WANTED!ジオエンジニアリング反対論 その1/2
少し長文なので、2つに分けますこと御容赦下さい。
今月10月14日にギャラリーに展示した作品番号81は、北極海海氷の夏期最小面積がIPCCの予測にくらべて50年も前倒しで縮小している事を示しています(http://geoeng.brs.nihon-u.ac.jp/gallery.html)。
この調子では、あと数年でグリーンランド北端部分の氷を除く殆どの海氷が夏に姿を消すことになりそうです(海氷体積変化を示す作品番号51も参照下さい)。
氷の無い海が広がれば、日射が強い時期のアルベド低下、温室効果ガスである水蒸気の分圧上昇、鉛直方向の海流変化による海底メタンの不安定化、グリーンランドの氷床融解の促進、北極海の大気循環域が拡大し偏西風の蛇行に影響するなど様々な「異常(=これまでの安定状態からのズレ)」をもたらします。
リオから数えても20年。この間の「STOP THE 温暖化」努力は、北極海の氷に象徴されるように、実を結ぶどころか完全な空振りに終わっています。これに業を煮やしてジオエンジニアリングに期待を寄せる人が現れても不思議ではありません。事実、「生きている地球レポート」で知られるWWFが(2012.9.15)付け情報ピックアップにありますように、ジオエンジニアリングの研究を支持すると表明しています(http://www.huffingtonpost.co.uk/jon-taylor/geoengineering-climate-change_b_1873231.html)。
地球が生きているかどうかに関心がない人にとってもジオエンジニアリングの魅力は別にあります。ボトムラインです。
(その2/2に続く)
WANTED!ジオエンジニアリング反対論 その2/2
2012.8.31日付の情報ピックアップで紹介しているジオエンジニアリングのコストを計算した論文ですが(http://iopscience.iop.org/1748-9326/7/3/034019)、その表2には、温室効果ガスの放射強制力を帳消しにするだけ物資を輸送するコストが年間10億ドルを下回るというのも出ています。申し上げるまでもなく、僕にはコスト計算の妥当性をアレコレ言うだけの専門的知見は全くありません。そこは御専門の方の評価に待ちますが、それが確定するまでは、このような結果があること自体の重みは無視できません。
そして、この「10億ドル」で思い出すのが「1000億ドル」です。
3年前、コペンハーゲンでの気候変動枠組条約のCOP15を前にして、途上国の適応策へのコストが1000億ドルになるという世界銀行による試算が先進国からの支援額を決める目安として議論されていました(http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/8282308.stm)。こちらは、温暖化を止めるのではなく、止まらない温暖化に適応する途上国の費用です。
どちらの数字も、それなりに根拠があるのだとすると、「世界の温暖化を食い止める10億ドル」と「止まらない温暖化に途上国が適応するために必要な1000億ドル」とのどちらを選ぶかとなったら、殆どの人は前者を選ぶのではないでしょうか。「STOP THE 温暖化」の方が適応するより良いですし、片や世界全体、片や途上国だけです。そして何よりも、とんでもなく安上がりです。
これに抵抗するのは至難の技です。もし、ジオエンジニアリングに反対ならば、「適応よりSTOP」、「部分より全体」、「高いものより安いもの」という選択に負けない根拠を用意しなくてはなりません。皆さんのお知恵をお借りしたいです。
補足情報です。
今日10月15日付け情報ピックアップで、ECPR(用語集参照ください)によるジオエンジニアリングに関するワークショップのお知らせをしていますが、その開催趣旨の冒頭に「the global failure to mitigate greenhouse gas emissions」とあります(http://ecprnet.eu/Events/PanelList.aspx?EventID=7)。[注:当該ページ下部にある「ワークショップNo.18」の左端の+マークをクリックすると趣旨文がでてきます]
政治学の教育と研究をする欧州の中心的組織が二酸化炭素排出軽減策をここまで失敗と明言してジオエンジニアリングの政治課題をワークショップで取り上げるというのも、ジオエンジニアリングへの期待が高まっている兆候を反映しているのでしょう。
弁の立つ相手に通じるジオエンジニアリング反対論が切望されます。