高知の菜園場に新しくできたスペース「HIMOTOKUSABI」で開催する展覧会《見えん さかい目》のご案内です。高知に芝居絵屏風を残した江戸末期の絵師・弘瀬金蔵(絵金)と、最近放送がスタートしたNHK朝ドラ『ばけばけ』のモデルにもなっている小泉八雲にフォーカスしています。3名の出品作家が、曖昧でとらえがたい「境界」に焦点を当て、「恐怖」という感情を手がかりに、人間と自然、自己と他者、可視と不可視の関係を見直す試みを行います。
境界線ということで、僕は「こちらとあちら」、英語で『Here and There』というタイトルのジャン・リュック・ゴダールの同名映画(1976年)に着想を得た短編映像『バウンダリー/ダブルバインド』を出品します。
高知大学の吉岡一洋さんは、作家であり研究者でもある方で、芸術実践と学術研究の両輪を往還することの創造性にも着目いただきたいです。NHK朝ドラ『ばけばけ』のディレクターと出品作家・苅谷の対談映像も展示上映されます。遠方ですが、ぜひご来場ください!
■フライヤーのダウンロード
https://texsite.net/wp/wp-content/uploads/2025/10/InvisibleBoundary-flyerA5.pdf■地球研ウェブページ
https://www.chikyu.ac.jp/rihn/events/detail/310/↓以下、詳細な内容です。
■タイトル
地球研×高知大学 展覧会《見えん さかい目》(英語:Invisible Boundary)
■開催趣旨
地球規模の環境課題を考えるときに重要なのは、数値や科学的知見だけではありません。人びとが世界をどのように感じ、語り、恐れ、祝福してきたのか――その文化的・感情的な営みを読み解くことも不可欠です。総合地球環境学研究所(地球研)は、こうした視点から自然科学と人文・社会科学、そして芸術や社会実践をつなぐ学際的な取り組みを進めています。その根底には「境界=マージナルな領域こそが、新たな思考と対話の源泉である」という考えがあります。
本展では、曖昧でとらえがたい「境界」に焦点を当て、「恐怖」という感情を手がかりに、人間と自然、自己と他者、可視と不可視の関係を見直すことを試みます。江戸末期の絵師・弘瀬金蔵(絵金)が描いた芝居絵屏風には、怪談や仇討ちの場面を通じて人間の欲望や恐怖が戯画化され、祭礼の夜に人々を魅了してきました。恐怖のイメージは、異なる存在とのあいだに境界線を引くと同時に、その存在を想像し続ける装置として機能してきたのです。
こうした伝統を踏まえ、苅谷昌江は小泉八雲や『狂歌百物語』に連なる妖怪的想像力を描き、吉岡一洋はギュンター・グラスの思想を視覚化しつつ、土佐の祭礼文化における絵金の姿を提示します。そして澤崎賢一は、恐怖や畏怖、魅惑といった相反する感情が交錯する「境界線そのもの」を映像で探ります。
恐怖は普遍的でありながら、文化や経験、文脈によって異なる意味を持つ感情です。その多義性が生むズレや共鳴を通して、私たちが生きる社会の単一的な価値観を問い直し、理性と感情、可視と不可視のあいだに潜む新たな関係性を照らし出します。本展を通じて、あなた自身の感覚や記憶の中にある「境界」と向き合い、まだ言葉にならない新しい関係性を探ってみませんか。
■展示期間
2025年10月25日(土)、26日(日)、11月1日(土)、11月2日(日)、11月3日(月・祝)の5日間
オープン:11:00〜17:00
■会場
HIMOTOKUSABI 〒780-0823 高知県高知市菜園場町5−1
■企画/出品作家
澤崎賢一、苅谷昌江、吉岡一洋
■主催
人間文化研究機構 総合地球環境学研究所
人間文化研究機構 共創先導プロジェクト・共創促進事業
「開かれた人間文化研究を目指した社会共創コミュニケーションの構築」
■共催
高知大学地域協働学部デザイン研究室
HIMOTOKUSABI
■トークイベント
・2025年10月25日(土) 11〜12時
中谷有里(高知県立美術館)×苅谷昌江(アーティスト)
・2025年11月1日(土) 15〜16時
吉岡一洋(高知大学)×澤崎賢一(地球研)
■特別対談(映像展示)「物語を織りなすもの」
・泉並敬眞(NHK連続テレビ小説『ばけばけ』ディレクター)×苅谷昌江(アーティスト)×福島尚子(高知県立美術館)
■企画/出品作家
澤崎 賢一(アーティスト・映像作家/総合地球環境学研究所 特任助教)
texsite.net1978年生まれ。京都市立芸術大学大学院博士後期課程修了、博士(美術)。映像を基盤に異分野・異文化との共同を展開し、「暮らしのモンタージュ」「ヤングムスリムの窓」「センサリー/イマジナリー・ダイアローグ」など学際的プロジェクトを主宰。主な作品に、展覧会《語りかける庭》(2025)、展覧会《すべてのものとダンスを踊って》(金沢21世紀美術館、2024-25)、映画『#まなざしのかたち』(2021)、劇場公開映画『動いている庭』(2016)など。
吉岡 一洋(高知大学 教授/グラフィックデザイナー・版画家)
designlab-kochi.info1974年徳島市生まれ。専門はグラフィックデザインと版画。大阪芸術大学卒業。鳴門教育大学大学院修士課程修了。徳島大学大学院博士課程修了 博士(学術)。主な受賞歴は、二科展デザイン部特選、日本版画会展奨励賞、カダケス国際版画展入選(スペイン)、レッセドラ国際版画展入選(ブルガリア)、バンクーバー国際ミニプリントビエンナーレ入選(カナダ)、他国内外の展覧会で入選多数。作品制作のほか、地域の芸術文化に関して比較文化研究を行う。本研究の一部は、令和6年~令和8年度日本学術振興会科学研究費補助金(基盤研究(C))「土佐の祭礼文化における絵金の役割-映像の可能性について-」の交付を受けて行われた(研究課題24K03532)。
苅谷 昌江(アーティスト)
yellowvalleys.net1980年高知県生まれ。大阪芸術大学美術学科卒業、京都市立芸術大学大学院美術研究科修了。絵画・映像・インスタレーションを通じ、「野蛮」「トーテム」「マスク」「ヴンダーカンマー」を軸に人と自然の関係を再考する作品を展開。国内外で個展・グループ展に参加し、NHK連続テレビ小説「まんぷく」「スカーレット」「ばけばけ」では絵画指導も担当。
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澤崎 賢一|SAWAZAKI Kenichi, Ph.D
アーティスト・映像作家・キュレーター・リサーチャー
人間文化研究機構 人間文化研究創発センター研究員
総合地球環境学研究所 基盤研究部 特任助教(兼任)
京都市立芸術大学大学院 博士(美術)
E-mail :
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