スンニ派の武装グル-プに拘束された人質3人が無事解放された。この最大の功
労者はイスラム宗教者委員会の解放への働きかけ、とりわけ、その広報担当のアルク
ベイシ師の努力だ。この間政府はつまらぬ情報を掻き集めただけで、ほとんど何もで
きなかったのであろう。イスラム教指導者への直接の働きかけもしなかったのだと思
う。解放後の首相談話でも、各国の協力には感謝するとは述べたが、イスラム教関係
者への感謝の言葉は一つもなかったのがその証拠である。
これに対したアルクベイシ師は「我々の努力を日本人の多くが評価してくれてい
る。しかし、日本政府はそうではないようだ」と不快の念を示している。
人質のひとり、バクダッドのストリ-トチルドレンから「お母さん」と慕われて
いる高遠さんは、「いろいろひどい目にもあったが、イラク人を嫌いにはなれない。
またこの活動を続けたい」と発言した。これに対して小泉総理は「多くの人に多大の
迷惑をかけても、ああいう事(活動を続けたい)をいうのは困る。少し自省しいもら
わないと」と発言している。これは、派遣自衛隊の安全だけでも大変なのに、民間人
が殺害でもされたら、内閣の命取りになる、という自分のリスクしか考えない理念な
き発言である。これに関連して、アメリカのパウエル国防長官は、「あれだけ危険な
ところに、人道支援をしようという勇気のある人がいることを日本は誇りに思うべき
だ」と述べている。大変な違いである。
ヨルダンのアンマンに派遣されていた逢沢外務副大臣も「イラクがもっと安全に
なってから、力を発揮してもらいたい」と言っているが、安全なイラクにすること
も、政府の仕事であることを忘れている。民間の支援者がイラク人道支援がやり易く
なるように、アメリカ追随の日本でも、安全になイラクにするためにやれることは沢
山あるのだ。
村上新八