先月は、自発の可能用法は個体レベル叙述なのではないかという仮定の下、いろいろと質問をさせていただきました。不勉強だったせいであまりよい質問ができませんでした。その後少し文献を読んで、新たに質問を考えてみました。
自発のある方言のネイティブの方に以下の質問をしたいと思います。なお、今回は質問の量が多いので、時間のあるときに負担にならないように答えていただければと思います。
以下の質問で可能用法と時制の関係がわかると、可能用法の叙述の性質もわかるのではないかと期待しております。
よろしくお願いします。
佐々木冠
*** 質問 ***
1. 連体修飾節の時制表現
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現在の時刻午後4時であるとします。
「太郎さんは午後3時までにこの本を読んだ」ことを前提とします。この状況を表すのに適切な文を以下の文の中から選んでください。複数回答ありです。
(1) a.これは、太郎さんが読む本だ。
b.これは、太郎さんが読む本だった。
c.これは、太郎さんが読んだ本だ。
d.これは、太郎さんが読んだ本だった。
(2) a.この本を読む人は、太郎さんだ。(他の人ではなくて)
b.この本を読む人は、太郎さんだった。(他の人ではなくて)
c.この本を読んだ人は、太郎さんだ。(他の人ではなくて)
d.この本を読んだ人は、太郎さんだった。(他の人ではなくて)
--------------------------------
現在の時刻午後4時であるとします。
「このペンは午後3時まではよくインクが出ていた。この時点までは書き味もよかった」ことを前提とします。この状況を表すのに適切な文を以下の文の中から選んでください。複数回答ありです。
(3) a.これは、書かさるペンだ。
b.これは、書かさるペンだった。
c.これは、書かさったペンだ。
d.これは、書かさったペンだった。
--------------------------------
現在の時刻午後4時であるとします。
「太郎さんは3時まで仕事がいっぱいあって忙しかった。今は暇である。一方、次郎さんは3時から忙しくなって、仕事が5時ごろまで終わりそうにない。太郎も次郎も*存命*(←重要)である」ことを前提とします。この状況を表すのに適切な文を以下の文の中から選んでください。複数回答ありです。
(4) a.太郎さんは、忙しい人だ。
b.太郎さんは、忙しい人だった。
c.太郎さんは、忙しかった人だ。
d.太郎さんは、忙しかった人だった。
(5) a.忙しい人は、太郎さんだ。(他の人ではなくて)
b.忙しい人は、太郎さんだった。(他の人ではなくて)
c.忙しかった人は、太郎さんだ。(他の人ではなくて)
d.忙しかった人は、太郎さんだった。(他の人ではなくて)
--------------------------------
「佐藤先生と加藤先生は二人とも僕の恩師だ。昨年二人の恩師が相次いで亡くなった。佐藤先生は学生に優しかった。一方、加藤先生は学生に厳しかった」ことを前提とします。この状況を表すのに適切な文を以下の文の中から選んでください。複数回答ありです。
(6) a.佐藤先生は、学生に優しい先生だ。
b.佐藤先生は、学生に優しい先生だった。
c.佐藤先生は、学生に優しかった先生だ。
d.佐藤先生は、学生に優しかった先生だった。
(7) a.学生に優しい先生は、佐藤先生だ。(他の人ではなくて)
b.学生に優しい先生は、佐藤先生だった。(他の人ではなくて)
c.学生に優しかった先生は、佐藤先生だ。(他の人ではなくて)
d.学生に優しかった先生は、佐藤先生だった。(他の人ではなくて)
2. 頻度副詞との共起関係
以下に示す頻度副詞「何度も」を含む文の適格性について直感で答えてください。
(8) 僕はこのペンで何度も手紙を書いた。(自然・やや不自然・不自然)
(9) 僕は何度もお腹が痛かった。(自然・やや不自然・不自然)
(10)あの山の先端は何度も切り立っていた。(自然・やや不自然・不自然)
(11)このペンは何度もよく書かさる。(自然・やや不自然・不自然)
(12)このペンは何度もよく書かさった。(自然・やや不自然・不自然)
Kan Sasaki
ksa...@sgu.ac.jp
Sapporo Gakuin University
Bunkyo-dai 11, Ebetsu,
Hokkaido, 069-8555
Japan
お答えします。
加藤昌彦さんのフォーマットをパクりました。
ササキソウヘイ
--------------------------------------
Get the new Internet Explorer 8 optimized for Yahoo! JAPAN
http://pr.mail.yahoo.co.jp/ie8/
お忙しいところ、早速ご回答ありがとうございます。
