[X,[Y,Z]] + [Y,[Z,X]] + [Z,[X,Y]] = 0
を満たすとしています。この式が何を意味しているのか御意見をお聞かせ願い
ます。
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ベクトル空間 W が Lie 代数( Lie 環 ) であるとは
X,Y ∈W にたいして [X,Y] ∈W 演算が定義でき、
下の四つの関係式を満たすことであると、教科書は天下り的に示します。
1 [X+Y,Z] = [X,Z] + [Y,Z]
2 [aX,Y] = a[X,Y] a ∈R
3 [X,Y] = -[Y,X]
4 [X,[Y,Z]] + [Y,[Z,X]] + [Z,[X,Y]] = 0
1,2,3 式の意味は解る気がします。Lie 群、Lie 代数は時間に依存して変化す
る事象の代数的な性質を抽象的に抜き出したものだと思います。1,2 式は
[X,Y] が bilinear な関係であることを意味していると思います。3式の反交
換関係は時間に方向性があることを反映しているのだと思います。
でも4式の意味が解りません。この式はどんな物理的な意味を持つのでしょう
か。幾何的にどんな意味を持つのでしょうか。Poison Bracket がこの4式満
たすのは解りますが、この式を基本法則に持ってくる必然性が理解できません。
逆に1,2,3式のみで4式を必要としない空間は意味がない代数空間なのでし
ょうか。
Lie 代数に詳しいどなたか、教えていただけますでしょうか。
======= kVerifier Lab =========
EMAIL ke...@nasuinfo.or.jp
小林憲次
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In article <bd3di7$2gtj$1...@news.jaipa.or.jp>
"Kenji Kobayashi" <ke...@nasuinfo.or.jp> writes:
> ベクトル空間 W が Lie 代数( Lie 環 ) であるとは
>
> X,Y ∈W にたいして [X,Y] ∈W 演算が定義でき、
>
> 下の四つの関係式を満たすことであると、教科書は天下り的に示します。
>
> 1 [X+Y,Z] = [X,Z] + [Y,Z]
> 2 [aX,Y] = a[X,Y] a ∈R
> 3 [X,Y] = -[Y,X]
> 4 [X,[Y,Z]] + [Y,[Z,X]] + [Z,[X,Y]] = 0
>
> 1,2,3 式の意味は解る気がします。Lie 群、Lie 代数は時間に依存して変化す
> る事象の代数的な性質を抽象的に抜き出したものだと思います。
# そうかなあ.
> 1, 2 式は [X,Y] が bilinear な関係であることを意味していると思います。
> 3 式の反交換関係は時間に方向性があることを反映しているのだと思います。
# ふむ.
> でも 4 式の意味が解りません。この式はどんな物理的な意味を持つのでしょう
> か。幾何的にどんな意味を持つのでしょうか。Poison Bracket がこの 4 式満
> たすのは解りますが、この式を基本法則に持ってくる必然性が理解できません。
A ∈ W に対して, 線形変換 ad(A): W → W を (ad(A))(X) = [A, X]
で定めます. Jacobi Identity は
(ad(X))([Y, Z]) = [(ad(X))(Y), Z] + [Y, (ad(X))(Z)]
となることをお確かめ下さい. この式は
(exp(t (ad(X))))([Y, Z]) = [(exp(t (ad(X))))(Y), (exp(t (ad(X))))(Z)]
の微分形です. (t ∈ R.) # ああ, 括弧が…….
要するに, X によって引き起こされる系の連続変形 exp(t (ad(X)))
は bracket 積 [ , ] を保つ, のであります. だから, 変形でなく,
自己同型になる. Jacobi Identity はそれを保証しています. それが
持つ物理的意義を申し述べる立場に私はありません.
因みに, ad(X) のような関係式を満たすものを Lie環の derivation
(微分)と呼びます.
> 逆に1,2,3式のみで4式を必要としない空間は意味がない代数空間なのでし
> ょうか。
意味が無くはないでしょうが, 構造に乏しいので, それだけでは余り
面白くはないでしょうね.
