「第7回動的語用論研究会--動的語用論(Dynamic Pragmatics)の構築へ向けて」のご案内 3月25日(日)於・京都工芸繊維大学

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田中廣明

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Feb 10, 2018, 2:04:07 AM2/10/18
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皆さま

  「第7回動的語用論研究会--動的語用論(Dynamic Pragmatics)の構築へ向けて」(京都工芸繊維大学・田中廣明研究室主催)を、第1回目、第2回目、第3回目、第4回目、第5回目、第6回目と同じく、京都工芸繊維大学で、来る3月25日(日)に開催いたします(今回は12:50 p.m.~5:00 p.m.までと開催時間が早くなっておりますので、ご注意下さい)。ふるってご参加下さい。

動的語用論研究会URL:
https://sites.google.com/site/dynamicpragmatics/home

 よろしくお願いいたします。

田中廣明
京都工芸繊維大学


 今回も、「動的語用論の構築へ向けて」と題し、「コミュニケーションのダイナミズム:周辺部の位置づけ」をテーマに掲げたいと思います。第一部では「ヴォイスの特殊性・クリック音の特殊性」をキーワードにして、アルタ語、中国語から、特殊性・周辺性がどのように中心性・一般性と関わりを持つのかを2つの研究発表で、第二部ではシンポジウムとして「歴史語用論から:周辺部に見られるダイナミズム」を中心に、発話の中心部から周辺部への構造上の歴史的変化、語彙形成(卑罵語の複合動詞(~てやがる))に見られる周辺的な歴史的変化、(譲歩)構文の周辺性から談話機能を持つようになる発展が、それぞれどのように一般性を持つようになるのかなどを、それぞれの講師に切り込んでいただきます。
 第一部では、木本幸憲氏(日本学術振興会特別研究員PD/名古屋大学)、遠藤智子氏(成蹊大学)による研究発表を行います。第二部では、小野寺典子先生(青山学院大学)・澤田淳先生(青山学院大学)・大橋浩先生(九州大学)をお迎えし、「「歴史語用論」と「発話のはじめと終わり (周辺部)」に見られるダイナミズム」と題して、シンポジウムを行っていただきます。
 今回の第7回動的語用論研究会の開催が、我が国の言語研究に一石を投じられたらという願いで開催したいと思います。ふるってご参加ください。

日時:2018年3月25日(日)12:50 ~5:00 p.m.
場所:京都工芸繊維大学(松ヶ崎キャンパス)60周年記念館1階記念ホール
http://www.kit.ac.jp/

交通案内 http://www.kit.ac.jp/uni_index/access/

最寄り駅から松ヶ崎キャンパスへの案内 http://www.kit.ac.jp/uni_index/matsugasaki/

キャンパスマップ http://www.kit.ac.jp/uni_index/matsugasaki/

受付:12:30 ~
趣旨説明と講師紹介:12:50 ~1:00 p.m.
「コミュニケーションのダイナミズム:周辺部の位置づけ」:田中廣明(京都工芸繊維大学)

第一部 1:00 p.m.~2:50 p.m.
テーマ:「ヴォイスの特殊性・クリック音の特殊性」 
【研究発表】
1.木本幸憲(日本学術振興会特別研究員PD/名古屋大学) 1:00 p.m.~1:50 p.m.
「フィリピン言語のヴォイスと格に関する談話的アプローチ:アルタ語のケーススタディから見える姿」

2. 遠藤智子(成蹊大学) 2:00 p.m.~2:50 p.m.
「中国語会話におけるクリックと参与スタンス」

第二部 3:00 p.m.~5:00 p.m.
テーマ:「歴史語用論から:周辺部に見られるダイナミズム」 
【シンポジウム】3:00 P.M.~5:00 P.M.
「歴史語用論」と「発話のはじめと終わり(周辺部)」に見られるダイナミズム
小野寺典子先生(青山学院大学)・澤田淳先生(青山学院大学)・大橋浩先生(九州大学)

1. 小野寺 典子(青山学院大学)
「歴史語用論と周辺部という2つのダイナミズム-文法化・構文化のよく起きる「発話のはじめと終わり」-」

2. 澤田 淳(青山学院大学)
「日本語の卑罵語の文法と歴史」

3. 大橋 浩(九州大学)
「譲歩から談話標識へ:周辺部の観点から」

連絡先:田中廣明(京都工芸繊維大学)
  〒606-8585 京都市左京区松ヶ崎橋上町 京都工芸繊維大学
  Tel. 075-724-7252(田中廣明研究室直通)Email: hta...@kit.ac.jp
参加費は無料。事前登録必要なし。
終了後、懇親会5,000円(場所は未定。懇親会参加希望者は田中廣明まで上記メール宛先にご連絡をいただけたら)

