自衛隊のイラク派遣は、3月くらいまでに、空、海、陸の順に実施されるのであ
ろうが、問題は陸上自衛隊である。
陸上自衛隊は、サマワで上下水道、電気、通信、医療、学校などの復興、人道支
援に当たることになっているが、現地の民衆は、日本の自衛隊がくれば、復興事業に
大量に雇ってもらえるという大きな期待がを持っているといわれる。
サマワは人口30万くらいの小都市だが、さしたる産業はなく、失業率は40%
にも上るという。この深刻な失業から雇用をめぐるトラブルが既に何回か発生してい
るのだ。先にも求職者登録の場で3000人もの求職者が暴徒化し、現地警察では押
えきれずに、オランダ軍までが出動しての発砲騒ぎになり、2人の死者を出したとい
う事件があったばかりである。
イラクでは、これまでのODA援助のせいか、日本に対する尊敬の念が厚いだけ
に、自衛隊派遣に対する期待も大きく、それは、現地の貧困さも手伝って過大な期待
に膨らんでいるのである。その期待の1/10も満たせないのが現実なのであろう
が、それがどう左右するかが気がかりである。
期待外れの度合いが大きければ、雇用から漏れた者や不満とする民衆が暴徒化し
て自衛隊に襲い掛かるかもしれないし、自衛隊員が自衛のために発砲し、民衆に死傷
者が出ることになるかも知れない。これはテロとは別次元の事件である。
そうなれば、人道支援も復興支援も進展せず、日本の自衛隊も米軍と何も変わら
ないではないか、と失意が憎悪に変化して、民衆がテロの味方に変わることも考えら
れるのだ。
これは、あり得る失敗のシナリオであるが、政府はそういうことにならないよう
な対応を考えた上で陸上自衛隊派遣を決定しているのか。
村上新八