福祉をめぐる迷信について

[Naoya Kinjo]

「福祉は人を幸せにしない」という迷信につ
いて：日本では、長らく福祉はないがしろに
されてきました。きちんとした福祉がなかっ
たのですから、人々が日本の福祉について必
ずしもいい感情を持っていないのは事実です。

「福祉を厚くすると小子化につながる」とい
う迷信について：北欧の出生率は1.80を超え
ているのに対し、日本の出生率は1.34です。
確かに、1970年代に福祉を特に厚くした北欧
のノルウェイで出生率が大きく低下したのは
事実ですが、その後、日本とノルウェイの出
生率は逆転しました。人口ピラミッドが釣り
鐘型になれば、福祉を厚くすることは多子化
につながるのです。

「福祉を厚くするとコストが割高になる」と
いう迷信について：例えば、家族による介護
をあてにすれば、遥かにコストが高くなりま
す。介護による疲労で労働力の質的低下は必
然です。福祉について専門的な技術を持った
人ならば、遥かに効率よく介護を行うことが
できるのです。

「福祉を厚くすると税率が高くなり、産業の
競争力が失われる」という迷信について：福
祉が厚くなれば、労働者は介護などによる疲
労や将来についての不安などから解放されま
す。高い税率に見合うかどうかについては、
産業の創造的な競争力が世界の頂点にあるフ
ィンランドをじっくり観察してみれば明らか
でしょう。