最近、二つ保険関連の話を見聞きしたので、それについて...
1. DNA鑑定の結果と保険の相互作用
DNA鑑定で自分が重病になる可能性が高いとわかった人が高額の保険をかける
それを拒否できるようにする制度、あるいは、それを拒否できないようにする
2. アメリカの医者向け医療事故保険
高額の医療ミス訴訟判決が続いたため、医者がリスクの高い治療行為をしない、
あるいは、保険会社が医療事故保険を拒否する。そして、その結果、医者が
廃業あるいは州外へ移動してしまう
この二つは関連がないようで、実は元は同じだと思う。
それは、個々の事故、保険契約に着目して、社会全体に対する保険
の役割ってのを忘れていることです。
保険は本来「儲けがないはず」のものです。市場原理はどれでもそ
うだけど、誰もが儲からない価格で均衡するはず。それが経済学の
基本的な結果です。それが「個人が」あるいは「保険会社が儲ける
方向にいく、あるいは、儲からないからやらない方向にいく。それ
がおかしい。
医療ミスや個人が重病になる確率は前もって決まっているわけでは
ないけど、結果的には、ある比率で起きることになります。それを
補償するのに必要な金額を「広く薄く」負担するというのが保険の
考え方です。それが基本。
だから、例えばハンチントン病になったことがわかってから保険を
かけるのと、なることが判明してから保険をかけるのと、なること
がわからずに保険をかけるのとは、本来は同等なはず。
医療ミスもそれを駆逐することができないなら、その補償は、医師
に対する懲罰的なものではなく、ミスの結果に対する補償であるべ
きです。それを誰が負担するかは、医師の側だけでなく、患者の側
でもあるべきです。医師が保険料を払っても、それは結局は、患者
が払う治療費から出るわけだからおんなじ。
保険をかける対象の確率を正確に予測することは実はできません。
それができるかのように錯覚して動いているのが今の保険制度です。
予測ではなく、実際に起きた事象の結果に対して広く薄く負担する
ような仕組みに保険を買えていく必要があるのだと思う。
それは、保険会社はリスクを評価して金を取るのではなく、実際の
事故の統計を判断して、必要な保証額を計算するべきだと思う。
---
Shinji KONO @ Information Engineering, University of the Ryukyus,
河野真治 @ 琉球大学工学部情報工学科,
>市場原理はどれでもそ
>うだけど、誰もが儲からない価格で均衡するはず。それが経済学の
>基本的な結果です。
「はず」は単なる「はず」であって、それが成り立った例って殆どみませんぜ。
マクロで見ればゼロサムなんだけど、ミクロには儲ける奴・損する人が居るのが
現実だって事は河野先生も御存じでしょう。経済学の理論が間違ってるからでは
なくって、経済学が前提としている (と言うか前提にしないと数学的に扱えない)
誰もが自由に合理的な決定を行うとか、個々の持つ情報に偏りが無いとか云った
事がそもそも成り立ってないからです。
>それが「個人が」あるいは「保険会社が儲ける
>方向にいく、あるいは、儲からないからやらない方向にいく。それ
>がおかしい。
いや、おかしいのは、個々の保険会社ではなくて、私企業が保険業に参入する事
とか、資本主義経済その物です。で、資本主義経済の他に上手く回るシステムが
見つからない限りはしょうがないんだと思います。
# 倫理的に「正しい」システムでは全くないんですがね
>医療ミスや個人が重病になる確率は前もって決まっているわけでは
>ないけど、結果的には、ある比率で起きることになります。それを
>補償するのに必要な金額を「広く薄く」負担するというのが保険の
>考え方です。それが基本。
これは、加入者の重病に罹り易さに差が無い (又は確率が判らない) と云う仮定
の元の話です。ランダムとみなせる場合の話。重病に罹り易いと判っている人が
加入すると、保険会社の儲けは度外視しても、他の加入者が不当に高い保険料を
払うと云う事となります。
又、「広く薄く」負担するってのが上手く働くのは、加入の任意性が無い場合に
限ると思われます。例えば、誰でも加入できるけど保険料の高い保険と、重病に
罹り易いと判ってる人は入れないけど保険料の安い保険と、二つを任意に選べる
時、罹り易いと判ってない河野さんだったら、どちらを選びますか?
