実際には、日本はアメリカの植民地ではありません。しかし、アメ
リカからきちんと自立しているともいえません。日米安保を解消し
ない限り、半植民地的な性格は否定できません。アメリカがアフガ
ニスタンに軍を派遣する際に、日本そのものはアフガニスタンと敵
対していないにもかかわらず、自衛隊を派遣してしまいました。安
部晋三のように、アメリカのいうことをハイハイと聞き入れてしま
うのは、交渉しているとはいえません。
半植民地的な性格が日本の国益を損ねているかというと、これは微
妙なところです。アメリカの核の傘の下にあるからこそ、日本人は
自らの手を汚さないで済んでいるのです。逆にいえば、手を汚す覚
悟がなければ、国家として完全な主権を手に入れることはできませ
ん。
ただ、時代の流れはむしろ国家を希薄にしていきます。たとえば、
ワールド・カップでは、確かに、日の丸が振られ、君が代が歌わ
れ、いかにも国家主義的な何かが盛り上がったような雰囲気もあっ
たあとに、イギリスのユニフォームを着てベッカムを、あるいは、
ドイツのユニフォームを着てカーンを応援する同じ日本人の姿が見
られました。こういう日本人の行動は、最初に驚きを、次に賞賛を
招きました。日本人はついに偏狭な国家民族主義を脱却し、世界は
精神性において日本人に遅れをとっていることを痛感したのです。
そして、このワールド・カップは、フーリガン問題の発生しなかっ
たワールドカップとして、スポーツの歴史に輝かしいページを加え
ました。
――
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