【論文紹介】“異例”の地理学:創造性はどこから生まれるのか

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miura-tc...@g.ecc.u-tokyo.ac.jp

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Nov 10, 2025, 7:00:14 PMNov 10
to Science of science研究会
Q. Ke et al. (2025) : The geography of novel and atypical research
 
読むと役立つ人
  • 科学技術政策担当者:各国の「意外性ある研究スタイル」を見える化し、挑戦的研究をどう支援するか考えるヒントになる。
  • 大学の研究戦略担当・URA:自機関の研究が「定番重視型」か「ひと工夫型」かを知り、強みと課題を整理する助けになる。
 
この研究の面白さ・すごさ
Uzziらの“新規性指標” (Uzzi Novelty) を再現し、国別指標に落とし込んだ。Uzzi Novelty は、論文が引用するジャーナル間の組合せがどの程度見ない組み合わせかを指標化した。論文の参考文献はレシピのようなもの。まれに見る組合せを加えると新しい味が生まれるが、新しい組み合わせばかりでは料理にならない。Uzziら(2013) はこの“新規な組合せ”と"よくある組み合わせ"が同時にある「異例な研究」論文ほど高い評価を受けやすいと示した。Keらはその発想を国ごとに広げ、「異例な研究」を多く生み出す国を調べた。結果、中国が最も「異例な研究」を高い確率で作り出すようになっている。また分野別に見ると、化学など“再結合しやすい”分野では特に確率が高い。
 
注意点・前提条件
この研究は、どの国が「奇抜か」を競うものではなく、論文の中でどれだけ“定番と意外性をうまく混ぜているか”を見ている。データには一部の非ジャーナル文献が含まれず、分野ごとに組み合わせの珍しさの水準は変わる。したがって、国ごとに注力する研究分野の違いも結果に影響する可能性がある。したがって「異例性=質の高さ」ではなく、「創造の形の違い」を可視化する試みとして読むとよい。また、MAGでは一部非ジャーナル引用が欠損、著者の所属欠損、などの基盤データに起因するバイアスにも注意。
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三浦です。
コメントでは触れられませんでしたが、Atypical「異例研究」の割合が急速に伸びている国には、他にも Singapol や HongKong があるようで、反対に急速に落ちている国は Spain, Italy, Mexico などです。皆さんの周りの研究者を思い浮かべて、どうか。ぜひコメントください。High Novelty(新規の組み合わせが強い)論文を生み出す確率とはあまり相関が高くないのが面白いですね(例えば Egyptは Noveltyが急成長しているが、Atypicalはむしろ低迷。解釈としては「新しい取り組みが、今までの議論に乗っかれていない」ということになる)。
 
ただ、 Uzzi Novelty は研究者が引用する論文を選べばかなりの程度ハックできるので、これを国家政策の指標目標とかにすると大失敗すると思われます。
 
ではまた。

Daichi Mochihashi

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Nov 18, 2025, 8:28:50 PM (11 days ago) Nov 18
to miura-tc...@g.ecc.u-tokyo.ac.jp, Science of science研究会
三浦さん、皆様:

持橋@統数研です。お疲れ様です。
ちょっと忙しかったので反応できませんでしたが、JAIST副学長の小泉先生と
関連したような共同研究をしていますので、反応してみます。

この論文は、こちらからは権限が必要で読めなかったので、このML内などで
共有していただくことは可能でしょうか。

三浦さんが紹介されている内容は、大変面白いと思いました。個人的な印象では、
新規な研究をするのはコンピュータサイエンスの分野では中国ではなく、
イスラエル(またはイスラエル出身)が一番目立つように感じています。
おそらく日本も、分野によってはその傾向があると思います。

この研究では「何が良い研究か」ということは使っていませんし、定義もできない
と思います。ただ、この研究は各論文について、それが引用している論文の特徴を
説明変数として付与できることがポイントと言えそうです。

