IBISMLの皆様
九州大学の中村栄太です。
文化進化と知能の理論 (ICET) セミナーの案内をいたします。
ICETセミナーは、文化とその進化について関心があり、
数理によって仕組みを明らかにすることを目指す研究会です。
参加者のバックグラウンドは生物学、物理学、情報学、心理学、経済学など、
方法もシミュレーション、機械学習、実験などに渡りますが、
「文化・進化・数理」をキーワードに、異分野での交流を行います。
セミナーでは、質疑を含めて2時間弱の講演で、
その分野の基礎的な問題意識や研究の数理的な前提から始めて、
最先端の成果を紹介していただき、学際的な議論の場を提供します。
今回は定例セミナーのご案内です。どなたでもご参加ください。
日時:2026年6月11日(木)19:00-21:00(終了時間未定)
講演者:橋本 敬(JAIST)
タイトル:言語コミュニケーションにおける再帰的結合の役割:意図推測のアブダクション仮説とその実証的探究
講演概要:
人間の言語コミュニケーションには、階層性を生み出す再帰性と他者との意図共有という二つの際立った特徴がある。前者は、意味を持つ要素を再帰的に結合することにより階層的な概念構造が生成されるという性質であり、後者は、他者の言動の背後にある意図を推測・共有する能力である。この二者がいかにして統合されているかは、言語の起源と文化進化を理解するうえで重要な問いと考える。本講演では、この二者の統合モデルとして、他者意図の推測はアブダクションによりなされ、その仮説生成過程に再帰的結合が関与するという統合仮説を提示する。すなわち、再帰的結合によって構成される階層的概念構造が、観察された行為を説明しうる多様な仮説の生成を可能にし、その中から最適な仮説を選択する過程としてアブダクションが働くと考える。
この仮説を探究するため、再帰的結合が推測の多様化に与える影響、および発話解釈において実際に用いられる推論形式に関する実験室実験を紹介する。前者では、
言語的な階層操作(再帰的結合)が後続の他者心理推測の多様性を高めること、後者では、発話解釈に関与する複数の推論形式のなかでアブダクションが最も頻繁に用いられることが示された。
これらの結果は、再帰的結合が仮説生成の多様化を通じて意味や概念の創発・共創を可能にするという可能性を示唆する。さらに、言語における記号の脱接地(symbol
de-grounding)と概念空間の拡張という観点から、この枠組みが累積的なコミュニケーションの進化へ与える示唆を議論したい。
参加を希望される方は以下のアドレスに空メールを送信の上、
前日までにメーリングリスト (ML) にご参加ください。
当日までにMLでzoom linkを共有いたします。
icet-semina...@googlegroups.com
共同主宰:板尾健司(理化学研究所)、田村光平(東北大学)、中村栄太(九州大学)、新井さくら(東京大学)、齋藤悠輔(北海道大学)
HP:
https://sites.google.com/view/icetseminar/home