船の保険は、船の種類毎に色々構造上・安全上の規則を設けて、これを審査して
「船級」を与えます。船級を取得出来たか、どのクラスかで保険料は違うんだそ
うです。船級を取れないとそもそも保険を引き受けて貰えない。その為に、商船
はそれなりの費用を掛けて一定以上安全と思われる船に造る訳です。
船級と、河野さんの生命保険の例では、費用を掛けて安全を増せるか、遺伝的に
決まってその人にはどうしようもないか、の差が有って人道的には気になる物の、
私企業たる保険会社に取っては一緒ではないでしょうか。
そう言えば、事故を起こした人の自動車保険料が上がるとか、煙草喫みの生命保
険料を上げるとかは、河野さんはどう思われますか?
河野さんの仰る様なリスク対策は、保険会社の様な私企業ではなく、国とか自治
体とかの役割だと思います。国の場合、参加・不参加の任意性はかなり低くなる
ので、確率はかなり意味を持つからです。
>だから、例えばハンチントン病になったことがわかってから保険を
>かけるのと、なることが判明してから保険をかけるのと、なること
>がわからずに保険をかけるのとは、本来は同等なはず。
私には、ボートレースで、スタートしてから船券を買う様な物に思えます。条件
付の確率は、条件の無い時の確率とは明らかに違います。
>医療ミスもそれを駆逐することができないなら、その補償は、医師
>に対する懲罰的なものではなく、ミスの結果に対する補償であるべ
一度ミスをした医師が、その後ミスをする確率が他の医師と変わらないのであれ
ば変えるのはおかしいでしょうね。より注意深くなって (又は何人か殺して一人
前になって :-p) ミスの確率が下がるなら、安くなっても良さそうです。一方、
ミスをする奴ぁしょっちゅうするんだてえ事なら高くなるのは当たり前だと思わ
れます。保険会社は、一度ミスした奴ぁ又すると思ってる (又はそう云う調査結
果を持ってる) んじゃあないでしょうか。
--
椎野正元 (しいの まさよし)
私は、保険は本来「ギャンブル」であると認識してます。
トータルで見れば必ず胴元が儲かるようにできている。換言すれば、そうでない
と保険業というのは成り立たない。
> 予測ではなく、実際に起きた事象の結果に対して広く薄く負担する
> ような仕組みに保険を買えていく必要があるのだと思う。
そういうのは社会保障が担うべき領域であって保険の役割じゃないです。
たとえば日本の健康保険制度は「保険」という名が付いてますけど、あれは実際
には社会保障であって事業としての保険ではない。なので、病気になってからで
も保険に加入できるなどという、保険業の常識からしたら考えられないようなこ
とも可能にしているわけですよね。
--
中本徹也 (NAKAMOTO Tetsuya) @ HACHIOUJI City, TOKYO.
tets...@pop02.odn.ne.jp
> 保険は本来「儲けがないはず」のものです。市場原理はどれでもそ
> うだけど、誰もが儲からない価格で均衡するはず。それが経済学の
> 基本的な結果です。それが「個人が」あるいは「保険会社が儲ける
> 方向にいく、あるいは、儲からないからやらない方向にいく。それ
> がおかしい。
しかし、保険会社の収益の変動リスク(保険の売上以外にも株や債券の
変動)まで含めると保険での儲けの設定がその企業の収支として本当に
儲けになるのかは一概には言えません。
儲けを多く見積もって保険料に転嫁すればそれだけ保険は売れなくなりますし
例えそういった設定をして儲かったとしても株や債券の運用による変動リスク
によって大きく赤字を出すことだって過去の例を見れば十分ありえます。
儲からない設定自体、企業の存立の経費を無視した考え方だと思います。
じゃぁ、保険会社なんて潰して国がすべて補償すれば良いかというとそうも
言えないでしょう。そうしたら、今度は株式市場や債券市場の流動性が
確保できなくなるデメリットも出てくると思います。
つまりは、保険は保険だけで閉じているわけではないってことです。
> 医療ミスや個人が重病になる確率は前もって決まっているわけでは
> ないけど、結果的には、ある比率で起きることになります。それを
> 補償するのに必要な金額を「広く薄く」負担するというのが保険の
> 考え方です。それが基本。
>
> だから、例えばハンチントン病になったことがわかってから保険を
> かけるのと、なることが判明してから保険をかけるのと、なること
> がわからずに保険をかけるのとは、本来は同等なはず。
