ワークショップの時にはyasknさんの方から、
「Toblerの引用したハイキング関数は、ヨーロッパの山岳地帯において実験から得られた数字であって、実際の適用には慎重でなければならない」
といった趣旨のご発言があったかと思います。
そして
「起伏が連続し、岩場などが存在する山岳地帯ではなく、比較的平坦な面が連続する台地上を移動する場合は、関数の値が異なってくる可能性がある」
ことから検討対象地域に適応度の高い関数の必要性を主張されておりました。
また海外の実験例として、実際にGPSのアンテナを背負って歩き、独自の移動コストを算出しようとした事例もご紹介いただきました。
そこで、我々も実際にGPSのアンテナを持って歩いてみよう!という話がその時(半ば冗談で)出ました。
もちろん「現代人の我々が、検討対象としたい人々と同じ条件で歩くことが果たして可能なのか?」という疑問は常について回りますが、
それでも、うまくいくかどうかは別にして、色々実験してみるのは面白いのではないかと思います。
実際、この実験で得られるデータは別の目的(GPSの精度の検証など)としても役立てることが出来、それはそれで色々と便利だと思います。
ですから、一度そうした実験を行ってみたいと思っております。
まだ具体的なことは全く決まっていませんが、興味のある方がいらっしゃいましたらこのスレッドで色々とご意見を伺いたいと思います。
なお、実験を行う前にもう一度きちんとハイキング関数について勉強し直す機会を設けたいとも思っております。
みんなで関係論文を読み合って、問題点の抽出を行うとか。
いかがでしょう?
第1ラウンドの話題提供で言及した海外の実験例の出典を記しておきます。
Rahn, R.B. (2006) Calibrating Cost Surfaces: Computers vs. 'The Real
Thing'. in: J.T. Clark et al. (eds.) Digital Discovery: Exploring New
Frontiers in Human Heritage. CAA 2006 Fargo Program and Abstracts, p.
93.
アブストラクトは下記URLに掲載されています。
http://www.caa2006.org/schedule/viewabstract.php?id=208
どうぞご参照ください。
実験考古学の基本は、できる限り当時の状況を忠実に再現することにあると思います。
かといって、古環境を復元するのは不可能なので、せめて装備を当時のそれに
近づけたらいいんじゃないでしょうか。
たとえば履物。トレッキングブーツなんかはもってのほかです(笑)。
また、どのようなタイプの移動を想定しているのかを明確にすることも重要ですよね。
たとえばアンデスのチャスキ(飛脚)のような、比較的軽装備で少人数のメッセンジャー
なのか、それともたくさんの荷物を運んでいる隊商のようなものなのか。さらに細かく
見ていけば、隊商の構成員の年齢や性別なども考慮する必要があるかもしれません。
あと、当時のルートが必ずしも最短ルートだとは限りません。それに、政体間抗争
などの理由により、ルートそのものがころころ変わった可能性もあります。また、ルート
決定には文化的な要素も関連していたかもしれません。当時の状況を復元するという
のは、必ずしも物質的な環境だけを対象にすればいいというわけではないですから。
つまり、こういう実験て、意外に下準備が大変なんですよ。「うるせーなー」と思われる
かもしれませんが(笑)。
うーーん、やっぱりgocitoさんには、workshopに参加して
いただきたかった。
この話、出ていましたよね。
物理的制約、政治的制約、経済的制約。さらに、移動に対する概念定義。
うちの修士は、「移動コスト計算は、ヤベェ。簡単に考えて論文出すと
たたかれるな。」と言ってましたよ。
難しい分だけおもしろい。でも、評価ができない。
いやー、悩ましいですね。
On 2007/02/03, at 1:31, gocito wrote:
>
>> もちろん「現代人の我々が、検討対象としたい人々と同じ条件で歩
>> くことが
>> 果たして可能なのか?」という疑問は常について回りますが、
>
> 実験考古学の基本は、できる限り当時の状況を忠実に再現することに
> あると思います。
> かといって、古環境を復元するのは不可能なので、せめて装備を当時
にもかかわらず重複した内容を、しかも偉そうに...。
失礼しました!
> にもかかわらず重複した内容を、しかも偉そうに...。
> 失礼しました!