世話人兼発起人:田中廣明(京都工芸繊維大学)・岡本雅史(立命館大学)・小山哲春(京都ノートルダム女子大学)・木本幸憲(名古屋大学PD)・西田光一(下関市立大学)・五十嵐海理(龍谷大学)・山口征孝(神戸市外国語大学)・吉田悦子(三重大学)・秦かおり(大阪大学)

発表要旨
「フィリピン言語のヴォイスと格に関する談話的アプローチ:アルタ語のケーススタディから見える姿」
木本幸憲(日本学術振興会特別研究員PD/名古屋大学) 
本発表では、言語類型論において盛んに取り上げられてきたフィリピンの言語のヴォイスの特殊性について、通言語的な基準に基づいたアノテーションをもとに、フィールドに置いて収集した談話を質的・量的に分析することで、その具体像を明らかにすることを目的とする。フィリピンの言語の特徴と、その格(+ヴォイス)が、世界の言語に頻繁に見られる対格言語、能格言語とは異なった性質を持つものとして語られてきたことを導入として述べる。次に、発表者がフィリピンのルソン島でのアルタ語の調査を元に収集した談話データについて、多言語の分析に用いられている通言語的な基準に基づいたアノテーションを行った結果、極めて能格言語に近い振る舞いを示したことを報告する。この検証結果を通じてエリシテーションによらない実際の談話を調査からどのような分布の偏りが見え、それがどのような意味論的・語用論的制約を反映したものであるかについて議論したい。

「中国語会話におけるクリックと参与スタンス」
遠藤智子(成蹊大学)
日本語の会話にはあまり頻繁に現れないが、英語や中国語の会話にはクリック(吸着音、舌打ち)がしばしば観察される。英語会話のクリックに関しては近年研究が進んでおり、会話連鎖のマネージメントやスタンス表明の働きがあることが論じられている (Wright 2011; Ogden 2013)。本発表は英語会話のクリックに関する議論を参考にしながら、中国語会話におけるクリックについて考察する。中国語会話のクリックの多くは発話における節相当ユニットの開始直前か述語部分の直前に現れる。于(2007)が指摘するように中国語では不満だけでなく賛嘆の意味でもクリックが使用されうるが、日常会話のデータに多く見られるのはそのような評価的スタンス標識としてのクリックではない。むしろ、発話の産出において表現の選択等のトラブルがありながらも、何らかの形で発話の産出に踏み切る際に勢いをつけるものとして働く場合が多く、これはEndo (to appear)で提案した参与スタンス (participation stance) の現れ方の一種として考えることができる。

シンポジウム:「 歴史語用論 」と「発話のはじめと終わり (周辺部 )」に見られるダイナミズム
小野寺典子(青山学院大学)・澤田淳(青山学院大学)・大橋浩(九州大学)
20世紀から昨今にかけて、語用論の中心的議論にGriceによる「含意」とそれを読み解く「推論」があった。そうした語用論に加え、現在の語用論分野では、更に多岐なる関心について観察・議論がなされていると言える。「動的」と考えられるものから、本シンポジウムでは「歴史語用論」と「周辺部」(発話のはじめと終わり)を紹介し、3つの発表を行う。
歴史語用論は、1995年にAndreas H. Juckerにより編纂されたHistorical Pragmaticsが出発点と考えられており、専門誌Journal of Historical Pragmaticsは2000年1月に創刊された。歴史語用論で扱うトピックは、共時的な語用論と大差なく、また、文法化についても盛んに発表されてきた。共時的語用論に、「時間軸」を加えたものが歴史語用論であり、言語の形式や機能の通時性を見るという点が1つのダイナミズムと考えられる。
 一方、周辺部(発話のはじめと終わり; left periphery (LP)とright periphery (RP))という問題点は、1995年頃から着目され、より具体的には2009年i-Mean 1会議、数回にわたるIPrAIPrAにおいて研究発表・議論が続けられ(小野寺(編)(2017)『発話のはじめと終わり』等)、、現在に至っている。近年では、Journal of Historical Pragmatics 17:2 (Higashiizumi, Onodera, and Sohn (eds.)((2016))において周辺部の特集が組まれている。特に「発話のはじめと終わり」においては、「やりとり構造(順番交代)」と「行為構造」(Schiffrin(1987) Discourse Markers)による言語現象が活発に出現する。発話の周辺部で、会話運営上の行為や語用論的調節が多く見られ、また、だからこそ、この場所に「文法化」「構文化」の産物が多く観察されると言うことができる。
 本シンポジウムでは、主旨と報告(小野寺)、日英語の現象の報告(澤田・大橋)を行う。

