私たちは山の中腹にある大草原の中で,木造平屋の家に住む若き夫婦です.
そこは人間関係のしがらみも無く,自由に生きられる世界です.
そこは,お金が無くても生活に必要なものは何でも自給自足のできる
素晴らしい世界なのです.
抜けるような朝の青空のもと,
小鳥たちは,私たちの幸せを祝福するように囀るのです.
あえおんは羊の乳をしぼり,育児と朝食の準備.
そして俺は,愛犬と羊の群れを連れ,狩にでる準備.
貧しくとも,お互いの心は光明に満たされ安らぎと調和のある家庭を築く.
それが,愛しあっている私たちの共通の願いなのです.
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しかし私と愛犬は,狩にでてはみたが,獲物というものは
何ひとつ獲れませんでした.
私は森の中の,湧き水の流れる小川のほとりで腰をおろし疲れを癒していました.
と,その時,川のほとりに咲く真っ赤な美しい花を見つけました.
私はその花を手にとり,まるで花の虜になったように考えるのでした.
この美しき花は,あえおんにお似合いだ.
持ち帰って彼女の髪へつけてあげよう.
私には夫として忘れてはならない信条がある.
それはいつしも我が愛妻と我が子を愛する心だ.
あえおんは今頃,ミルクスープを作って,俺を待っているだろうな.
と,愛する妻のことを想いながら私と愛犬は,オレンジ色の夕陽を背に家路へ
向かうのであった.
つづく