いえいえ、改めてテキスト化しておくこと、様々な人がそれぞれの言葉で表現することは重要だと思いますので、お気になさらないでください。
当日の議論に際しても、お二人にご指摘いただいたことも含めて、
様々な有益なご意見を頂きました。
もちろん実験は色々と下準備をした上で、
1回だけではなく、Try & Errorで何度も出来れば良いと思っています。
そして、GPSや数学的な知識だけではなく、
想定する時代・地域などの環境・思想・装備・性別・年齢などについても
当然調べられることは調べていきたいと思います。
そのためにも議論の場が必要だと思いましたので、このスレッドを立ち上げました。
ここで軽く議論や知識の共有をしておいて、
実際にみんなで集まってまた議論したり勉強できたりしたら良いと思います。
皆さんのご意見をお待ちしております。
難しい問題は色々とあるけれど、実際のところ、やっぱりみんなやってみたいでしょ?
きっと楽しいし、勉強になると思うんだけどなぁー。
1.実験場所の選定
2.実験環境の想定
3.被験者の条件
4.3と関係するが、被験者の装備
5.その他、政治的・思想的条件をどのように勘案するか。
いまのところ思いつくのはこのくらいですが、
他に何かありますでしょうか?
それぞれに議論をしていきたいと思います。
1については各研究者によって、研究対象としている地形に似たような環境のところを希望するでしょうね。
どれもむずかしー問題だなー。
Imhofの実験の具体的な方法はToblerの論文だけではわからないのですが、そこから検証を始めるのが重要では
ないかと思います。Rahnも具体的にどのように「補正」したのか気になります。
Imhofの方法を吟味した上で、たとえばヨーロッパ人と日本人の体格の違いから、数式の一部を見直す必要があり、
日本人の場合は下り-3°がもっとも楽チンなわけではない、という結果になるかもしれません。
もしも検証の結果、二足歩行の移動コスト算出方法として普遍性を持つと判断できたら、関東平野でもアンデス山脈でも
とにかくImhofの被験者を歩かせてみて、ルート自体の潜在的なコストを測れます(とりあえず変数は傾斜のみですが)。
私の関心は、まずはこのレベルにあります。河谷の中流に位置する私のフィールドでは、山を越えて隣の谷との往来が
あったことが伺われるのですが、山中に想定される複数のルートをコスト面から比較してみたいのです。この場合、
具体的に何時間かかったのかは問題になりません。
さらに踏み込み、歩行速度(ならびに所要時間)を具体的に議論したいのであれば(皆さんの関心はこちら寄りのようですね)
乱暴に言ってしまえば、歩行速度Wを左辺とするハイキング関数の数式に対し、状況に応じた係数を右辺に掛ける。
たとえば牛歩なら×0.1とか、gocitoさんの挙げたアンデスの飛脚なら×5とか、Imhofの被験者との違いを数値化するのが
ひとつの手かと思います。
しかし正直に言うと私は、過去の人間行動をそこまで具体的に再現できるかと言ったら、悲観的なのですが。
ともあれまずはImhof (ならびにRahn)の実験内容をを詳細に検討するのは意義があるかと思います。
千葉et.al 2000ではその辺の議論がされているんでしょうかね。この号持ってないし大学にもない...
>いずれ実際の実験をやりたいと思っていますが、
>それに向けて議論しておきたいことを整理しておきたいと思います。
まずは「実験の目的・意義」でしょうか。
傾斜、それに雪原での負荷など、すでに検証がなされた要素のほかに、コストを左右する意外な要因を発見できるかも
しれない、という点において意義があると、私は思います。
たとえば、生理的な要因なんてのはどうなんでしょうか。
まず私の頭に浮かぶのは水分補給です。長距離移動を想定した場合、食品の携行はまだ容易かもですが
飲料水はそうは行かないのではないでしょうか。河川・湧水の分布と照らすと別のコスト評価方法が
見えてくるのではとぼんやりと思います。昔の水資源分布を厳密に再現するのもまた困難かも知れませんが。
余談ですがアンデス文明ではヒョウタンに始まり、土器が導入されてからもボトルがさかんに作られます。
用途についてはしばしば酒の容器とされますが、積極的に検証はされていなかったはず。
クレイジーと評したくなる長距離移動の痕跡を見るにつけ、初期のボトルの第一の機能は水筒ではなかったかと
思い始めています。もちろん状況に応じて酒用に転用されてもいっこうに構わないのですが。
うちの遺跡で出た完形ボトルの中の土を保存してあるので、酒の原料となるトウモロコシやキャッサバの痕跡が
目立って見られないようなら、水筒説もアリかなと思っているところです。
先日、
千葉史・貝森和美・横山隆三・菊池強2000
「地理情報システムを用いた遺跡集落ブロックの形成と最適交流経路の推定--北奥羽地方の縄文時代中期遺跡分布に関して--」
『情報考古学』Vol.6 No.2 日本情報考古学会
およびその関連文献をコピーしてきました。
今ボチボチ読んでます(ちょっと別のことで忙しくてなかなか進みません)。
近いうちにレビューなどを書きたいと思います。
この文献、手に入らないという方はPDFか何かにしてお送りしましょうか?
