ご家族・友人にできる介護・介助〔 一患者(重症)の体験からまとめてみました。参考にしていただければ、幸いです 〕1.まず、この「ギラン・バレー症候群」という病気の概要を知って、次のようなことを念頭に入れておくことをお勧めます(「ギラン・バレー症候群」の概要は、当HPの「ギラン・バレー症候群―患者、家族、友人のために―」が参考になると存じます)〇 非常に稀な病気であり、遺伝性の疾患ではく、感染の怖れがないこと。〇 症状は、一見、脳梗塞や脳出血に似て手足が麻痺し、場合によっては、話すことができませんが、麻痺は左右対称に起こっていること、意識は正常であること。〇 症状や経過は様々ですが、ピークを過ぎれば回復に向かい、回復の可能性が高く、多くの場合、元の生活に戻れること。2.ご家族や友人にとっても大変な出来事ですが、本人は次のような状況にあります。それを理解し、精神的に支えてあげてください。支えられるのは、ご家族や友人だけです〇 もともと健康で普通に生活していた状態から、突然手足が麻痺し、自分ではどうすることもできなくなったため、大変なショックを受けています。〇 まったく予想していなかった事態で、これからどうなるか不安に駆り立てられます。例えば、職場や仕事のことや家族の生活がこれからどうなるのかなど。〇 重症の場合には、まったくの無力感・喪失感、時には恐怖と絶望(これから何が起こるか、手足は動かないままか、自分は乗り越えられるだろうか)、怒り(自分はどうしてこんな目に遭わなければならないのか)、欲求不満(家に帰りたい、他人に世話になるのはいやだ)などに陥りがちです。〇 もし、手が麻痺すれば痒い部分を掻くこともできなく、症状が重ければ寝返りも打てません。人工呼吸器が装着された場合には、話すことも意思を伝達することもできません。意識がしっかりしているだけに、激しいフラストレーションと情緒不安に襲われます。3.本人が精神的に落ち着き、自分の置かれている状況を受容し、この病気を克服できるようにご家族や友人が次のようなことをしてあげることをお勧めします 〇 主治医に、本人の前でこの病気と、その中でどの程度か(重症か軽症か)、今後の治療計画などについて説明をしてもらい、この病気はピークを過ぎれば回復に向かい、回復の可能性が高く、多くの場合、元の生活に戻れることを話してもらう。 (私の場合、妻がギラン・バレー症候群は「治る脳梗塞」とも言われおり、「必ず治る病気だ」と言って私を励ましてくれました。入院直後の私は、とにかく、この言葉を信じ、自己を見失わずに危篤状態も乗り越えることができました。その後、この病気について調べる中で、必ずしもすべての患者が完全に回復し元の生活に戻れないことを知りましたが、それは、この病気を受け入れることができてからでした。 ご家族や友人が「必ず治る病気だ」と断言し励ますことが、果たしてよいことかどうかは難しいところですが、「ピークを過ぎれば回復に向かい、回復の可能性が高く、多くの場合、元の生活に戻れる」ことを話してあげることは大きな励ましになると存じます。)〇 ご家族や友人が、本HPの「闘病記(投稿)集」コーナーの中から闘病体験記をいくつか選んでプリントし、本人に読ませるか、読んで聞かせてあげてください。 闘病体験記の内容は様々ですが、実際にこの病気になった患者自身が、症状や治療や回復過程がどうであったか、何を考えどう取り組んできたか、あるいは闘病や看病にあたって役立つ情報やノウハウ、アドヴァイスが沢山詰まっていますので、主治医の説明とは違った意味で、本人の置かれた状況がわかり、この病気を受容することができ、本人を勇気づけることになると存じます。 なお、闘病体験記は、初めは年齢や症状が本人に近いもの、その中でもとくに回復が順調であったものを選ぶことお勧めします。 (私の場合、妻が闘病体験記を書いたHPの中から回復が順調であったものを選び、何度も繰り返し読んでくれました。そのお陰で、何が何だか分からず、これからどうなるか不安な状態から、この病気を次第に受け入れることができ、勇気づけられました。)〇 本人は、上記2のとおり、大変なショックを受け、激しいフラストレーションと情緒不安に陥りがちですので、職場や家庭のことなどは心配せず、安心して療養できる体制をつくってあげてください。 (私場合、職場や社会にひとりとり残されていくという激しい焦燥感にかられましたが、妻が職場など関係先に連絡調整(手配)し、私には「これは神様が与えてくれた休息だと思い、ゆっくり休養しなさい」と言ってくれ、これが救いとなりました。)〇 なお、本人は体が動かせなく、眠っているように見える時も、枕元の話し声はよく聞こえ、意識はしっかりしていますので、本人の周囲で本人を落ち込ませるようなことは絶対に話さないように注意してください。〇 この病気に対する治療(血漿交換や免疫グロブリン大量療法)は、末梢神経の損傷(麻痺)の進行を緩和あるいは抑制するものであり、麻痺した末梢神経を回復させる治療ではありません。麻痺した末梢神経を回復させるのは、自然治癒(自己回復力)とリハビリです。自然治癒(自己回復力)を高めるには、休養や栄養も必要ですが、「この病気を絶対に治すのだ」という強い信念が必要です。〇 落ち込んでいる時や、これ以上できないまで精一杯頑張っている時に、さらに「頑張れ」と言うのは酷です。そうでなく、この病気を受け入れ、自分から前向きに積極的になれるような環境をつくりあげ、本人がこの病気を「絶対に治すのだ」という強い気持ちを持つように、優しく支えてあげてください。それができるのは、ご家族や友人だけです。その際、「闘病記(投稿)集」は、前述のように、激励のメッセージとなると存じます。〇 「闘病記(投稿)集」の中から、本人に役立ちそうなものを選んでプリントし、本人に時間をかけ読んでもらうか、(押し付けがましくならないように)丁寧に何度も読んで聞かせてあげることをお勧めします。闘病記の結論だけを伝え、「皆が治っているから治る筈だ」とプレッシャーを与えることだけは、絶対に避けてください。とくにご家族が焦って患者を追い詰めないようにしてください。 〇 なお、私事で恐縮ですが、「闘病記(本)」の中の拙著『生かされて』は重症で生死をさ迷った状態から生還を遂げた実体験を書きましたので、重症の方にとっては役に立つのではないかと存じます。4.具体的な介護・介助〇 安心して頼れるご家族や友人がただ一緒にいるだけで、精神的な支えになります。上記2のように、本人の置かれている状況を理解し、精神的に支えてあげられるのは、ご家族や友人だけです。本人の不安、恐れ、フラストレーションなどを、本人と分かち合う気持ちで受けとめてあげてください。〇 この病気は看護や介助に手間がかかります。とくに手が麻痺している場合には、看護師だけではカバーしきれない面がありますので、ご家族や友人が側にいて細々とした身の回りの世話をしてあげると助かります。例えば、手が麻痺している場合には、頬(ほお)や背中が痒くて掻きたい時には、人の助けが必要です。〇 本人が話せない場合には、五十音表を指し意思を聞いてあげる、あるいはよく使う言葉(例えば「体の向きを変えてください(体位交換)」、「痰(たん)をとってください」など)を書いた意思伝達カードをつくり、それを使い、イエス、ノーで聞き、意思の伝達をはかってあげてください。〇 ご家族のことや最近のテレビや新聞の話題、できれば新聞のコラムや、それまで購読していた雑誌の記事などを読んであげてください。何しろ本人は情報に飢えています。本人の孤立感を和らげることにもなります。〇 患者はいつでも日時、とくに時間が気になりますので、ベッドから時計やカレンダーが見にくい位置である場合には、夜間でも見える時計などをベッドの柵に用意してあげてください。
(私の場合、体の向きが自分では換えられなかった(「体位交換」ができなかった)ため、ベッドの左右両方の柵それぞれに時計を付けてもらいました。)〇 なお、重症で臥床が長期にわたる場合は、手足の筋肉が萎縮し関節が拘縮していくおそれがあります。それを防ぐため、臥床のままでリハビリ室に行けない段階でも、主治医の指示で理学療法士が病室に来て手足のマッサージと曲げ伸ばしを行う必要があります。 しかし、実際には理学療法士に十分に行ってもらえない状況もありますので、理学療法士に初歩的なポイントを聞いて、とくに手首、指先、足首などのマッサージと曲げ伸ばしを、日に何回か、痛みを伴わない程度に丁寧にゆっくりと優しくしてあげてください。その後の本格的なリハビリによる回復過程で、後遺症を少なくすることに役立つと存じます。5.終わりに 数ヵ月の長期入院になることもありますので、看病されるご家族が体調を崩さないように、交代制で看病にあたられるなど、家族の方も健康に注意されてください。 (田丸 務 平成17年12月記)