水谷謙太 (Kenta Mizutani) 大阪大学大学院 (Osaka University)日本語の量化副詞について
概要:
本発表では、「いつも」や「たいてい」などの日本語の量化副詞に関し、これらの表現が量化する対象は何かという問題に取り組む。量化副詞に関しては2つの分析があり、事象(event)あるいは状況(situation)だけでなく、個体に対しても量化できるとする分析と、事象あるいは状況のみに対して量化できるとする分析がある。本発表では、(1) のようにコピュラ文「AはBだ」のBの位置に固有名詞を用いた文に対して、(2) のように個体に対する量化詞を加えた例と、(3) のように量化副詞を加えた例を取り上げる。そして、(2) と (3) には固有名詞の解釈に関して大きな違いがあることを指摘し、量化副詞が個体に対しても量化可能であるとする分析のもとでは、固有名の解釈に関するこの違いが適切に予測できないことを示す。一方で、量化副詞が事象あるいは状況に対してのみ量化可能であるとする分析では、これらの解釈の違いが適切に予測されることを示す。以上の議論を通して、本発表では日本語の量化副詞は事象あるいは状況に対してのみ量化を行うという分析のほうが経験的により優れていることを主張する。
(1) 背が高い人は太郎だ。
(2) ?たいていの背が高い人は太郎だ。
(3) 文脈:太郎はよくストリートバスケに参加する。以下の文は、太郎と一緒にストリートバスケに参加することが多い彼の友人による発言であるとする。背が高い人はたいてい太郎だ。だから彼はよくセンターを頼まれる。研究発表 (Lecture):15:15 ~ onwards和泉悠 (Yu Izumi) 南山大学 (Nanzan University)
固有名の述語説
概要:
言語哲学において、「名前と記述は根本的に異なる」という考えは特に1970年台以降通説となってきた。本発表では、名前・固有名は複数のものに当てはまる述語だとする「述語説 Predicativism」を提案し、固有名は文中で確定記述として機能するという考えを擁護する。発表の前半では、固有名の多様な用法に対して、述語説が十分な説明を与えることを示す。後半では、ロバ文的な固有名の用法に関する予備的実験調査を報告し、述語説の優位性を主張する。