法と政治

[みんなののケンちゃん]

>>>倫理ないし道徳は、人間の良心に関しそれに内面的平和を与えるのを使命とする
>>>のに対し、法は他人に対する関係を統制し共同生活の秩序を基礎づける。…（つ
>>>まり）前者は意志の内的過程、後者は行為の外的過程に関する。

このような考えは何もトマジウスだけではなく、カントの考えでもあった。つま
り、＜法と道徳の峻別論＞である。

しかし、このような考えに対して異論を唱える立場もある。すなわち、「法と道
徳とは区別されながらも相互に密接な関係に立っている」とするのがそれ。

カントが道徳を個人の内心の事としたことに対しては、「カントのように義務観
念ないし道徳法則への尊敬が動機となっているのでなければ道徳的とは言えない
とするのは行き過ぎであろう」、「むしろ『心の欲するところにしたがって矩
（のり）をこえず』といった無動機の行為こそが道徳的である事の極地だ」と批
判している。そして、「道徳ないし倫理は、個人をこえて社会的なもの、少なく
とも社会倫理的なものとして現れる。」と。

さらに続けて、「要は、社会規範としての倫理と道徳ないし道義というものの存
在を承認しなければならなく、それはもはやカント流の倫理の理解によっては把
握しきれない。」とするのである。

そして結論として、「法と道徳の関係を考える際に考察の対象とされなければな
らないのは（法と道徳というようには峻別のできないところの）客観的な実体を
持った＜社会倫理＞である」と結ぶ。

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　団藤『法学の基礎』より紹介

以上の説に立った場合の法と道徳ないし道義との関係は次回。

--
みんなのケンちゃん

[みんなののケンちゃん]

MAC屋けんちゃん wrote:

> 団藤ね。異論大有りだが、きょうは眠る。どこかで一戦交えるか、おっさん。

「おっさん」？　キョロ、キョロ。

よその人と交える前にぼくチンとやってくれたらいいのにー！！　(^-^)v

お爺さんは早く休んだ方がいいよ。体にこたえるからねえ。畑仕事は朝早いし
ね。(^m^)彡バンバンバン！

--
みんなのケンちゃんですたー

[みんなのケンちゃん]

"みんなののケンちゃん" <whiteb...@carrot.ocn.ne.jp> wrote in message
news:c0o54u$sn2$1...@news-est.ocn.ad.jp...

>
> そして結論として、「法と道徳の関係を考える際に考察の対象とされなければな
> らないのは（法と道徳というようには峻別のできないところの）客観的な実体を
> 持った＜社会倫理＞である」と結ぶ。
>
> 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　団藤『法学の基礎』より紹介

このように、法も道徳ないし道義も共通に考察の対象は＜客観的な実体を持った社会
倫理＞である、とするのであるが、そもそもこの「社会倫理」とは何ぞや、という疑
問も無きにしも非ず。そこでこの説は次のように「習俗」との関係から意味を明らか
にしようとする。

「…社会的に実体化された倫理は、しばしば習俗と結合した形で現れる。「善良の風
俗」というのがそれである。もともと習俗それ自体は倫理・道徳とは無関係なもので
あるが、これに社会倫理的な評価を加えた場合にその見地から是認される場合が「善
良の風俗」といわれる。」（団籐）

つまり、社会倫理は習俗とは別物であるが、社会倫理は習俗と結合した形で実際の社
会生活の中に現れる、とするようだ。また、

「『善良の風俗』は『公の秩序』とはもともと違う観念だが、両者は実質的には密接
に結びついているので結合した形で機能する。かような『公序良俗』は社会倫理をは
み出る観念であるが、しかし、社会倫理をその中核にもっていることも否定できない
であろう」と。（団籐）

ただ、やや不分明な記述であることは否めない。一方で、習俗ないし公序良俗が社会
倫理とは無関係だと言っておきながら、他方では、公序良俗は社会倫理をその中核に
もっている、とするあたりである。しかし、今は、この説を批判するのが目的ではな
く、言わんとするところを探るにある。この説は、最後に「法と道徳との関係を考察
するには…公序良俗の機能を度外視するわけには行かない。」と言って結ぶ。

要するに、この説は、社会倫理本体に対して直接形容することを断念し、「公序良
俗」とのかかわりを言うことで甘んじているものと思われる。したがってまた、同じ
く社会倫理をベーシスにもつ法も「公序良俗」とのかかわりで捉えるものと推察され
る。

以下は次回。

--
みんなのケンちゃん

[みんなのケンちゃん]

MAC屋けんちゃん wrote:

> みんなののケンちゃんさんの<c0o54u$sn2$1...@news-est.ocn.ad.jp>から
>
>>以上の説に立った場合の法と道徳ないし道義との関係は次回。
>>
>
> 次回が無いじゃんか
> どないなってんね。ボケ。