知識の共有化は必要でしょうから!
ちなみに、この論文に
Kantner, John 1996
An Evaluation of Chaco Anasazi Roadways. Current Technology Applied to
Archaeology Poster Session, 61st Society for American Archaeology
Annual Meeting, pp.1-22.
というのが引用されていまして、
このKartnerさんはニューメキシコ州のアメリカ先住民集落間の移動問題に応用して良い結果が得られたと報告しているみたいです。
Toblerのハイキング関数は意外と普遍性が高いのかな...?
ETさんが上記の記事で指摘されていたり、やあかねださんも以前仰っていましたが、
とりあえずはこのToblerの実験結果のモデルをもってみんなが検討してみるところからスタートすることが必要ですね。
世界中どんなところでも「Tobler(Imhof?)モデル君」に歩いてもらう、と。
...でもそれだけじゃ面白くないんで、とりあえず僕らも実験してみましょ?
結果だけを求めるんじゃなくて、そのプロセスを楽しみましょう!
あとそれから、千葉et.al 2000の論文には最短経路の求め方として
ダイクストラ法が紹介されていて、その参考文献としてC言語の文献が挙げられてました(!)
おいおい、C言語まで使わないといけないのかよ...(泣)
この辺になってくるとサパーリわかりません。
誰か教えて!!(大泣)
最後に...
鶴見さんの仰っていた「水分補給」の視点、
ハッと気がつかされました。
確かにこの視点は重要ですよね。
僕も山歩きするのでよくわかりますが、
1日の歩行時間が6時間位あったとして、
その間水分補給できる場所が1箇所もなかったら結構悲惨です。
相当大きな水筒を持っていないと不安だと思います。
まぁ個人差はあって、訓練の仕方によっては
あまり水を飲まずとも歩けるようになったりはしますが...。
この辺のことはどう考えているんでしょうね...?
岡安さんもコメントありがとうございました。
馬の移動コストは僕も興味あります。
古代の移動手段としてはポピュラーですから。
でも仰るとおりどうテストしたもんか...。
日本の原生種の走行データでも入手すればいいのかな...?
船もかー...これも重要ですね。
いずれにしろ、僕ら考古学をやってる人間だけではとても太刀打ちできませんね...。
交通史の学史を紐解く作業と共に、そちらの専門家の方とのコネクションも持てるようになれればいいのですが...。
どなたかお知り合いの中に、この辺の専門家の方がいらっしゃる方はいませんか?
