みなさま
お世話になっております。
総合地球環境学研究所の金セッピョルと申します。
以前、川瀬さんやこのメーリスに入っておられる方々にご登壇いただき、『葬いとカメラ』という本を出版しましたが、その発展形として登壇アーティストの鄭梨愛(チョン・リエ)さんと、下記の展示を行います。
展示のみならず、9月16日(月・祝)は座談会やレセプション、懇親会もありますので、ご参加いただけると嬉しいです。
また神戸・塩屋の会場まで遠方から来られる方々のために、17日は塩屋ツアーも予定しております。
ご興味のある方はお気軽にご連絡ください。
以下、詳細となります。
どうぞよろしくお願いいたします。
【協力】一般社団法人デサイロ De-Silo
『「死を肖像する」鄭梨愛×金セッピョル 文化人類学とアートの協働がひらく地平』展
この展示は、アーティストの鄭梨愛と文化人類学者の金セッピョルが、「死そのもの」について共に考え、対話する過程で生まれました。
この展示を企画した金は、死と葬儀をテーマに研究を進めるなかで、現代社会において死が、個人の「人生の終わり」として捉えられがちな風潮に違和感を抱いてきました。死は、そういった人間中心かつ個人化した視座だけでは捉えられないものだと考えているからです。
「私の死」に備えることや「誰かの死」を悼むことの先にある「死そのもの」に、思索を巡らせたい。
本展示は、このような意図から企画されたものです。
ここで主に取り上げるのは、鄭が描いた初期の絵画作品です。
鄭は日本で生まれ育ち、小中高ともに朝鮮学校を卒業、朝鮮大学校にて美術を学びます。在学時から、日本の美術界へアプローチする外へ向けた活動を友人たちと積極的に行うなか、鄭は自身の「在日朝鮮人4世」というバックグラウンドを必然的に意識していくようになります。現在は、そういった自分のルーツを見据えた映像、インスタレーション作品などを中心に制作していますが、活動初期は自身の祖父を対象に絵画作品を制作していました。長年疎遠であった祖母が亡くなって恐怖と後悔を覚えたこと、そして祖母の葬式で再会した祖父の老いに衝撃を受けたことで、祖父の肖像画を描くようになっていたのです。今になって振り返ってみると、それは「生と死の影」を認識する経験であったことに気づきます。このような経緯で2011年から、祖父の死後の2016年頃まで制作された作品を、主に展示します。
祖父の日常的な姿を淡々と描写したものから、一人の人間として祖父が生きてきた歴史の捉えようのない深さと広さに戸惑いを隠せない作品。これらの作品は身内に対する温かい愛情のみならず、命をもつ者がまた別の命をもつ者を見つめることで生まれたものです。金は、これらの作品を文化人類学の視点から、また生まれて死にゆく一人の人間としての視点から捉え直し、その過程で紡がれた言葉を寄せます。
この二人の協働を通して「死そのもの」に向けて思考の拡張を試み、本展示では私たちの生に内在する死について考え、感覚することを目指します。
【座談会】
9月16日(月)
14:00〜15:30「死とことばと美術」
ゲスト:磯野真穂 (文化人類学者)、サラ・デュルト (美術史研究者)
16:00~17:30「生命と身体と絵の具」
ゲスト:大形綾 (思想史研究者)、佐々木健 (アーティスト)
※リアルタイム配信なし、録画は後日視聴可能
参加費:3,000円
-- 金セッピョル(文化人類学・博士)
総合地球環境学研究所・客員助教