論文の引用時系列はある点過程に従うと考えると、この特徴の違いによって、
長く引用されるか、短くバズってすぐ消えるかなどは比較的簡単に回帰の問題として
研究できるような気がしました。
もちろん、"sleeping beauty" となる研究がこの意味でどういう特徴を持っているか、
なども面白い問題だと思います。

いつも言っていますが、こういう研究をそれでは誰がやるのか、がこの
コミュニティでは一番の課題ですね。

-- Daichi Mochihashi
The Institute of Statistical Mathematics, Professor
dai...@ism.ac.jp
http://chasen.org/~daiti-m/index-j.html

2025年11月11日(火) 9:00 miura-tchiaki873 via Science of Science Network
<science-o...@googlegroups.com>:
> --
> イベントの案内を希望の方は、 scis...@googlegroups.com で直接投稿ください。モデレータが判断し、送信します。
> ---
> このメールは Google グループのグループ「Science of Science Network」に登録しているユーザーに送られています。
> このグループから退会し、グループからのメールの配信を停止するには science-of-scie...@googlegroups.com にメールを送信してください。
> このディスカッションを表示するには、https://groups.google.com/d/msgid/science-of-science/172121c7-155d-4873-8d38-a48d5c285954%40Spark にアクセスしてください。

Chiaki Miura

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Nov 18, 2025, 11:45:13 PM (10 days ago) Nov 18
to Daichi Mochihashi, Science of science研究会
持橋先生
 
こちらに添付しておきます。
この研究は全面的にUzzi+2013の結果に依存しており、Mukherjee+2017とも関連が感じられます。Mukherjee+2017は、「引用古さ(引用元論文と被引用論文の出版年との差)の平均が小さく、分散が大きい論文がハイインパクト確率が高い」というものです。
 
点過程として被引用をモデル化する研究はすでにあって、典型的には対数正規分布になることが知られています。Wang+2013の結果は、記憶が正しければ点過程から導出する過程がAppendixに乗っていたはずです。論文のバズりを寿命という指標で表現しています。
 
実は、この筋の研究は私の関心でもあって、最近Dashun+2013の結果を超える試みがKojaku+2025でされています。ちょうど今日輪読会でも話してきたのですが、私の知る限りSleeping Beautyを明示的に扱って成功している初めての引用モデルです。現在著者らのチームとこの筋を掘り下げられないか、つまり、引用のモデルから、ハイインパクト論文の経験的発生規則を導出できないかについて質問しているところです。
 
またアップデートがあれば連絡します。
2025年11月19日 10:28 +0900, Daichi Mochihashi <daichi.m...@gmail.com>:
このメールは Google グループのグループ「Science of Science Network」の登録者に送られています。
このグループから退会し、グループからのメールの配信を停止するには science-of-scie...@googlegroups.com にメールを送信してください。
このディスカッションを表示するには、https://groups.google.com/d/msgid/science-of-science/CAJHLDpZE_aPzk8nBXd%3D-Qdpdh1S3rBiS9LkUr_y1emGMn8OfuQ%40mail.gmail.com にアクセスしてください。
Ke et al. - 2026 - The geography of novel and atypical research.pdf

Daichi Mochihashi

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Nov 19, 2025, 8:38:53 AM (10 days ago) Nov 19
to Chiaki Miura, Science of science研究会
三浦さん、皆様:

持橋@統数研です。

論文を共有していただき、どうもありがとうございました。大変助かります。
これに近い話に三浦さん自体が興味があるとのことで、心強いと思いました。

一般論として、Twitterと同じで論文の引用が増えるかどうかは偶然の要素が強い
(もちろん、その偶然に著者のコミュニティ等も関係している) が、
「事前分布」としての傾向は見れるだろう、という気がしています。
そういう意味で、引用回数Yの尤度部分 p(Y|θ) と事前分布 p(θ) の部分は分けて考えると
いいのかもしれません。

持橋

2025年11月19日(水) 13:45 Chiaki Miura <miura-tc...@g.ecc.u-tokyo.ac.jp>:
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