新城@筑波大学です。こんにちは。
連休前ですが、「個人番号法案(共通番号法案)」が衆議院の内閣委員会で可
決されて連休明けにも衆議院本会議で採決されそうです。我らが情報処理学会
ですが、学会の Web ページで吉川一夫会長の声明という形でこの法案に賛成と
いう意見を出していました。
http://www.ipsj.or.jp/release/seimei20130113.html
情報処理技術者としては、次の2つのことを社会に伝えないといけないのだと
思います。
・人間は必ず間違える。人間が作るプログラムは、簡単なものならバグがない
プログラムか書けるし、形式的な検証もできる。しかし、ある程度以上の規
模のプログラムには、必ずバグが残る。バグの中にはセキュリティ上の脆弱
性につながるものがある。
・悪いことを人間もいる。情報システムを作った時に、それを運用する人が何
か悪いことをするかもしれない。他人へのなりすましを完全には防げない。
国会の審議では、まだ仕様書もできていないような情報システムの議論は行わ
れていません。いざ情報システムができて、運用された後で問題がたくさん見
つかるのではないかと思いました。韓国では類似のシステムを先に動かしてい
て、様々な問題が出ています。アメリカも、ソーシャル・セキュリティ・ナン
バーという共通番号を使っていますが、共通番号は問題があるということで、
個別の番号にしようとしています。
あと、目的が行政の効率化といいつつ、情報システムの仕様書もできていない
状態でシステム開発費用が2000億とか3000億、運用に年間200億と
か出ているし。2000億って、1億円のハッカー、2000人でシステム作
ることを考えたら、効率化とは程遠い話です。こんな効率の悪いことをしてい
たら、TPP時代の国際競争に負けてしまいます。類似の「住民基本台帳ネッ
トワーク」がどのように行政の効率化に貢献したのかも検証する必要もあります。
それから、情報技術の学会としては、原子力関連の学会とは違う所を示して欲
しい。原子力の学会は、3.11の前には原発は安全だ、爆発しませんと言ってい
ましたが、実際には原発は安全ではなかったし、爆発もしました。情報技術の
学会なら、「情報システムは、現在の技術ではちゃんと作れません、情報漏洩
や悪用は避けられません、それでもいいですか」とちゃんと言うべきなのでしょう。
\\ 新城 靖 (しんじょう やすし) \\
\\ 筑波大学 情報工学 \\