「だいたいこうなるかな」と予想した通りのところと予想外のところがあります
が、詳しいコメントは後ほどさせていただきます。白岩さんの判定に影響がある
といけませんので。白岩さん、お時間のあるときにご回答よろしくお願いしま
す。急ぎませんのでご無理をなさいませんように。
佐々木冠
--
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
Kan Sasaki
Sapporo Gakuin University
ksa...@sgu.ac.jp
http://ext-web.edu.sgu.ac.jp/ksasaki
野島本泰
2010年3月11日20:49 Kan Sasaki <ksa...@sgu.ac.jp>:
佐々木先生、先日はありがとうございました。白岩です。
せっかくご質問をいただいたのに、昨日、一昨日と、寝ておりました。
すみません。取り急ぎ、ご質問にお答えいたします。
(内省が影響されないよう、ほかの方の回答は見ておりません。)
なお、いわゆる「発見・想起」の意味での過去形「た」の使用は、
おそらく論点がずれるので、除外してお答えします。
> *** 質問 ***
> 1. 連体修飾節の時制表現
> --------------------------------
> 現在の時刻午後4時であるとします。
> 「太郎さんは午後3時までにこの本を読んだ」ことを前提とします。この状況を表すのに適切な文を以下の文の中から選んでください。複数回答ありです。
>
> (1) a.これは、太郎さんが読む本だ。
> b.これは、太郎さんが読む本だった。
> c.これは、太郎さんが読んだ本だ。
> d.これは、太郎さんが読んだ本だった。
回答:c
「これは、太郎が読んだ本だ」
> (2) a.この本を読む人は、太郎さんだ。(他の人ではなくて)
> b.この本を読む人は、太郎さんだった。(他の人ではなくて)
> c.この本を読んだ人は、太郎さんだ。(他の人ではなくて)
> d.この本を読んだ人は、太郎さんだった。(他の人ではなくて)
回答:c
「この本読んだやつは、太郎だ」
> --------------------------------
> 現在の時刻午後4時であるとします。
> 「このペンは午後3時まではよくインクが出ていた。この時点までは書き味もよかった」ことを前提とします。この状況を表すのに適切な文を以下の文の中から選んでください。複数回答ありです。
>
> (3) a.これは、書かさるペンだ。
> b.これは、書かさるペンだった。
> c.これは、書かさったペンだ。
> d.これは、書かさったペンだった。
>
回答:b
「これは、よく書かるペンだった」
「よく」「少しは」などの副詞が共起しないとすわりが悪いです。
それと、以前、「書かったペンだ」という言い方を「わりと自然」みたいに
内省したかもしれませんが、それは取り消します。間違いでした。
連体修飾節内ではなく、述語部分を「ペンだった」にするほうが、明らかに自然です。
cは、使わなくはないかもしれませんが、「??」がつきます。
> --------------------------------
> 現在の時刻午後4時であるとします。
> 「太郎さんは3時まで仕事がいっぱいあって忙しかった。今は暇である。一方、次郎さんは3時から忙しくなって、仕事が5時ごろまで終わりそうにない。太郎も次郎も*存命*(←重要)である」ことを前提とします。この状況を表すのに適切な文を以下の文の中から選んでください。複数回答ありです。
>
> (4) a.太郎さんは、忙しい人だ。
> b.太郎さんは、忙しい人だった。
> c.太郎さんは、忙しかった人だ。
> d.太郎さんは、忙しかった人だった。
回答:なし
「複数回答あり」とのことですが、逆に「どれもなし」です。
この場合、そもそも「連体修飾+人」とはせずに、
「太郎は忙しかった」
というのが、自然です。
ただし、なぜだかわかりませんが、(わかる気もしますが、)
「3時」を「去年」のように置き換えて、
遠い過去の話にすれば、bが自然になります。
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(太郎は去年まで忙しかったが、今は暇である)
「太郎は忙しいやつだった。」
--------------------------------------------------------------
この場合でも、cはやや不自然です。
> (5) a.忙しい人は、太郎さんだ。(他の人ではなくて)
> b.忙しい人は、太郎さんだった。(他の人ではなくて)
> c.忙しかった人は、太郎さんだ。(他の人ではなくて)
> d.忙しかった人は、太郎さんだった。(他の人ではなくて)
回答:b、c
「忙しいやつは、太郎だった」
