月のウサギ症候群:見たいものしか見えない私たち

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水谷 広

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Jun 20, 2012, 12:13:23 PM6/20/12
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 もう10年余り前のことになりますが、当時連載していた環境新聞のコラムで、「月のウサギ症候群」という言葉を提案したことがあります。

 

あり得ないことが分かっているのに、現実を無視して夢を見ていたいという病理症状をそう呼んだのですが、6月11日付の「情報ピックアップ」(http://geoeng.brs.nihon-u.ac.jp/index.html)で、この「月のウサギ症候群」を思い出しました。北極海の薄くなった氷の下で植物プランクトンが繁茂していることを捉えて、二酸化炭素の吸収が高まり温暖化が抑制されるばかりか、いずれ食物連鎖でお魚が増え漁業が栄えるというのです。(本日6月20日現在、ページは削除されてしまったようで「Page Not Found」が表示されます。)

 

この記事を載せていたサイトは、「THE CAPITOL COLUMN」というもので、政治好きの人たちが読者だと思われますが、こんなレベルの理解で大事な物事が決められているとすると恐ろしいものです。しかもこれは、政治の領域に限りません。「氷が融けて航路が開け、早くヨーロッパに品物を輸送できる上に、海底資源の採掘も安全にできる」とか「陸でも海でもメタンガスが湧いてくるので、それを集めれば居ながらにしてエネルギーが手に入る」とか「農業適地が増加するので食料も安心」という北極周辺域の温暖化に対する発想も同じようなものです。

 

今日20日付の情報ピックアップで紹介した論文(http://www.nature.com/nclimate/journal/vaop/ncurrent/full/nclimate1575.html)は、モデル計算の結果とは異なり、ツンドラでの植物生長の増加は大気中二酸化炭素を増加させるとしています。超楽観的な話はさておき、まだまだ知らない仕組みが沢山ある事は、この記事を見るだけでも確かでしょう。

 

専門家は限られた視点を深堀りするのが商売であり得意です。一旦ジオエンジニアリングの発想に取り付かれると地球システムについて殆ど知らない事さえ忘れ勝ちです。ですから特に、「月のウサギ症候群」には気をつけたいものです。

 

 

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