謎多き「ビットコイン生みの親」サトシ・ナカモトは、なぜ匿名で発表し姿を消したのか? 2023.12.06

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Dentsudai Thai OBs & OGs

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Dec 6, 2023, 5:48:14 AM12/6/23
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全世界に衝撃を与えた、ビットコインの登場。その開発者として名の上がる「サトシ・ナカモト」氏ですが、彼がどのような人物であるのかは未だ謎に包まれたままとなっています。そんなサトシ・ナカモトの正体に迫るNHKの番組に出演したというのは、Windows95を設計した日本人として知られる中島聡さん。中島さんはメルマガ『週刊 Life is beautiful』で今回、その番組の後半部分で「ドラマ仕立てで描くべきだった」と考える、ビットコインが作られた経緯や匿名での発表となった理由を記すとともに、ナカモトに焦点を当てたNHKに対する評価を付しています。

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NHKも特集した「ビットコインの生みの親」サトシ・ナカモトは一体誰か?その人物像と匿名の謎

私も出演者の一人として関わった、「市民X:謎の天才『サトシ・ナカモト』」がようやくNHKで放送されました(ダイジェスト版が11月13日、完全版が11月26日)。NHKのプロデューサーから連絡を受けたのが、今年の5月、実際に取材を受けたのが8月ですが、8月には、プロデューサーとカメラマンがシアトルの私の家まで足を運び、撮影機材を設置して簡易スタジオを作り、数時間かけて撮影する、という丁寧なものでした。私と同様の取材を12人の人にしたのですから、莫大な時間とコストをかけた番組で、民放では到底出来ない芸当です。ビットコインや暗号通貨に関する解説番組ではなく、ビットコインの生みの親であるサトシ・ナカモトに焦点を当てた番組作りは素晴らしいと思いましが、取材された私の目線では少し消化不良を起こしそうな番組です。ビットコインがいかに画期的だったかに焦点を当てた前半は、悪くはないとは思うのですが、12人もの人に意見を聞いたため、逆に分かりにくくなっていた部分があると思います。分かりやすさを重視するのであれば、3人ぐらいに絞って、一人一人にもう少し話させた方が良かったと思います。12人もの人に意見を聞けば、異なる見方や意見が出てきても当然ですが、その部分が曖昧になってしまっていた部分が多いと思います。ちなみに、「サトシ・ナカモトがビットコインを作った意図」に関して言えば、「政権の都合で赤字国債を発行するたびに希薄化される法定通貨」とは異なる「誰にもコントロールされていない、発行量の決まった、薄まらない通貨」を作りたかった点に関しては疑問の余地はありません。

中央の管理者が不要な分散台帳を作ろうという試みは20年以上の間研究者の間で行われていましたが、それに答えを見つけたのがサトシ・ナカモトであり、だからこそ「ノーベル経済学賞に値する」と私は発言したのですが、その分散台帳が可能にするのが、政府の支配下にない通貨なので、彼がビットコインを実装し、世の中に放ったのは当然の流れで、そこにそれ以上の意図を読み取る必要はありません。彼が本名を隠した理由も、それが「マネーロンダリングを可能にする」「米国の基軸通貨としての地位を揺るがせる」などの理由で、米国政府から指名手配されることを避けたかったから、と解釈すればそれで十分だと思います。彼が、同じくP2Pソフトウェアの開発者である金子勇氏が逮捕されてしまった「Winny事件」のことを知っていた可能性は十分にあります。ちなみに、出演者の一人が「見返りを求めずにビットコインを作った」ことを褒め称えていましたが、ここは大いに疑問です。そもそも、ビットコインを成功させるにはオープンソース化する必要があることは明確で、そこを褒める必要はありません。また、ビットコインの価値が上がれば、彼が初期の頃に自らマイニングして手に入れたビットコインが大きな収入になるだろうことは十分に予想できた訳で、そこを考えれば、「見返りを求めずに」という発言は不適切です。