--
塚本千秋@応用数学.高分子学科.繊維学部.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chi...@ipc.kit.ac.jp
# e-mail をいただきましたが, e-mail には直接お応えしないことに
# しておりますので, ここに追加.
In article <03062216582...@ims.ipc.kit.ac.jp>
Tsukamoto Chiaki <chi...@ipc.kit.ac.jp> writes:
> 因みに, ad(X) のような関係式を満たすものを Lie環の derivation
> (微分)と呼びます.
"ad" は "adjoint"(随伴) から来ています. Lie群や Lie環の話で
"adjoint representation"(随伴表現) が出てこないことはないと
思いますが, 「群と物理」にはありませんか.
一晩寝てから、少しわかったような気がします。
[X,Y] = -[Y,X] が成り立つならば、下の二つの式は同値です。
[X,[Y,Z]] + [Y,[Z,X]] + [Z,[X,Y]] = 0
[ X,[Y,Z] ] = [ [X,Y],Z ] - [ [X,Z],Y ]
これが塚本様の下の式の意味だと思います。
(ad(X))([Y, Z]) = [(ad(X))(Y), Z] + [Y, (ad(X))(Z)]
たぶん下の ad は add の意味だと思います。微小差分(微分係数)を暗示して
いるのだと解釈しています。
A ∈ W に対して, 線形変換 ad(A): W → W を (ad(A))(X) = [A, X] とする
リー代数は Rign 構造に
1 [X+Y,Z] = [X,Z] + [Y,Z]
2 [aX,Y] = a[X,Y] a ∈R
下のような運動のしかたを導入した導入したものだと理解できそうです。
3 [X,Y] = -[Y,X]
4 [ X,[Y,Z] ] = [ [X,Y],Z ] - [ [X,Z],Y ]
これに Symplectic 構造を追加すれば Hamiltonian 力学系の運動になるのでしょ
う。
下の式には追従しきれていませんので、もう少し考えて見ます。
( exp( t*ad(X) ) )[Y, Z] = [( exp( t*ad(X) ) )Y, ( exp(
*ad(X) ) )Z]
ありがとうございました。
># e-mail をいただきましたが, e-mail には直接お応えしないことに
># しておりますので, ここに追加.
他の皆様にも役立つようにとの趣旨だと推察します。私も fj.sci.math に返
事をしたつもりだったのですが、操作ミスで個人メールになってしまったよう
です。失礼しました。遅ればせですが、fj.sci.math にも返信を送ります。
> "ad" は "adjoint"(随伴) から来ています. Lie群や Lie環の話で
> "adjoint representation"(随伴表現) が出てこないことはないと
>思いますが, 「群と物理」にはありませんか.
仰るとおりでした。銃数ページ後に出てきました。
In article <bd8185$vjg$1...@news.jaipa.or.jp>
"Kenji Kobayashi" <ke...@nasuinfo.or.jp> writes:
> これに Symplectic 構造を追加すれば Hamiltonian 力学系の運動になるの
> でしょう。
えーと, 話の順序が逆で, 相空間("phase space", 例えば T^* M) に
symplectic structure が与えられているから, その上の(滑らかな)
関数の空間に Poisson積 {F, G} を構成できて, その積について,
関数の空間が(無限次元の) Lie環の構造を持つようになる訳です.
そこにおいてその系を支配する Hamiltonian H (つまり相空間上の
ある関数)が与えられると, 系の「物理量」F (つまり相空間上のある
関数)の「時間」発展は
dF/dt = {H, F}
という微分方程式で記述されますが, {H, F} = (ad(H))(F) ですから,
その解は(形式的には) (exp(t (ad(H))))(F) に他なりません.
# 註: 教科書によっては dF/dt = {F, H} となっている場合もある
# でしょうが, まあ, 色々と定義の流儀によって, 符号とかは
# 変わるものなので, 気にしないで下さい.
といったことを押さえた上で, 「物理」と「数学」の対比について
もう一度御検討されることをお勧めします.