といった話は後から概念を整理してできたもので, 部分集合云々
の話も, 実数 x に対して対応する実数 y が(何かしら)一つ定ま
るということを形式化しているだけのことだ. x を独立変数と呼
び, y を従属変数と呼ぶ, y は x が変わればそれに従って変わる,
そのことを関数と呼ぶ, それが元々の考え方.
しかし, その関数を一つの数学的対象とし, 名前を付けて呼ぼう
とするなら, x とか y とか言っているだけでは足りない.
x に従って定まる y の計算の仕方が「書ける」ものであれば,
それを書いておくだけで関数が定義されていると思える.
y = x^2 + 2 x + 3
が関数であるというのはその意味においてである. 形式的に写像
の言葉にしたいなら, y を計算する「式」にまず名前を付ける.
f(x) = x^2 + 2 x + 3
とおいて, 右辺の名前を "f" とする. この場合 "(x)" が付いて
いるのは x についての式であることの確認の為だ. この式の名前
を関数の名前に「流用」する. 本当は,
φ: R → R (TeX だと \to)
という実数から実数への写像を, φによって x に y が対応する,
つまり,
φ: R∋x |→ y∈R (TeX だと \mapsto)
とするとき
y = f(x) (=x^2 + 2 x + 3)
であるものとする, という訳だが, それを
f: R → R
とも書くことにする. 一々違う文字を使うのは面倒だし, φ と f
との照応を覚えておくのも大変だ. 逆に φ によって x に対応
する元のことを φ(x) とやはり書くので, これが「流用」である
という感覚はほとんどないものかも知れない. sin, cos, exp, と
いった名前の関数において, sin(x) というのが式か, 関数の値の
表示か, という質問に意味はあるだろうか. で, 再び,
y = sin(x) は関数だ
ということにもなる. 更には
sin(x) は関数だ
ということにもなる. それを
sin: R → R
と書かないと関数ではない, といってみても始まらない. もっとも
f(x) = x^2 + 2 x + 3 は関数だ
はまだしも, もっと省略して
x^2 + 2 x + 3 は関数だ
とすることには心理的抵抗があるのだけれど.
ところで, x に対応する y を x 自身とする, つまり,
y = x
とする場合に対応する関数をどう呼ぶべきか. 直接関数に名前を
付けるなら, それを「恒等写像(identity)」と呼んで, 記号として
id: R → R なり ι: R → R
を採用し,
id(x) = x なり ι(x) = x
と書いたりすることになる. 式に名前をつけて
g(x) = x
とおいて, g で恒等写像をあらわすことにします, というのは,
g のような一般的な文字で特別なものを表していることを常に
意識していないといけないので, 感心しない.
それなら「究極の表示法」, 文字 "g" の代わりに "x" それ自体
を使うのはどうか.
x^2 + 2 x + 3 という関数
なる言い方に賛成しない人に対しても,
x という関数
なる言い方は,
x(x) = x
とおいて, 一番左に書いた "x" を用いて
x: R → R
を定義して「 x という関数」と呼んでいるのだ, と言えば, きっと納得
……しないか.
# x^2 + 2 x + 3 というのも式の名前にし,
# (x^2 + 2 x + 3)(x) = x^2 + 2 x + 3
# とおくことにする, というのはどうだろう.
# # ちゃんと括弧をつけると (x)(x) = x か, ワハハ訳分からん.
# # # 別の種類の括弧を使って <x>(x) = x とか
# # # <x^2 + 2 x + 3>(x) = x^2 + 2 x + 3 とか書くことに決める
# # # 厳密主義者もいるかも知れない.
# # # # で, 式の名前と関数の名前を記号で区別する超厳密主義者も.
さて元に戻って, x に対して y を対応する仕方が何かしら定まって
いる, という状態についての暗黙の了解があるなら,
y は関数です
ということにもなる. x に従属する, ということをはっきりさせる為に
y = y(x)
と書いたりするかも知れない. しかしこれは関数の名前が "y" である
というのとは違う. あくまでも関数は「無名」のままだ.
結局のところ何が言いたかったかというと, 「 y という関数」と
「 x という関数」では「省略」されている部分が違うということを
認識できないような人物を相手にするのもどうかと思うが, 相手に
するなら, "x = x" などという式を無防備に書いたりせずに, せめて
"x(x) = x" 位のことを工夫してはどうか, ということだ.
--
千
Tsukamoto Chiaki wrote:
> 結局のところ何が言いたかったかというと, 「 y という関数」と
> 「 x という関数」では「省略」されている部分が違うということを
> 認識できないような人物を相手にするのもどうかと思うが, 相手に
> するなら, "x = x" などという式を無防備に書いたりせずに, せめて
> "x(x) = x" 位のことを工夫してはどうか, ということだ.