たしかYasknさんの発表で、移動コストの低いルートは川沿いになりやすいというご指摘があったと
思います。その場合(たとえば平野でしょうか)、水分補給はあまり問題にならないかも知れません。
川のないところ、たとえば平野でなく山越えの場合にこの問題は大きいように思います。
私のフィールドでは砂漠越えが課題になっています。海岸砂漠を横切る谷間谷間に集落があるのですが、
谷と谷とで交流する場合も、わざわざ水と緑のある中流域まで登って山越えをしているふしがあります。
人間だけなら水筒下げて、砂漠の狭いところを選んで突っ切ることもあったと思うんですが、ラクダのキャラバンが
存在した可能性があります。ラクダと言ってもこの場合、砂漠に適応した種ではなく、標高4000m超の高地から
無理矢理連れてきたリャマです。それに魚の干物やら貝やら背負わせて歩かせるわけです。
こいつの移動コストを考える場合、距離よりもむしろ水と草が問題になるだろうと予想されます。
ちなみにこいつを連れてると、一般的に徒歩よりもむしろスピードが落ちます。騎馬と対照的なケースと言えそうです。
>岡安光彦様
鶴見と申します。筑波のK君がラオスでお手伝いしたそうですが、彼と3年前にペルーで発掘をした者です。
今後お目にかかることもあるかと思いますので、よろしくお願いいたします。
鶴見さま、ぜひ近々お会いして楽しくやりましょう。
返事が遅れて失礼しました。
あっちこっちに首を突っ込んで、今どこに自分がいるのか、怪しくなっております。
On 3月9日, 午後12:00, "ET" <las_hua...@yahoo.co.jp> wrote:
> たしかYasknさんの発表で、移動コストの低いルートは川沿いになりやすいというご指摘があったと
>
>
>
>
> 存在した可能性があります。ラクダと言ってもこの場合、砂漠に適応した種ではなく、標高4000m超の高地から
>
>
> 鶴見と申します。筑波のK君がラオスでお手伝いしたそうですが、彼と3年前にペルーで発掘をした者です。
予定されているフィールド実験に向けて、このスレッドも少し活性化しておきたいと思い、投稿しておきます。
以前紹介した、
> Kantner, John 1996
> An Evaluation of Chaco Anasazi Roadways. Current Technology Applied to
> Archaeology Poster Session, 61st Society for American Archaeology
> Annual Meeting, pp.1-22.
という論文ですが、
http://sipapu.ucsb.edu/roads/
上記のサイトが著者のサイトになっているようで、
HTML版がとPDFが用意されていました。
研究史として見ておく必要があるかもしれません。
他にも事前準備として重要な文献があれば、
こちらのスレッドでどんどん紹介していきましょう!
神津島フィールド歩行実験の方法について、gocito(松本)さん曰く、
> GISを使って最短経路を検索する場合、条件設定をすることが
> できません。そこで上述のような目的別経路を設定することに意味が
> 出てくるのです。歩行時間については、一応は計っておくものの、
> 「速さ重視」の経路との比較においてのみ考慮されるべきで、僕個人
> としては、その他の経路ごと・固体ごとの歩行時間を事細かに比較する
> ことについてはほとんど意味がないと考えます。
今回の実験で問題となるToblerのハイキング関数の、もともとの形は、
W = 6 exp {-3.5 * abs (S + 0.05)} ......(イ)
です。ここで、Wは歩行速度(km/h)、Sは傾斜角 dh/dx = tanθ です。
傾斜角がラジアンで与えられていることに注意してください。
Sに加算される補正項0.05をラジアンと見なすと、
「実際よりも上り坂では約2.86度急な傾斜、下り坂では約2.86度緩い傾斜を
想定しなさい」という意味に取ることができます。
なお、expは自然対数eのベキ乗、absは絶対値を表します。
原典(Tobler, 1993)を読み返して、はじめて気づいたのですが、
この式は、平坦面を歩く速度が時速5kmとなるように設定してあります。
余談ですが、もともとこの式は小径(path)上を歩く場合を想定しており、
小径外(off-path)では3/5 (60%)、乗馬の場合は5/4 (125%) を右辺に乗じる
という補正項が設定されています。
(イ)式で明らかなように、ハイキング関数は傾斜角を変数として
歩行速度を求める数式です。所要時間をT (時間)、距離をD (km)とすると、
よく知られているように、
T = 距離D / 速度W ......(ロ)
の関係が成り立ちますから、
距離が既知であれば、ハイキング関数から歩行時間を求めることができます。
コスト平面は、ハイキング関数から1セルあたりの歩行時間を求めることによって作成されます。
1辺5mの正方形のセルを一辺の中点から対辺の中点に向けて通過するのに要する時間t(分)は、
t = 60T より、(ロ)式にT = t/60、D = 5/1000 = 0.005 を代入して、
t/60 = 0.005/W
∴ t = 0.3/W ......(ハ)
(ハ)式に(イ)式を代入すると、