失礼！「次回」を次回１、次回２、次回３、…とでもしようかなって思ったもん
でね。（^-^;）彼が法も道徳乃至道義もベーシスは同じ「実体化された社会倫理
である」とする所までは紹介したからね。

まあ、そんなに急がないでくら～さい。「社会倫理」って言葉先行で「内容」は
いっこうに明らかではない気がしたもんでね。この点は「主体性」にも言えるか
な？これにもいずれは触れると思うよ。でっ、今回はその言葉によって創造され
た「実体化された社会倫理」ってな～に？これを彼に尋ねてみた訳。ストレート
な答えは出てなかったよね。ここを押さえてね。がはははは。

んまっ、最後にはとんでもない＜どんでん返し＞を試みようとしている訳だから
ポンコツ屋MACけんちゃんさんも焦らないことが大切ね。成功するかどうかは分
かりマシェンが…。その間少しずつポンコツ屋ちゃんにはエネルギーを蓄えてお
かれることをおすすめ島っす。

--
みんなのケンちゃんですた

[みんなのケンちゃん]

みんなのケンちゃん wrote:

> "みんなののケンちゃん" <whiteb...@carrot.ocn.ne.jp> wrote in message
> news:c0o54u$sn2$1...@news-est.ocn.ad.jp...

この説は「社会的に実体化された倫理は、しばしば『公序良俗』と結合した形で
現れる」とした後、現行法に「公序良俗」が姿を現す場合をいくつかあげる。民
法９０条、法令２条、民事訴訟法１１８条３号。

この中で、この説は「特に重要なのは民法９０条の規定」だとする。そして、売
春事例、公娼制度、売春防止法、不法原因給付規定とそれが問題となる事例を挙
げる。

このようにしてこの説は「公序良俗」の観念がしばしば社会的にきわめて重要な
機能を営むことと、社会倫理が公序良俗といった一般的な形で「法的」な意味を
もつばかりでなく個別的にも種々の形で意味を持つことを言いたかった。

個別的に意味を持つ例としては、離婚の訴えに関する民法７７０条、姦通罪に関
する改正前の刑法１８３条が問題となるそれぞれの事例、離婚原因となる不貞行
為に関する人工授精の問題をあげ、「ここにも社会倫理が『法』の世界で働くの
である」とする。

まとめとして、この説曰く、

「右に考察した所からもわかるように、ある事項については、法が刑罰権を使っ
てまでも介入し、他の事項については民事関係として介入し、さらに、また、他
の事項については社会道徳に任せるといった、種々の行き方がある。」

続けて、

「大まかにいって、法が介入するのを適当とする分野と道徳に任せた方がよい分
野とがある、もっとも、この両分野の限界は、多分に政策的なものであって、法
と道徳との区別から当然に演繹されるといった性質のものではないというべきで
ある」と。

しかし、この論法には問題はないのだろうか？この説は法も道徳も共通に社会倫
理にその基盤を置くとし、公序良俗とは骨がらみに結びついて社会生活の中に現
れるとはしつつもそれらは別物だとしていたのである。

別物である所の公序良俗が実定法の世界に、一般的に、あるいは解釈を経て個別
的に現れることを実証し、分析したからといって、道徳ないし道義であればまだ
しも、そこに語られている法が社会倫理をその基底にもつものであることをいい
得たことにはならないのではないか？

ただ、ここでの紹介は法と道徳ないし道義との区別が主題であるから、それらが
共通な基盤であるとしている社会倫理と法との関わりをこれ以上突っつくのは避
け、論者のいう通り、法と社会倫理は同質だとして話を進めよう。（＊）なお、
ここではまだ法と道徳との区別は語られてはいない。

　　　（＊）わたくし個人の「刑法上の興味」としては逆に法と
　　　　　　社会倫理との関わりの細部こそを知りたいと思うが。

[みんなのケンちゃん]

MAC屋けんちゃん wrote:

> みんなのケンちゃんさんの<c10jnf$6q7$1...@news-est.ocn.ad.jp>から

>
>>"みんなののケンちゃん" <whiteb...@carrot.ocn.ne.jp> wrote in message
>>news:c0o54u$sn2$1...@news-est.ocn.ad.jp...

>>
> 本文のどこに回答を書いてるんや。わかっとんのかおっさん。

おっさん？このスレッドにおっさんはいるんですか？

自分のことは見えないはずだけど。（^-^）v

--
みんなのケンちゃんですた

[みんなのケンちゃん]

次に、この説は、法も道徳乃至道義も客観的な社会倫理を同質的基盤とするとし
つつ「倫理的最小限度」および「倫理的最大限度」というテクニカルタームをも
ちだす。

法を「倫理的最小限度」と考えたのはゲオルグ・イェリネクであるが、法の全面
にわたって倫理的最小限度だというのではなく、法の中に社会倫理的規範の最小
限度のものが取り込まれている、という立場からこう紹介する。