「忙しかったやつは、太郎だ」
> --------------------------------
> 「佐藤先生と加藤先生は二人とも僕の恩師だ。昨年二人の恩師が相次いで亡くなった。佐藤先生は学生に優しかった。一方、加藤先生は学生に厳しかった」ことを前提とします。この状況を表すのに適切な文を以下の文の中から選んでください。複数回答ありです。
>
> (6) a.佐藤先生は、学生に優しい先生だ。
> b.佐藤先生は、学生に優しい先生だった。
> c.佐藤先生は、学生に優しかった先生だ。
> d.佐藤先生は、学生に優しかった先生だった。
回答:b
「佐藤先生は、学生に優しい先生だった」
> (7) a.学生に優しい先生は、佐藤先生だ。(他の人ではなくて)
> b.学生に優しい先生は、佐藤先生だった。(他の人ではなくて)
> c.学生に優しかった先生は、佐藤先生だ。(他の人ではなくて)
> d.学生に優しかった先生は、佐藤先生だった。(他の人ではなくて)
回答:b、c、d
「学生に優しい先生は、佐藤先生だった」
「学生に優しかった先生は、佐藤先生だ」
「学生に優しかった先生は、佐藤先生だった」
> 2. 頻度副詞との共起関係
> 以下に示す頻度副詞「何度も」を含む文の適格性について直感で答えてください。
>
> (8) 僕はこのペンで何度も手紙を書いた。(自然・やや不自然・不自然)
回答:自然
> (9) 僕は何度もお腹が痛かった。(自然・やや不自然・不自然)
回答:やや不自然
> (10)あの山の先端は何度も切り立っていた。(自然・やや不自然・不自然)
回答:不自然
> (11)このペンは何度もよく書かさる。(自然・やや不自然・不自然)
回答:不自然
> (12)このペンは何度もよく書かさった。(自然・やや不自然・不自然)
回答:不自然
以上、回答でした。あくまで内省なので、実際の使用などとは、
ずれるところがあるかもしれません。
ほかにも、ご質問お待ちしております。
---------------------------------------------------------
大阪大学大学院文学研究科博士後期課程
白岩広行
E-mail:shir...@gmail.com
TEL:090-5185-6585
---------------------------------------------------------
質問に回答していただき感謝します。白岩さん、体調は大丈夫でしょうか。十分
休んでください。
アンケート結果の解説です。
「このペンは書かさる」が、属性叙述の表現であるならば、頻度副詞との共起関
係や時制の現れ方が、他の属性を表す表現と共通なのではないか、という予想の
もと、質問を考えました。
もうちょっと具体的にいうと、「このペンは書かさる」は、「優しい」のような
個体の属性を表す形容詞を述部とする文と共通点があり、「書く」や「読む」と
いった出来事を表す動詞や「痛い」や「忙しい」といった一時的な状態を表す形
容詞を述部とする文とは振る舞いが違うのではないかという予測のもとに、質問
を考えました。
結果は、予想通りのところとそうでないところがありました。
順序が逆になりますが、頻度副詞との共起関係から行きます。自発の述部につい
ては「書かる」と「書かさる」のヴァリエーションがありますが、「書かさる」
で代表させていただきます。
加藤さん 佐々木さん 白岩さん
(8) 僕はこのペンで何度 自然 自然 自然
も手紙を書いた。
(9) 僕は何度もお腹が痛かった。 やや不自然 不自然 やや不自然
(10)あの山の先端は何度 不自然 やや不自然 不自然
も切り立っていた。 (自然)
(11)このペンは何度も 不自然 自然 不自然
よく書かさる。
(12)このペンは何度も 自然 自然 不自然
よく書かさった。
(9)は僕もちょっと不自然と感じる例ですが、一時的な状態を表す文として仁田
義雄先生の論文から引用しました。
頻度副詞との共起関係については、(8)の能動態と(9)の一時的な状態を表す形容
詞文が、同じような振る舞いをするグループを形成し、(10)の属性を記述するテ
イル述語文と(11)(12)の自発文が同じような振る舞いをするグループを形成する
のではないかと予測しました。これは、(8)と(9)が出来事を表す文である一方
で、(10)から(12)の文が属性記述であるためです。
僕の予想は、「(8)が(10)-(11)と異なる振る舞いをする傾向があった点」(ただ
し、佐々木さんの場合はそうではありませんでした)では、あたりましたが、他
ではあたりませんでした。(9)は、(8)に比べると、僕も少し不自然に感じます
が、これは、(8)とちがって状態文であるためかと思います。
加藤さんと佐々木さんが(12)を自然と判断しましたが、解釈としては「このペン
は過去によく書ける場面が何度かあった」となりますでしょうか?