t = 0.05 / exp {-3.5 * abs (S + 0.05)} ......(二)
したがって、一般的に、傾斜角θ(度)の区間d(m)を歩行するのに要する時間t(分)は、
次式により求めることができます。
t = 0.01d / exp {-3.5 * abs (tanθ+ 0.05)} ......(ホ)
ところで、GISの最小コスト経路算出アルゴリズムは、単純にいうと、コスト値がセル値(value)として格納された
ラスタ平面(コスト平面; cost surface)において、出発点(セル)から到着点(セル)まで、
何千何万通り存在するルートの各々につき、通過するセルの値を次々に足していった
合計値が最も小さいルートを最小コスト経路(least cost pathway)と見なすというものです。
ArcGIS Spatial Analystの場合、「最短パス」の算出には、
出発地を原点とするコスト平面のラスタデータと、そこから作成される方向データ(DEMの傾斜方向 angle のようなもの)、
目的地の位置情報(ポイントフィーチャ)をパラメータとして用います。
つまり、方向データによって重みづけされた最小コスト経路を、最短パスと見なしています。
それから
実は、最短経路の算出には、このようなデフォルトの条件設定がなされていることがあります。
コスト平面の条件設定は、変更することが可能です。たとえば、経由地を設定したり(出発地から経由地1、経由地1から
経由地2,...,経由地n-1から経由地n, 経由地nから到着地の各最短パスを合成)、植生や河川など障害地形をコスト平面の値に
加味したりすることができます(これにより、歩きやすさを定量化します)。方向データは、どちらの方向(方位角)が
よりコストが少ないかということを示していますから、ある意味「歩きやすさ」を反映しているといえます。
まとめると、Toblerのモデルを採用する場合、少なくともArcGISの最短経路計算アルゴリズムにおいては、
1. 各セルごとの歩行時間がコスト値として考慮されます。
2. 最短パスは、方向データ(歩きやすさ)で重み付けした最短時間経路です。
問い:これを踏まえると、移動コスト計算のフィールド実証実験(FIELDWALK@KOZU)の、
経路選択実験において、どのような目的別の条件設定ができるでしょうか?
近藤 康久 [Yaskn]
目的別の条件設定につきまして、「経路の単純さ」も定量化できるコス
ト値ではないでしょうか?
個人の好みもありますが、歩行時間が多少増えても移動経路が単純であ
れば、単純な経路を人は選択するのではないかと考えます。経路が単純
であることは、その土地になれた人でも精神的な負担が小さいと考えま
す。
経路選択基準の一つとして、考慮すべきパラメータである気がします。
On 2007/08/26, at 18:54, yaskn wrote:
> 実は、最短経路の算出には、このようなデフォルトの条件設定がなさ
> れていることがあります。
> コスト平面の条件設定は、変更することが可能です。たとえば、経由
> 地を設定したり(出発地から経由地1、経由地1から
> 経由地2,...,経由地n-1から経由地n, 経由地
> nから到着地の各最短パスを合成)、植生や河川など障害地形をコス
> ト平面の値に
> 加味したりすることができます(これにより、歩きやすさを定量化し
さて、AKOさんからのご提案、その通りだと直感します。
ところで「経路の単純さ」は、最小コスト経路においてどのような条件として反映されるでしょうか。
思いつくままあげてみると、
1. 方向転換(パスの変曲点)はなるべく少なくする。
2. 目的地までなるべく直線に近い経路をたどる。
3. 崖など急勾配(a度以上)の地形では、1・2にこだわらず、周辺(半径bメートル)の中でコスト最小の迂回路を探す。
4. 目的地または経由地が視認できる場所を通る。
他にもありませんか?
1 3については、コスト平面における経路選択アルゴリズムを検証する必要があります。
一般に、GISではコスト平面積算法(accumulated cost surface)が採用されています。
詳細につきましては、移動コストの計算法とあわせて、下記文献を参照してください。
Conolly, J. and M. Lake (2006) Geographical Information Systems in
Archaeology.
Cambridge Manuals in Archaeology. Cambridge University Press. pp.
215-225.
また、もともとArcGISのSpatial Analystには、方向データを使ってなるべく「単純な」経路を
選択するアルゴリズムが組み込まれている可能性がありますので、説明書(ヘルプ)を一度
調べてみる必要があります。
4については、眺望分析(viewshed analysis)の手法をミックスすることになります。
具体的には、目的地(or経由地)が見えるセルの歩行速度を減らすか、
または見えないセルの歩行速度を上げるかして調整することになります。
問題は、調整値としてどのような定数を与えるかということです...
眺望分析は、やまひろさんの十八番(おはこ)でしょうか(笑)
いかがでしょう?
