cp-net みなさま
奈良県立大学の風間勇助と申します。
日本文化政策学会 第19回年次研究大会が奈良県立大学にて開催されます。
一部、一般公開プログラム(参加無料、要事前申込)のシンポジウムやフォーラムが開催されますので、添付のチラシや以下の詳細をご確認のうえ、ぜひご参加ください。
【シンポジウム1】
「世界の分断と差別に文化政策はどう応答できるのかーアートとポストコロニアルの視座」
企画趣旨:
ウクライナ戦争やガザ紛争、排外的ナショナリズムの高まりなど、世界はいま、分断と差別の構造を露呈させており、欧米中心主義や多文化主義の限界も指摘されています。こうした現代的課題に対して、本シンポジウムでは、ポストコロニアルという視座を手がかかりに、文化政策が分断・差別に対して果たしうる役割について多角的に考察します。
とりわけ注目すべきは、2022年に開催されたドクメンタ15です。インドネシアのアーティスト・コレクティブ「ルアンルパ」のディレクションのもと、この芸術祭は西欧中心のキュレーションの枠組みを脱し、芸術祭のあり方そのものを根本から問い直す契機となりました。さらに、ベニン・ブロンズの返還問題をめぐるドイツの文化政策も、ポストコロニアルな視点からの文化資源の再配分という論点を社会に提起しています。
一方、日本の文化政策においては、脱植民地主義的な視座は依然として周縁的な位置にとどまっているのが実情です。本シンポジウムでは、韓国と日本の文化的関係性や光州ビエンナーレの歴史的文脈、日本の地域拠点でのアートと学びの実験的取り組みにも注目しながら、文化政策の可能性と課題について議論を深めます。
基調講演:
オズレム・ジャンユレク(ツェッペリン大学)*逐次通訳
パネラー(報告):
秋野 有紀(早稲田大学)
山本 浩貴(実践女子大学)
レオナルド・バルトロメウス(山口情報芸術センター[YCAM])*逐次通訳
コーディネーター:
吉田隆之(大阪公立大学)
藤野一夫(神戸大学)
[プロフィール]
Dr.Özlem Canyuerek |オズレム・ジャンユレク(ツェッペリン大学)
ヒルデスハイム大学文化学部で博士号を取得。研究テーマは、ドイツの文化分野における限界化された知識、ナショナリズム、倫理学。学位論文は「Cultural Diversity in Motion」。Rethinking Cultural Policy and Performing Arts in an intercultural Society」は、欧州科学クラウド(European Open Science Cloud)の助成を受け、オープンアクセスで出版された。ドイツ舞台芸術基金(2021年)のために舞台芸術の多様化プロセスを、ASSITEJドイツ(2023年)のために児童・青少年劇場の多様化プロセスを調査し、文化政策への実践的なアプローチに焦点を当てている。Meike Lettau(ツェッペリン大学ジュニアプロフェッサー/対外文化政策、国際文化関係)と共著で海外ジャーナル『International Journal of Cultural Policy』 に「ドクメンタ15の認識論上の転換・権力不均衡・コンフリクト―ヨーロッパ中心主義を乗り越える脱植民地主義的文化政策の概念」(2024)掲載。若手研究者ら16人と「ドクメンタ15」に関する10の論稿「Decolonial Cultural Practices Towards Pluriversal Cultural Institutions and Policies」(2025)をまとめ、Meike Lettauとともに編著者として刊行。
【シンポジウム2】
「文化的コモンズ再考 ——文化資源の領域横断的な共有と活用」
「文化的コモンズ」とは、地域の人々が世代を超えて共有・継承していく文化資源、場、活動などを指す概念です。今日、それはアートやまちづくりといった領域と結びつきながら、地域の文化的公共性を支える新たな基盤として再注目されています。本シンポジウムでは、「文化的コモンズ」概念の系譜を踏まえつつ、現代の文化政策や地域実践との関係を再検討します。また、奈良を拠点に継続的に実践を重ねてきたコーディネーターの経験をもとに、文化資源の持続的な共有と活用のあり方について具体的な議論を行います。
パネラー(事例報告):
飯村有加(アートコーディネーター)
横堀ふみ(ダンスボックス神戸)
常盤成紀(堺市文化文化振興財団)
コーディネーター:
吉本光宏(文化コモンズ研究所)
コメンテーター:
大澤寅雄(文化コモンズ研究所)
藤野一夫(神戸大学)
日本文化政策学会 第19回年次研究大会
実行委員長 風間勇助(奈良県立大学)