クレイトン・クリステンセンが提唱した「イノベーション理論」は、企業の「盛者必衰の理」を鮮やかに描きました。
しかし、この理論は滅亡を回避するための「新たな成長機会の見つけ方」については何も教えてくれませんでした。
それを補完するのが『ジョブ理論(JTBD: Jobs To Be Done)』です。
◎ジョブ理論 イノベーションを予測可能にする消費のメカニズム
ジョブ理論では「人は何らかの『ジョブ』を 処理するために製品や サービスを『雇う』」と考えます。
例えば、人は「穴を開ける」ために「ドリル」を、「A地点からB地点に移動する」ために「車」を、
「思い出を残す」ために「カメラ」を雇う──のです。
最も有名なのは「マックシェイク」の逸話でしょう。売上を上げる秘訣は「粘度」を上げることでした。
人々は「通勤の暇つぶし」のためにマックシェイクを雇っていたので、粘度を上げた方が長持ちするからです。
もしかすると、「また新たなバズワーズが登場しただけではないのか?」と感じる人がいるかもしれません。
しかし、ジョブ理論には既存の製品カテゴリを「破壊」する力があります。
ジョブのレンズを通して見るとマーガリンはオリーブ油と、ホテルは友人宅のリビングルームと、
会計ソフトは鉛筆と「競合」するのです。
一般にデザイン思考は「0 to 1」の製品開発を指向していますが、
ジョブ理論は既存製品に「新たな成長機会(同時に脅威でもある)」を提供してくれます。
実はイノベーションの初期において、組織(特にスタートアップ)は「ジョブ指向」です。
クリステンセンも本書の中で「成功しているスタートアップ企業の多くは、
初めから四分の一インチの穴を売っている」と書いています。
ところが、その後、様々なニーズを満たそうとして製品を肥大化、複雑化させてしまいます。
そんな時にジョブは「イノベーションの北極星」となってくれます。
「顧客は何を片付けたくて我々を雇ったんだ?」と問いかけることで、
製品をシンプルに保つことができるからです。
マックシェイクから数えると、構築に20年かかったというジョブ理論。
提唱者がクリステンセンであるということも相まって、
今後、日本でも「ジョブ」はビジネスの共通言語になるかもしれませんね。
※お知らせ※
10/16(月)UXブッククラブ東東京で「ジョブ理論」やります。
以上。