というわけで言葉にしてみました。
----
そもそも、計算機によって関数で算出されるような「最低コスト
経路の選択」が人間にも同じようにできるのか、ってところが
僕にはまだイマイチよく分かりません。正直なところ、そんな
正確には分からないんじゃないかと思っています。じゃあ縄文人
も、僕らもどんな風にして経路を決定するのか。
一つには、これまでここで論じられてきたように、障害地形の
種類やそのコストの大きさが左右する歩き易さが挙げられると
思うのですが、では、その歩き易さを何で測るのかとなれば、
やはり体感ではないかと(これこそ実験でしか検証不可能な
factorです)。
歩きやすい経路を歩こうとしたら、体感的に「きつい」と感じる
傾斜や障害地形はできるだけ避けると思うんです。つまり、
「歩きやすい経路」が出来上がるまでには、不特定多数の通行人
によるそういう体感の繰り返しが必要なのではないかと考えます。
余談になりますが、ちょっとこの写真を見てください。
http://gomatsumoto.net/archive/road.jpg
うちの大学のキャンパスの一角です。(経路決定のプロセスを経た
後に)舗装された歩道があるにもかかわらず、(おそらく急いで
いる)学生たちはそこを通らず、ショートカットしようとします。
最初は芝が生えていたはずのそこは、学生が通るたびに少しずつ
芝が抜け、踏み固められ、新しい道が出来上がってしまいました。
こういう日常行為の積み重ねとしての道はキャンパスのあちこちに
見受けられます。
つまり、いわゆるpathには少なくとも二種類あるということに
なります。(1) 一部の人々が何らかの基準にもとづいて定めた
ものと、(2) 多くの人々が自ら経路を変更し、往来を繰り返した
後に出来上がるものの二つです。
# また、(1) の道に比べて、(2) の道は変化しにくいように思い
# ます。(多数の人々の意思決定の結果として)ひとたび固まると、
# それ以降は経路選択の必要がなくなり、通行者は固定された経路
# を何も考えずに使用するようになります。そこには経路決定の
# プロセスが存在せず、ふたたび変化するには経路を変更せざるを
# 得ない何らかの(外的?)要因が必要になります。
「歩き易さ」ということを考慮した場合、体感に基づいた後者の
経路決定プロセスを想定すべきなんじゃないかと思いました。
そこで思いついたんですが、
心拍数とか呼吸量の変化を計測すれば、「歩き易さ」を定量化
できるのではないでしょうか。だって、辛いなーって思うときは
息が上がってますから。リソース的な制約を考えれば、実際に
出来そうなのは心拍数の計測くらいでしょうね。
たとえば一定の傾斜・距離を歩くときの「歩きやすい」とか
「きつい」とか「もう無理ー」といった体感を心拍数の大小で表現
できれば、傾斜角をいくつかに分類できると思うんです。「歩き
やすい傾斜」は何度以下、「きつい傾斜」は何度以上といった
具合に。それを傾斜角のコスト値として反映できれば、自然環境に
対して単に受身でない、もう少し主観(意思決定)を反映したモデル
が作れるんじゃないかなーなんて。ちょっと先走って、processual
考古学的アプローチとpostprocessualのそれを融合できるかも!
なんて大それたことを思ったりもしていますが、いかがでしょうか。
とはいえ、僕は数学が苦手なため、具体的な数字の話になるとギブ
アップです。w
思い付きっぽい話のわりには長くなりました。
松本
4については、似たような研究があります。今週発表予定のペーパー
の中でも言及していますので、参考までに抜粋します。
"Furthermore, Madry and Rakos (1996) employ optimum
path analysis as well as viewshed analysis to examine the
relationship between Celtic hillforts and roads in the Burgundy
region of France. They argue a strong correlation of these
roads with visibility from the hilltop defenses."
Madry, Scott L. H. and Lynn Rakos
1996 Line-of-Sight and Cost-Surface Techniques for Regional
Research in the Arroux River Valley. In New Methods, Old
Problems: Geographic Information Systems in Modern
Archaeological Research, Occasional Paper No.23, edited by
Herbert D. G. Maschner, pp.104-126. Center for Archaeological
Investigations, Southern Illinois University at Carbondale.
