[池田信夫 blog] 書評 川勝平太氏の「鎖国」論(アーカイブ記事)2024年04月04日

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Dentsudai Thai OBs & OGs

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Apr 4, 2024, 7:55:52 AMApr 4
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https://ikedanobuo.livedoor.biz/archives/51899747.html

 静岡県知事を辞任すると表明した川勝平太氏に批判が集まっているが、どさくさまぎれに彼の学問的業績まで否定するのは感心しない。彼の「海洋史観」には疑問があるが、専門分野だった江戸時代の経済史については、国際的な視野から「鎖国」を評価していて傾聴に値する。

https://www.amazon.co.jp/dp/4140016272
日本文明と近代西洋―「鎖国」再考   川勝平太 著 NHKブックス刊  June 1, 1991

 ヨーロッパで資本主義が急速に発達した17〜9世紀に、日本は鎖国の保護主義で世界から大きく遅れをとったといわれるが、自国の産業を関税などで保護する政策は、イギリスをはじめ世界中の国が行なった。日本が(一部の国を除いて)貿易の禁止という方法をとったことは特異だったが、それ自体は大きな損失になったわけではない。本書も指摘するように、当時のヨーロッパに日本に売り込む商品はなかった。18世紀までヨーロッパは、アジアに対して貿易赤字だった。彼らがアジアから輸入した商品は、胡椒、香辛料、茶、砂糖、綿織物、タバコ、陶磁器など数多かったが、輸出したのは主として銀だった。つまり西洋諸国は新大陸で採掘した銀で、東洋から多くの商品を買ったのだ。逆に東洋人が買うものはほとんどなかった。銀の流れをみても中国やインドは大幅な流入超で、イギリスは流出超だった。イギリスはインドから綿織物を輸入しており、自国産業をまもるためにその輸入を禁止したほどだ。だから日本がもし17世紀に開国していたとしても、西洋から輸入するより輸出するほうが多かっただろう。むしろ鎖国の直接的な影響は、世界市場を席巻していたアジア製品への依存を断ち切ることだった。特に当時の国際商品だったインドの綿織物を輸入禁止して、国内で生産した。これは輸入品を国内産業で生産する輸入代替工業化であり、この点ではイギリスの綿工業も同じだった。彼らもインドからの輸入を遮断しているうちに、綿織物を自力で生産できるようになったのだ。違うのは、そこから先である。
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