サトシ・ナカモトとはどんな人物で、いかなる意図でビットコインを作ったのか

唯一、言えることは初期の頃に彼がマイニングして手に入れたビットコインが、まだ最初のウォレットに入ったままで、換金された形跡がないことですが、実際のところは、彼が幾つのウォレットを持っていたかは誰も知らず、手に入れたビットコインの一部を既に換金している可能性は十分にあります。私が番組のプロデューサーであれば、その辺りは、既存の事実としてあっさりと流し、「サトシナカモトは誰なのか」「なぜ、姿を消してしまったのか」「なぜ、所有するビットコインを換金していないのか」などの「本当の謎」の部分に焦点を当てて深掘りしただろうと思います。そう考えると、後半部分は、サトシ・ナカモトがどんな人で、どんな考えでビットコインを作ったのかをドラマ仕立てで描くべきだったと思います。大まかな流れとしては、・サトシ・ナカモトは暗号技術の専門家。大学では数学を勉強し、博士号を取得済み。プログラミングにも精通しているが、大学に残り、暗号技術の研究を続けていた。
・学生時代からの彼の夢は、分散型台帳が持つ「二重支払問題」を解決すること。二重支払問題(それぞれが非同期に動くサーバー間で、どうやって「同じ口座から同時に持っている以上のお金を引き出す」などの不正を防ぐか、という問題で、過去20年間、誰も解決できなかったとても難しい問題。
・この問題を解決する上で、サトシが注目したのは「ゲーム理論」。参加するプレーヤーが自分の利益を最大化しようとした時にこそうまく動くシステムが設計出来れば、「二重支払問題」を解決できると考えた。
・サトシがその問題の解決方法を思いついたのは2018年の頭ごろだ。しかし、論文だけ書いてもその価値を理解してもらうのは難しいので、その設計に基づいたアプリケーションを作るべきとサトシは考えた。
・そんな時、リーマンショックが起こり、大きすぎる銀行は救済され、米国政府は大量のお金を印刷し始めた。
・大量のお金を印刷しながら、起こるはずのハイパーインフレーションが起こらない日本を見て、米国でも同じことをしても良いという考え(MMT:Modern monetary theory)が台頭し始めたのはこの頃。
・サトシは、世の中が必要としているのは、誰にもコントロールされず、希薄化もしない、法定通貨に変わる新たな通貨にあると考え、その通貨こそが、彼が発明した分散台帳の最適なアプリケーションだと考えた。ビットコインが誕生した瞬間だ。
・彼はその発想に基づいて、ビットコインの実装を進め、2018年の後半には彼のマシンの上でビットコイン・ネットワークが動き始めていた、サトシは並行して進めていた論文を発表した上で、ビットコインをオープンソースとして公開することを決めた。
・しかし、ビットコインを法定通貨に変わる通貨として世の中に提供するには大きなリスクが伴うとサトシは考えた。暗号技術の研究者が米国政府から逮捕されたこともあるし、P2P型のネットワークサービスWinnyをオープンソースとして提供した金子勇氏が日本で逮捕されたことも、サトシは良く知っていた。
・そこで、サトシは、実名を隠し、論文もソースコードも匿名で発表することに決めた。実名で発表すれば、名声も得られて彼のキャリアに大きなプラスになるかも知れないが、反逆罪や犯罪幇助の罪で牢屋に入るリスクは避けたいし、それによって、せっかく作ったビットコインが世の中に広まらないことになるのは、あまりにも勿体無いとサトシは考えたのだ。

となります。私の脚色も若干入っていますが、ビットコインがこんな経緯で作られ、匿名での発表になったことに関しては、ほぼ上に書いた通りだと考えて良いと思います。

なぜサトシ・ナカモトは忽然と姿を消してしまったのか

その後、彼がなぜ所有しているビットコインをまだ売却しないのか、なぜ姿を消してしまったのかに関しては、想像するしかありませんが、ビットコインが投機対象になってしまったこと、マネーロンダリングや身代金の支払いに使われるようになったことなどを、彼自身が憂いている可能性も少なくはないと思います。とは言え、サトシナカモトという謎の人物に焦点を当てた番組を作ったことは高く評価して良いと思います。この勢いに乗って、「市民X」としてシリーズ化をするのも悪くないと思いますが、匿名のままでサトシほどのインパクトを世の中に与えた人はほとんどいないので、「市民X=匿名の人」という定義でシリーズ化するのは難しいと思います。それよりは、市民Xの定義を「世の中に価値のあるものを提供した無名の人」にまで広げて、Steve Woziniakのような「影の立役者」に焦点を当てたシリーズにするのも悪くないと思います。(by 中島聡『週刊 Life is beautiful』2023年12月5日号の一部抜粋です。)

https://www.mag2.com/p/news/588818
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