●least-cost pathは経済モデル
そもそも、least-cost pathという考えは、「人々は道を作る際に
もっともcost-efficientなルートを取る」という比較的シンプルな
premiseに基づいており、道が作られた理由を経済的な見地から説明
しようとするものです。ですから、経路を決める上でcost-efficiency
以外の要因が作用する場合、Kantner (1996) が示すように、least-
cost pathの手法では対応不可能ということになります(注1)。
つまり、経路決定の方法はその目的によって異なるはずで、経済
的な目的ならleast-cost pathモデル、宗教やその他の目的なら、
それ相応のモデルが必要になります。また、そもそも、そういった
least-cost path以外のモデルをGISで扱えるのかという根本的な
問題も発生します(さまざまなコスト平面を用意することで対応
可能なのかもしれませんが)。したがって、least-cost pathの
アルゴリズムを検証しようということであれば、その根底には上記
のようなpremiseがあることを忘れてはなりません。
*注1: しかし、実地検証なしにコンピュータスクリーン上の経路
比較のみから経済モデル以外のモデルが必要だとするのは早計かも
しれません。上で触れたKantner (1996) はGISによって算出された
least-cost pathが先史時代の道と大きくずれることを以て、経済
モデル以外のモデルの必要性を主張しています。ですが、地形図の
等高線から読み取れるように、どちらの道も比較的平坦なところを
通っており、実際に歩いた場合、人は経路の違いを体感できるの
だろうかという疑問が付きまといます。つまり、体感できるレベル
でのコストを比べた場合、どちらの経路でもほとんど違いはないの
ではないかということです。実際、先史時代の人々は彼らが選んだ
経路をもっともcost-efficientだと考えていたかもしれません。
●遺物散布地を結ぶことの妥当性
Kantner (1996) がChaco Canyonでやったように、建築を伴う
遺跡間を結ぶ縄文時代の道がたとえ部分的にでも残っていて、
それをGISが算出した経路と比較できるならともかく、そうでない
場合には、経路の始点・終点が任意の点であっても、別に大差
無いということになりませんか(しかも「遺跡」としてプロット
できるものが居住地ではなく、遺物散布地であるならなおさら)。
たとえ僕らが縄文人が通ったと思われる経路を見つけ出すことが
できたとしても、その妥当性を<考古学的に>検証する手立ては
ないわけですから。それに、(近藤さんが前回の投稿で触れられた)
viewshedなどを考慮するためには、遺物散布地のような遠くから
目視しにくい地点だと何かと不都合が生じるのではないかと思い
ます。ですので、使いやすい地点を僕らが選んでもかまわないの
ではないかと思います。
●この実験のオリジナリティ
また、遺跡間を結ぶ縄文時代の道が存在せず、実験によって得ら
れた僕らのleast-cost pathの妥当性を考古学的に検証できない以上、
今回の実験でできることは、飽くまで関数そのものの妥当性の検証
のみということになります。僕らのpathをGISのそれと比べてその
違いを指摘するだけではRahn (2006) の二番煎じでしかありません
ので、(1) これまで使われてきたtobler関数そのものに手を加えて、
対象地域(神津島)により適したものへとreviseするか、(2) コスト
平面の種類を増やし、その質を向上させることで詳細な条件付けを
行い、tobler関数を補助するか、(3) もしくはまったく別の考え方
に基づいた経路算出方法を提示しなくてはならないと思います。
●対象地域のスケールとDEM解像度の関係
これはコメントというより質問です。Tobler (1993) のモデルを
採用したこれまでの研究はスケールの小さな(大規模な地域を扱った)
ものが多いように思います。使用するDEMも比較的解像度が低い。
ところがDEMの解像度によって、算出される経路が大幅に変わって
くる場合があり、対象地域のスケールに応じた解像度ってのがある
ように思います。今回の実験調査の対象は、最長距離で約6.5km程度
しかない小さな島。使用するDEMの解像度は5m(でしたよね?)。
僕はこれで十分だと思っているんですが、さらに解像度の高いDEM
(たとえば1m)を使う場合と結果が大きく違う可能性ってあるんで
しょうか。
以上です。
松本
> 心拍数とか呼吸量の変化を計測すれば、「歩き易さ」を定量化
> できるのではないでしょうか。だって、辛いなーって思うときは
> 息が上がってますから。リソース的な制約を考えれば、実際に
> 出来そうなのは心拍数の計測くらいでしょうね。
同感です。心拍数については、やまひろさんがブログで紹介して
くださった心拍計付きGPS腕時計(GARMIN社製)を使えば
測定可能です。
http://archaeolog.exblog.jp/6294363/
ただし、10月初旬の実験までに購入できるでしょうか...