「客観的な社会倫理・社会道徳・道義の意味における倫理にはピンからキリまで
あるが、その中には、『殺すなかれ』『盗むなかれ』といった事から始まって、
社会秩序の維持のためにその強行が不可欠のものが有る。こういった最小限度の
倫理は法の中に取り入れて、法的制裁のもとに強行する事が必要になる。これが
法が『倫理的最小限度』といわれるゆえんである」と。

また、この説は経済学者シュモラーの「倫理的最大限度」を取り上げ、次のよう
にも紹介する。

「この言葉は制裁（サンクション）に着眼したものである。道徳には制裁はない
が、法には制裁が有る。道徳が法に取り込まれるときは、法的制裁を具備する事
になるから、道徳は最大限度に有効性を発揮する事になる。法が『倫理的最大限
度』だというのはこれを意味する。」と。

最後に、自説をまとめて曰く、

「イェリネクのことばとシュモラーのことばとは矛盾するものではなく、むし
ろ、互いに補う関係にある」としつつ、

「もちろん、内心の確率（カント）としての倫理に関する限り、その違反に対す
る制裁といったものは存在しないが、客観的な社会規範としての社会倫理乃至道
義秩序（それはしばしば習俗と結合して現れる）の違反に対しては、世間あるい
は世論による社会的制裁が有りうる。極端な場合には『村八分』のような実力的
制裁さえありうる。こうした制裁が精神的なものから実力的なものになるに従っ
て、その社会規範は、＜社会道徳的なもの＞から＜法的な性質のもの＞に移り行
く事になる。そうして、その制裁が公のもの、公権力によるものになると、法的
性格があきらかになる。かように、道徳にも制裁があるとしても、法における制
裁ほど外面的に強力なものではない。」と。

-------

読者はお気づきであろうか？なんや難しいことを言っているようでは有ります
が、なんのことはない。この説は以下のように言っているだけだと思う。

「しばしば習俗と結合して現れるところの社会倫理がなにか規範めいた作用を発
揮するとき、違反者には度合いの様々な制裁が科される。その制裁が公権力によ
る場合が法であり、それに至らない場合が道徳である」。違うかな？

この程度のものが法であり、道徳であるというのであれば我々はもっと自由に法
というものを考える事ができるのではないだろうか？

以下、興味をも…もっ、もたな…、って、次回へ！

--
みんなのケンちゃん

[みんなのケンちゃん]

> 「しばしば習俗と結合して現れるところの社会倫理がなにか規範めいた作用を発
> 揮するとき、違反者には度合いの様々な制裁が科される。その制裁が公権力によ
> る場合が法であり、それに至らない場合が道徳である」。違うかな？

そこで、途中意見を一つ。

第一に、（１）法には法と道徳の関係が問題とならない法専門の領域と、（２）
この説に言うように、法と道徳とが重なる領域とがあり、従ってまた（３）道徳
乃至道義のみの領域というのが有ると言うことはとりあえずは承認するとして、
この（２）のみにおいて法と道徳の関係が問題になるとの注意をまず喚起してお
きたい。なぜなら、（１）では道徳は存在しないし、（３）では法が存在しない
からである。

でっ、ここに紹介した説は、制裁の有りやなしやをその区別の指標にしている
が、むしろ、（１）の法と（２）の法を一緒にして、それと（２）（３）の道徳
ないし道義との区別を考える事もでき、また、道徳の性格づけを積極的に行う必
要はなく、確実に法である場合を除くという消去法で十分だとするのが当方の考
え。なぜなら道徳は積極的に性格づけなくとも法を語り政治を語るにおいて何ら
不都合は生じないからである。それは道徳の問題だと言ってもいいしエティケッ
トの問題だと言ってもいいし、良識の問題だと言ってもいい。どう表現するかは
個人の自由。また、当方は、法は必ずしも一元的に性格付ける必要はないとの立
場に立つ。

次に、、現代民主主義国家における法は全て、国民の承認のもとに存在しうるに
すぎない。憲法であっても国民主権を歌っている以上同様である。よって、法と
は裁判所あるいは行政機関によって強制を覚悟しなければならない規範、それら
全てが法であり、性質はそれぞれの法における「目的」によって異なる。この法
における「目的」が道徳的あるいは道義的匂いのする事がたまたま起こりうるが
しかし、それはたまたまであって、このたまたまを理由に何か関係が有るとする
必要はなく、＜法と道徳は全く別物＞。したがって刑法は道徳や道義とは無関係
でありもちろん社会倫理とも無関係である。家族法の分野では道徳や道義が問題
になりそうな場合も有るが、仮にそうであったとしてもそれは個別解釈において
たまたま起った事にすぎない。これが当方の考え。

紹介の説が道徳と法が重なる分野が有るとしているが、当方の考えからすればそ
のような分野はないことになる。一見重なるように見えてもそれは「法における
目的」がそう見えさせたに過ぎない。

さて、ポンコツ屋MACけんちゃんは如何に！？

--
みんなのケンちゃん