冷やし月見とろろそば

[大城貴紀]

忙しいので対立する隣町の蕎麦屋でそばを食べました
天井に店の手作りのシールが貼ってありジャズが流れているコンクリート
打ちっぱなしの店です
そばは芯がありコンピュータの導線のよう
とろろはこの間すりおろした蘇鉄を思い出して吐き気を催す始末
但し蘇鉄の毒は壺のメンテナンスに使うので駆逐されることはないでしょう
取っ手の卵黄は丘のようでアロハオエを思い出しました
漬物は東京にいたころは食べたことのなかったべったら漬けのようでしたが
店の人は大根のわさび漬けと主張してゆずりません
冷やしそばで凍えた体を溶かしてくれたのは蕎麦湯で中華スープから味と具を
除いたものです
自在に薬缶を吊っておいたので助かるかもしれません
大城貴紀