2012.1.19付け「情報ピックアップ(http://geoeng.brs.nihon-u.ac.jp/)」で「メタンと黒色炭素の削減は一石三鳥(温暖化抑制、食料安全保障、人間健康の増進)だ」としてお知らせしましたサイエンスに掲載された24人の著者による論文ですが(注:もう一羽の鳥「経済利益」も数えて、このスレッドでは「一石四鳥」と欲張っています)、内容を僕が理解できるかというと、正直、理解できません。
その原因は、僕個人の力不足に尽きます。
そう申し上げた上で烏滸がましい限りですが、最近、理解できない論文が増えていますので(単なる歳のせい??)、それを改善するべく「オープン・レビュー」を以下に提案しますこと御容赦ください。
まず、御参考に一石四鳥論文のアブストラクトの拙訳を示します。
「対流圏オゾンと黒色炭素(煤)について様々な対策を検討した結果、メタンと黒色炭素の排出抑制に狙いをつけた14の対策で2050年までに平均地表温上昇を0.5℃抑制できることが解った。しかも、2030年以降、毎年70万から470万の人が大気汚染で死ななくて済む。また、穀物の収穫は3000万から1億3500万トンの範囲で増加する。さらに、メタン排出削減による経済的メリットはトン当たり700~5000ドルの範囲と見積もられ、通常250ドル以下とされるメタンの限界除去費用(marginal abatement costs)を遥かに上回る。以上から、これらの対策を二酸化炭素排出抑制策とあわせて実行すれば、全球で2℃の温度上昇を超えてしまうリスクをかなり小さくできる。」
つまり、この論文は、「将来世代のために現役世代が犠牲を払う従来の温暖化防止策」ではなく、「人間健康増進」、「作物増収」、「経済利益」という現世での御利益が3つもある温暖化防止策を見出したといっているのです。これは妙案です。
だからこそ残念なのは、「僕にはサッパリ解らない!」ということです。
この論文は、著者が単に多数というだけでなく、著者の所属組織が非常に広範な分野に亙っています。「NASA Goddard Institute for Space Studies」から「Joint Research Centre of the European Commission」や「Department of Economics, Middlebury College」まで14の組織名があがっています(注:情報ピックアップでは13としていますが、著者の中に所属組織を2つ挙げている方がいますため、ここでは組織数を14としました)。
本来ちゃんと調べなくては申し上げられないこととは言え、これだけの異なる組織が係った論文では、学問が極度に専門分化した現状から見て、どの位、議論に深みがあるのかと気になります。勘ぐれば、各著者それぞれが分担したところはシッカリ抑えているとしても、他の著者が分担したところまで同程度に理解しているかが心配になります。
そこは百歩譲って、著者達は内容をすべて完璧に把握しているとしましょう。でも、論文の品質保証である審査の方はどうでしょうか?
サイエンス誌は、そもそもSCOPEの広い雑誌ですから、心配ないのかも知れません。しかし、僕の個人的経験ですと、普通の学会誌では、こんな論文が投稿されたら編集委員会は頭を抱えてしまいます。
学会誌では、審査にあたる方は、いずれかの専門分野で立派な業績を挙げた或いは挙げつつある方です。そうしますと、今回のような多岐の専門分野に亙る論文が投稿された時、まともな審査をするためには、それぞれの分野からそれぞれ複数の審査員を選ばなくてはなりません。
これが建前です。しかし実態は違います。そのようなことは現実問題として無理です。高々それぞれの分野で一人、場合によっては誰も張りつかない分野が残ってしまうことさえあります。
他方で、論文審査は非常に孤独な作業であり、審査員が記載に疑問を感じて他の人に助言を求めようとしても、それは許されません。
その結果、論文の一部に「目が行き届かない」、「分野を理解している審査員が1名だったため偏った判定になる」といった事が実際起こります。
多数の専門分野が連携した研究が今後増加することを考えますと、こういった従来のピア・レビューは時代に合わなくなっているように感じます。特に、ジオエンジニアリングのような多くの専門分野に跨る研究の論文では、それが顕著ではないでしょうか。
そこで提案です。論文は、閉鎖的・秘密主義的な審査システムを経るのではなく、投稿された論文に誰もがアクセスでき、それぞれの得意分野の視点からオープンに評価する。すなわち、「オープン・レビュー」とするのは如何でしょう。
それぞれの御専門の視点からの解説・評価をお願いします。