ちなみに、歩行者の体重と荷重、歩行速度、地形、およぼ斜面の傾斜角から
「絶対エネルギー支出(Absolute energetic expenditure)」すなわち
歩行による消費カロリー(正確にはエネルギー率)を試算する方法があります。
消費されるワットをM, 歩行者の体重をW (kg), 荷重をL (kg), 歩行速度をV (km/1),
地形要因定数をN(道を1とする), 傾斜角をG (%)とするとき、
M = 1.5W + 2.0(W + L)(L / W)^2 + N(W + L){1.5V^2 + 0.35V* abs(G + 6)}
典拠:Conolly and Lake (2006), pp.220-221
オリジナル: Van Leusen (2002) Pattern to process:
methodological investigations into the formation and interpretation of
spatial patterns
in archaeological landscapes.
PhD dissertation, University of Groningen. Chapter 6.
http://dissertations.ub.rug.nl/faculties/arts/2002/p.m.van.leusen/
(2007年8月30日アクセス)
この方程式は、ハイキング関数のalternativeとなりそうです。
今回の実験でも、この方程式を用いたコスト平面モデルを作成してみようと
考えています。
どんな方法であれ、脈拍の実測値の変化と比較できると面白いですね。
> ● least-cost pathは経済モデル
以前Say-noさんも紹介してくださったKantner (1996)をあらためて読んでみました。
解析図を見る限り、先史時代の道(の断片)と最小コスト経路は、一致する部分もあれば、
一致しない部分もあるようです。単純に考えれば、一致する区間では勾配のなるべく少ない
経路を「経済的に」選択し、一致しない区間では勾配以外の判断基準でもって経路を
選択していると解釈できます。「それ以外の理由」が政治的なものか、宗教的なものか、
はたまた別の要因かということを文化的コンテクストとからめて考察するのが、
考古学者に与えられた仕事だと思います。
経済的要因優先のプロセス考古学的手法で説明できない部分を、事象優先のポストプロセス的
手法で説明づける、という二段構え/いいとこどりをすることになりますね。
ちなみに、縄文時代には、横浜市古梅谷(こうめやと)遺跡などの発掘事例から、
集落と近隣の低湿地(水場)が「木道」で結ばれていたことが知られています。
木道は、土木建設作業が必要なので、松本さんの定義によれば、明らかに「計画された道」に
あてはまります。当初は「自然発生的に形成された道」だったものが、利便性の向上を図るために
丸太と杭からなる恒久的な構造物に置き換えられたのでしょう。
参考:横浜市歴史博物館ウェブサイト http://inoues.net/museum/yokohama_museum.html
最初コスト経路も、地域間・遺跡間の道(マクロスケール)から集落周辺の道(ミクロスケール)まで、
マルチスケールに考察する必要がありそうです。
> ● 対象地域のスケールとDEM解像度の関係
5mメッシュに比べて、1mメッシュは5x5=25倍の高解像度になります。
その分、より細かい最小コスト経路を描くことが可能になります。
ただし、それによって精度が増すかというと、それは別問題です。
5mメッシュで直線的に結ばれていた区間が、1mメッシュにするとギザギザの経路で結ばれてしまう
可能性もあるからです。
詳しくは前出のConolly and Lake (2006) pp.30-31を参照してください。
この問題も興味深いので、事後処理の際に50m・5m・10m・1mのメッシュを用意して、結果を比べてみましょうか。
再来年ですかね。
松本
>松本さん
うひょーめっちゃかっちょいーじゃないですか!
採用!採用!!
公式サイトの方で使ってもいいですか?
リンク用のバナーとしても使ったら良さそう!
僕も作ろうと思ってたけど途中で挫折してます...でもまたやる気が出てきたかも...。
GPS衛星とかをモチーフにしようかと思ったんですけど、
あれってなんだかメチャクチャ複雑な形をしていて、
うまくデフォルメ出来ないんですよね...。
On 10月24日, 午前1:01, "MATSUMOTO Go" <goc...@siu.edu> wrote:
> 皆様
>
> 前にロゴを作るなんて話がありましたよね。
> ちょっと暇なときにこんなの作ってみました。
>
> 皆様のご意見をお聞かせください。
>
> 松本
>
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