佐々木さんは(11)も自然という判断でしたが、「このペンは何度書くのに使って
も書ける状態が持続するペンだ」という解釈になりますでしょうか?
次に埋め込み文の中の時制についての質問について。
出来事を表す文の述語はその意味構造の中に出来事を項のようなかたちで持って
いるけれども、属性叙述文の述語は出来事を項として持っていないと考えられて
います(この辺の話は影山太郎先生の最近の論考に紹介されています)。かりに
そうだとすると、出来事を表す述語は、出来事を項として持っているので、埋め
込んだ場合でも時制が出やすいけれども、属性叙述文の場合、出来事を項として
持っていないので埋め込み文では現在形をとり時制は主節のほうで表すのではな
いかと考えました。
今回の質問で言うと、(1), (2)(能動態)と(4), (5)(一時的な状態を表す形容
詞)では埋め込み文でも過去形が現れ、(3)(自発)と(6), (7)(個体の属性を
表す形容詞)では、過去形は主節に現れるのではないかと予測しました。結果は
以下の通りです。
(1) c.これは、太郎さんが読んだ本だ。(加藤さん、佐々木さん、白岩さん)
d.これは、太郎さんが読んだ本だった。(佐々木さん)
(2) c.この本を読んだ人は、太郎さんだ。(加藤さん、佐々木さん、白岩さん)
d.この本を読んだ人は、太郎さんだった。(加藤さん、佐々木さん)
(3) b.これは、書かさるペンだった。(加藤さん、佐々木さん、白岩さん)
*)過去形が埋め込み文に出てくるc, dも時間副詞(さっき)をつけるとよくな
るという情報を佐々木さんからいただきました。
(4) a.太郎さんは、忙しい人だ。
b.太郎さんは、忙しい人だった。(佐々木さん、白岩さん)
c.太郎さんは、忙しかった人だ。(加藤さん、佐々木さん)
d.太郎さんは、忙しかった人だった。(佐々木さん)
(5) a.忙しい人は、太郎さんだ。
b.忙しい人は、太郎さんだった。(佐々木さん、白岩さん)
c.忙しかった人は、太郎さんだ。(加藤さん、佐々木さん、白岩さん)
d.忙しかった人は、太郎さんだった。(佐々木さん)
*)佐々木さんから、選択した文はそのままだとやや不自然で時間副詞をつけた
ほうがよくなるという情報をいただきました。
*)白岩さんから、(3b)は「去年」のような遠い過去を想定したほうがよくなる
という情報をいただきました。
(6) a.佐藤先生は、学生に優しい先生だ。
b.佐藤先生は、学生に優しい先生だった。(加藤さん、佐々木さん、白岩さん)
c.佐藤先生は、学生に優しかった先生だ。
d.佐藤先生は、学生に優しかった先生だった。
(7) a.学生に優しい先生は、佐藤先生だ。
b.学生に優しい先生は、佐藤先生だった。(加藤さん、(佐々木さん)、白
岩さん)
c.学生に優しかった先生は、佐藤先生だ。(加藤さん、佐々木さん、白岩さん)
d.学生に優しかった先生は、佐藤先生だった。(加藤さん、(佐々木さ
ん)、白岩さん)
*)佐々木さんによると(7b)は時間副詞をつければOK。(7d)は「今思い出した」
という場合などでよくなるとのことです。
(1), (2)と(3)が埋め込み文の時制に関して逆と判断された点は、予測どおりで
した。
しかし、(4), (5)と(6), (7)であまり差が出なかったのは、予想と違いました。
これは、「忙しい」が人の属性をも表せるからかもしれません。ただ、(6)の名
詞述語文で名詞を修飾する「優しい」が「優しかった」より好まれる点は「優し
い」の属性叙述の表れなのかもしれません。また、(3)の自発と(6)の属性形容詞
で時制に関して同じ特徴が見られたのは、自発の可能用法が属性叙述の述語であ
ることの傍証になるのではないかと思いました。
動詞に関してうまく行くテストが、形容詞には美味く当てはまらないということ
があるのかもしれませんし、僕の設定した例文もよくないところがあったかと思
います。いろいろ反省すべき点はありますが、能動態と自発(の可能用法)が少
なくとも時制に関して少し違う点があることは、このアンケートのデータから言
