石原藤夫ですが、これは古い。でも、再版はあったはず。手元に
あります。SFマガジンで読んだはずです。代表作と言って良いん
じゃないでしょうか。
数学、特に複素解析とカタストロフィーをアナロジーにしたSF。
もちろん、ヴォークトの「宇宙船ビーグル号の冒険」を踏まえて
ます。
内容的にどうかと言うと微妙。いや、小説じゃないです。物語が
あるわけじゃないから。円城塔とかと同じで、技術用語の遊びみ
たいなものです。収束半径とか変数分離とか、なんかカッコ良い
じゃん。
ベクトル場の公式とかが出て来るのも特徴。日本の数式の製版技
術は世界のトップで、Knuth をして「日本の製版技術が使えたなら、
TeX は作らなかった」と言わしめたもの。今は、知らないけど~
fj には「あとがきに、「初等数学の質問や講義を送ってくるな」
とあったのが笑えました。」と書いてあるなぁ。
オロモルフは、正則関数つまり、Holomorphic Function の Holomorph
です。Oromorf とか、Wikipedia には書いてあるが、間違いでし
ょう。
文庫版のあとがきに書いてあるし!
Homomorphism でも「ホモ」だし、Homology でも「ホモ」
だから、ホロモルフィックだと思うんだよな。ググリまくると「
フランス語のHolomorphicのO」とか言うのが出て来る。フランス
語は語頭のHを発音しないので、フランス語読みだとオロモルフに
なるのだと思います。アメリカン人は、絶対、ホロモルフと
読むと思う。
ネタばれになりますが、敵がプラスとマイナスからなる特異点を
作って来るのに対抗して、オロモルフ号は、正則性を武器に戦う
ってな設定です。
確か、地球より大きいはずなので、かなり巨大な不定形宇宙船で
す。中で起こる管理者と研究者、技術者の対立のモデルは横須賀
通研だってな話ですが、本当かどうかは知りません。
これ、設定をそのままに色んな作家に書かせたら面白いかも。
---
Shinji KONO @ Information Engineering, University of the Ryukyus
河野真治 @ 琉球大学工学部情報工学科