「依存型意味論による自然言語の証明論的意味論」
概要:
本講演では、自然言語の証明論的意味論の枠組みである依存型意味論(DTS)について解説する。
自然言語の意味論は、Montague以来、モデル理論的意味論が主流であるが、一方で、Ranta, Francez, Cooper, Luoらによる証明論的意味論の流れが存在する。証明論的意味論では、文の意味をその真理条件ではなく、その検証条件とする立場、すなわち推論規則の「導入則」が意味を定めるという立場に立つとともに、論理式の「証明」を式の形で表すことができる。特に、理論装置としてMartin L\"ofの依存型理論を用いた場合は「証明」を表す式を論理式の中で用いることが可能となり、これは形式意味論の分野において動的意味論が導入される動機となったEタイプ照応、前提束縛といった現象に、まったく別の説明を与えることが知られている。
また、筆者らの近年の研究である依存型意味論は、Rantaらの証明論的意味論を合成的意味論として再構成したものであり、動的意味論に対して経験的、計算的に優位であることが明らかにされつつある。本講演では、依存型意味論の言語学的意義、哲学的位置付け、自然言語処理への応用について、以下の項目を初歩的な段階から解説する。
1. 現代的な型理論、特にカリー・ハワード同型による型理論と証明論の対応について
2. 依存型理論の基礎、特にΠ型とΣ型の直観的理解について
3. 依存型意味論と諸言語現象について、特にE-type照応・前提束縛と、含意関係の統一的分析について
4. 日本語CCG、および依存型意味論に基づいて実装された頑健な日本語パーザlightblueについて、統語導出と意味合成のデモンストレーション
参考文献:
Bekki, Daisuke, and Koji Mineshima, 2017. Context-passing and Underspecification in Dependent Type Semantics. In Modern Perspectives in Type Theoretical Semantics, eds. Stergios Chatzikyriakidis and Zhaohui Luo, Springer.