えるのではないかと思いました。そして、自発の可能用法と属性形容詞の共通点
も見えてきたような気がします。
この解説自体説明になっていないところがあるかもしれません。不明の点につい
てはどんどん突っ込んでいただければと思います。
加藤です。
解説ありがとうございました。二点ほど。
まず、次の文の判断についてです。
> 加藤さん 佐々木さん 白岩さん
> (8) 僕はこのペンで何度 自然 自然 自然
> も手紙を書いた。
> (9) 僕は何度もお腹が痛かった。 やや不自然 不自然 やや不自然
> (10)あの山の先端は何度 不自然 やや不自然 不自然
> も切り立っていた。 (自然)
> (11)このペンは何度も 不自然 自然 不自然
> よく書かさる。
> (12)このペンは何度も 自然 自然 不自然
> よく書かさった。
(11)は、「何度も」が「書か」だけにかかると考えるとちょっと自然になると思います。「何度も」が「書かさる」全体にかかると考えると変です。つまり、「何度でも書けるペンだ」の意味なら少し自然だと思います。これは、一時的状態ではなくて属性の解釈ならOKということだと思います。ただ、この意味に解釈するには、僕の判断だと、「何度でも」としないと少し不自然な感じがします。
> 加藤さんと佐々木さんが(12)を自然と判断しましたが、解釈としては「このペン
> は過去によく書ける場面が何度かあった」となりますでしょうか?
はい。そうです。ペンの性質というよりは、「そういう事態が何度か生じた」という感じで、属性ではないように思います。(12)が可能の意味を持つのかどうかは微妙なところで、僕の用語で言う「可能用法」なのか「自然発生用法」なのか判断が難しいところです。
次に、
> (3) b.これは、書かさるペンだった。(加藤さん、佐々木さん、白岩さん)
について。ペンに関する叙述である「(3) c.これは、書かさったペンだ。」は変ですが、人間に関する叙述だと、
(ア) あの人は、書かさった人だ。
は状況さえ設定すればOKです。たとえば、ものすごく難しい漢字が試験に出て、その字が書けたかどうか話題になっているときに、使えると思います。
なお、明日、明後日とAA研の研究会に出て、そのあと栃木に行きます。パソコンを持って行かないので来週なかばまで返事ができません。申しわけありません。
加藤昌彦
解説ありがとうございます。
> 加藤さん 佐々木さん 白岩さん
> (11)このペンは何度も 不自然 自然 不自然
> よく書かさる。
> (12)このペンは何度も 自然 自然 不自然
> よく書かさった。
> 加藤さんと佐々木さんが(12)を自然と判断しましたが、解釈としては「このペン
> は過去によく書ける場面が何度かあった」となりますでしょうか?
私も加藤さんと同じで、(12)を属性表現とは捉えていません。
「このペンを使ったことが過去に何度もあったが、そのつどよく書けた」という、
言わば個々の出来事を一括した表現と捉えています。
(くどくなるのを承知で言えば、上の解釈文の「書けた」は、「書けるような状態だった」
という潜在的な性質を表すのではなく、「現にインクが出た」という現実の出来事を表す
表現として使いました。)
> 佐々木さんは(11)も自然という判断でしたが、「このペンは何度書くのに使って
> も書ける状態が持続するペンだ」という解釈になりますでしょうか?
(11)は、ペンの属性を語る表現と捉えることができます。
これは、私の感覚としては、「この子は一日に何度も小便をたれる」という文が、
「この子」の属性を語る表現と捉えうるのと同じことだと思います。
ご返信ありがとうございます。
加藤さんと佐々木さんからのコメントによると(12)は属性ではない読みで可能と
いうことですね。
(12)このペンは何度もよく書かさった。
あと、加藤さんのコメントで下記の(ア)が、難しい漢字が書ける人の意味で可
能ということですが、そうすると、可能用法だと人間名詞が主語になることもあ
り得るわけですね。
(ア) あの人は、書かさった人だ。
用法間で主語の有生性に関する制限にも違いがあるのかもしれません。