入り方によって公平性や妥当性が大きく異なることを明らかにした点が新規です。特に、抽選率の設定次第で「ピアレビューに近い」結果にも「完全ランダムに近い」結果にも変わるという意外性は、制度設計の幅を広げる発見です。
注意点・前提条件
この研究はモンテカルロ・シミュレーションに基づくため、実際の資金配分の複雑さや社会的受容性は直接には反映されていません。また、検討対象は「公平性」の一部に限られ、コスト削減や多様性促進といった他の要素は今後の課題とされています。実証データでの検証が不可欠である点に留意が必要です 。
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三浦です。
例えば、スイス国立科学財団や英国自然環境研究会議(NERC)は「同点の提案を抽選で決定する(Type 1: タイブレーク抽選)」方式を導入。フォルクスワーゲン財団(独)やオーストリア科学基金は「一部はピアレビューで確実採択し、残りを抽選(Type 2: バイパス付き部分抽選)」を採用。さらに、ニュージーランド健康研究評議会やカナダの新フロンティア研究基金は「すべての資金配分候補から抽選(Type 3: 資金適格案の部分抽選)」を実践しています。理論上のType 4「完全抽選」はまだ採用例がないですし、すべきでもないように感じます。
ではまた。