そうも書いてみたりもしたのですよ。x = x(t) との関係からね。
だけどそれもあんまりだというのでやめちゃいました。
x = id(x) は前便で書こうかと思って忘れてた。
それにしても恒等関数を表す標準記法がない(定着していない)
というのは何かと不便ですね。
# Common Lisp だと identity: ゴツイな。
まあ「工夫」をしてみたところで、「両辺に x があるのはどういうわけだ」
ぐらいに言われて同じことだとは思いますが。
# そもそも私は「x=x とは書かないことにするよ」と言ったはずなのに、
# そこを消して曲解誤引用されることにまでの「防備」は不可能。
> # x^2 + 2 x + 3 というのも式の名前にし,
> # (x^2 + 2 x + 3)(x) = x^2 + 2 x + 3
> # とおくことにする, というのはどうだろう.
> # # ちゃんと括弧をつけると (x)(x) = x か, ワハハ訳分からん.
> # # # 別の種類の括弧を使って <x>(x) = x とか
> # # # <x^2 + 2 x + 3>(x) = x^2 + 2 x + 3 とか書くことに決める
> # # # 厳密主義者もいるかも知れない.
> # # # # で, 式の名前と関数の名前を記号で区別する超厳密主義者も.
基礎論とか計算機科学だとλ-記法を使いますね。
(平賀)
というのが通用すると思うのが「無防備」.
> 基礎論とか計算機科学だとλ-記法を使いますね。
「これは」意義ある発言ですね.
--
千
> それにしても恒等関数を表す標準記法がない(定着していない)
> というのは何かと不便ですね。
定着していないのかな。 1 あるいは、id だと思うけど。
> 基礎論とか計算機科学だとλ-記法を使いますね。
τ□ なんてのもあったかな。
桂 英治@(株)横浜インテリジェンス ( kat...@hamaint.co.jp )
間抜けの間抜けによる間抜けな提案だな。 ヽ(^。^)ノ
Tsukamoto Chiaki wrote:
> ... x に従属する, ということをはっきりさせる為に
>
> y = y(x)
>
> と書いたりするかも知れない. しかしこれは関数の名前が "y" である
> というのとは違う. あくまでも関数は「無名」のままだ.
>
> 結局のところ何が言いたかったかというと, 「 y という関数」と
> 「 x という関数」では「省略」されている部分が違うということを
> 認識できないような人物を相手にするのもどうかと思うが, 相手に
> するなら, "x = x" などという式を無防備に書いたりせずに, せめて
> "x(x) = x" 位のことを工夫してはどうか, ということだ.
x(x) を使わなかったのはちょっと心理的な抵抗感が働いていて、
数学流の y=y(x) よりは、計算機屋的発想のほうが勝ってしまった
といったところがある。
1つには「関数(名)は固有名詞」というのもあるし、
数的関数(ヘンな言葉だ)ではなく、形式的体系の関数としては、
x(x) は関数 x に自身を適用するという意味合いで出てくるんですね。
(不動点プログラムとかで)
あと、『解析概論』では「x'=1 だから」と書かれているんですが、
これから察するに、
x = x ⇒ dx = x' Δx ⇒ dx = Δx
と受け取るのが一番素直じゃないのかなあ。
関連して桂さんの書かれた:
>> それにしても恒等関数を表す標準記法がない(定着していない)
>> というのは何かと不便ですね。
>
> 定着していないのかな。 1 あるいは、id だと思うけど
「定着していない」というのは別にはっきりしたイメージを
持っての話ではありませんが、例えば:
・「x' = 1」ではなく、「id' = 1」、「(id(x))' = 1」などと
書いたりはしない。
・関数空間の話などで持ち出す場合、「id は恒等関数」と断らずに
使ったりはしない。
といったようなことです。
もっとも前者の場合、恒等関数を特別な関数と考えるよりは、
多項式の一種としての扱いが勝っているからではあるでしょうが。
それと関数合成の場合などは 1 でいいでしょうが、
解析で 1(x) などとすると定数関数と間違われそう。
ステップ関数をこう書いたりすることもあるかな。
それにしても:
I wrote:
> まあ「工夫」をしてみたところで、「両辺に x があるのはどういうわけだ」
> ぐらいに言われて同じことだとは思いますが。
<800c7853.04041...@posting.google.com> なんか見ても
そういう感じはしますねえ。
もっともこれ自体はむしろ正反対の方向を言っているようだけど。
この御仁、x を左辺に持ってくるのがよほどイヤみたい。
(平賀)
??????????????????
「x(x)=x は、y(y)=y や z(z)=z とは全く別の函数を表わす」と
言いたいのか!?!
こんバカタレが!!!
で、“函数”x=x のグラフがx軸そのものってワケかい!?!
# まさに、「馬鹿丸出し」だな。(爆笑+嘲笑