「歴史語用論と周辺部という2つのダイナミズム-文法化・構文化のよく起きる「発話のはじめと終わり」-
小野寺 典子(青山学院大学)
 本発表の前半で、(1)歴史語用論と周辺部(左の周辺部と右の周辺部; left periphery (LP), right periphery (RP))という2つのダイナミズムについて概観する。そして後半で、(2)この2つのダイナミズムから見られる具体的事例として、周辺部、つまり発話頭 (LP)と発話末(RP)に文法化・構文化の産物としての表現が多く出現することを示したい。
話しことばの発話 (utterance) のうち、特にその冒頭部分である発話頭 (LP)は、話者が順番を取ったり、会話運営上の行為をなす場所であり、また発話末(RP)も、話者が活発に語用論的調節や発話行為を行うため、発話頭・末は発話の中でも特に注目に値する場所である。さらに、発話頭・末では文法化・構文化がよく起きており、文法化した言語形式・構文が多く見られる。発話頭の談話標識(英語のindeed, in fact,‘cause、日本語の「だから」「だって」「でも」等)、そして発話末の付加疑問文、general extenders(英語)、形式名詞節、言いさし(日本語)等である。
話しことばの談話が「命題・順番交代・(話者の)行為・参加者・情報」といった複数レベルの構造から成るしくみを持つことを提示した上で、発話頭と発話末で文法化・構文化がよく起きる原因として、「順番交代・行為」レベルが発話頭・末でよく作用していることを提案したい。 

「日本語の卑罵語の文法と歴史」
澤田 淳(青山学院大学)
敬語は、歴史語用論において特に注目されてきた現象の1つであり、素材敬語から対者敬語への文法化・間主観化、運用ルールの変化や対人配慮表示の仕方の変化など、多様な観点からの考察がなされてきた。一方、日本語において、同じく待遇表現(社会ダイクシスの表現)に位置づけられながらも、卑罵語(ヒバゴ)(軽卑語、下位待遇語などとも呼ばれる)は、卑俗な口語表現という特殊性を有するためもあってか、敬語に比べ活発な研究はなされてこなかったと言える。しかし、卑罵語の文法やその歴史は、敬語とはまた違った興味深い複雑さを有しており、方言的なバリエーションも豊富である(「~よる」「~くさる」「~てけつかる」「~さらす」「~さがる」など)。
本発表では、卑罵語の文法的な特質と歴史的な変遷を、「~やがる(あがる)」を中心とする補助動詞型の卑罵語を例に考察する。具体的には、歴史語用論的な周辺部研究との関係づけを意識した次のような課題について考察する。(i)補助動詞型の卑罵語はどのような文法的特質(構造・意味)と体系性を有するのか。(ii)補助動詞型の卑罵語は、歴史的にいつ頃からどのように発達してきたのか。また、卑語的意味(蔑み・卑しめ)は、補助動詞形式においてどのように発生したのか(本動詞との間に卑語的意味の継承関係は認められるか)。

「譲歩から談話標識へ:周辺部の観点から」
大橋 浩(九州大学)
譲歩構文の変化については、従来、どのような意味を表す語や構文が譲歩の意味を持つようになるかという「譲歩への変化」についての研究が主であり、「譲歩からの変化」についてはあまり注目されてこなかったが、近年興味深い指摘が見られる。譲歩的用法のanywayから、中断したトピックに話を戻すことを合図する談話標識としての用法が発達している例(Tabor and Traugott (1998) “Structural scope expansion and grammaticalization”)や、(al)though, if, whileなどが導く譲歩節が挿入的に使われ、矛盾した見方を提示することで断定を弱めるヘッジの役割を果たしている例(Hilpert (2013) Constructional Change in English)などがあげられる。
 このように譲歩構文が談話標識やヘッジという、文を越えた談話や対人関係へと領域を広げる形で新しい機能を拡張させる例として本発表では英語のhaving said thatとその関連構文を取り上げたい。分詞構文由来のこれらの構文は現代英語のコーパスを調査すると、ごくわずかの例を除き、文頭で譲歩の意味を表しており、譲歩構文として定着していると考えられる。一方で、次のようにトピックの転換を合図する談話標識として働いている例も見られる。
(i) Having said that, let me go to Dana and ask that same question. (COCA)
本発表ではこの拡張について、having said thatと主節の間の意味関係、及び、文頭と文末という周辺的位置がそれぞれ結びつきやすい語用論的・談話的機能という観点から考察したい。



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