これは単純に同等じゃないですよね。保険の前提としてある病気に
なることがわからない人が多数加入していないと保険そのものが
成立しません。なってから加入となるかわからないうちに加入が
同等であるためには、それ以前になるかわからないうちに加入
している人が多数存在することが前提になります。
> 医療ミスもそれを駆逐することができないなら、その補償は、医師
> に対する懲罰的なものではなく、ミスの結果に対する補償であるべ
> きです。それを誰が負担するかは、医師の側だけでなく、患者の側
> でもあるべきです。医師が保険料を払っても、それは結局は、患者
> が払う治療費から出るわけだからおんなじ。
しかし、医者はそういったリスクを負っているからこそ多額のお金を
貰っているのだから懲罰的なものであってもそれは致し方ないと
思います。リスクを取って仕事をしている人だからこそリターンも
大きいわけでしょ。すでの医者の給料にその分は転嫁されている
と思います。
> それは、保険会社はリスクを評価して金を取るのではなく、実際の
> 事故の統計を判断して、必要な保証額を計算するべきだと思う。
それはやってると思うけど。自動車事故なんかは典型的な例だよね。
In article <bsf7v7$nmh$1...@nwjp2.odn.ne.jp>, NAKAMOTO Tetsuya <tets...@pop02.odn.ne.jp> writes
> 私は、保険は本来「ギャンブル」であると認識してます。
確率に基づいて予測する限りそうですよね。
> トータルで見れば必ず胴元が儲かるようにできている。換言すれば、そうでない
> と保険業というのは成り立たない。
でも、この部分はどうかな... 企業にとって儲けってのが何かと言うと、
儲けがあるなら、
事業に投資すべき
株主に還元すべき
のどっちかですよね。保険業には、そういうのないよね?
> たとえば日本の健康保険制度は「保険」という名が付いてますけど、あれは実際
> には社会保障であって事業としての保険ではない。なので、病気になってからで
> も保険に加入できるなどという、保険業の常識からしたら考えられないようなこ
> とも可能にしているわけですよね。
保険で議論されている確率は実は事後確率です。それを社会保障と
言ってもいいし、社会保険と言っても良い。それは、おなじもので
あるべきだろって話です。
In article <bsem37$2h4u$1...@mozart.shiino.taito.tokyo.jp>,alc...@shiino.taito.tokyo.jp (Shiino Masayoshi) writes
> 船級と、河野さんの生命保険の例では、費用を掛けて安全を増せるか、遺伝的に
> 決まってその人にはどうしようもないか、の差が有って人道的には気になる物の、
> 私企業たる保険会社に取っては一緒ではないでしょうか。
> そう言えば、事故を起こした人の自動車保険料が上がるとか、煙草喫みの生命保
> 険料を上げるとかは、河野さんはどう思われますか?
例えばさ、船の保険が決まった後、その船が欠陥船だとわかったと
しますよね。じゃ、保険はどうする? 事故が起きた後にわかったら
どうする?
この時に、「欠陥を隠した方がメリットがある」ということになれ
ば、みんな隠すよね。
> 前になって :-p) ミスの確率が下がるなら、安くなっても良さそうです。一方、
> ミスをする奴ぁしょっちゅうするんだてえ事なら高くなるのは当たり前だと思わ
> れます。保険会社は、一度ミスした奴ぁ又すると思ってる (又はそう云う調査結
> 果を持ってる) んじゃあないでしょうか。
リスクマネジメントに関して
ミクロな選択
マクロな選択
ってのがあって、
ミクロな選択 ( 事故を起こしにくくするような選択をする方向 )
マクロな選択 ( 起きた事故をなんとかする方向 )
ってことであるはずだと思う。現在の保険は、両方をいっしょくたに
している感じ。
>のどっちかですよね。保険業には、そういうのないよね?
有るんじゃないでしょうか?
保険契約を増やすとか、貸出を増やすとかは、「事業に投資」だと思います。
損保に多い株式会社なら配当が増えるでしょうし、生保に多い相互会社 (でし
たっけ) では保険契約者 (名目上の出資者) への配当が増えたり、保険料が下
がったりします。
>保険で議論されている確率は実は事後確率です。それを社会保障と
>言ってもいいし、社会保険と言っても良い。それは、おなじもので
保険業が対象にしている保険契約は、過去の実績に基いて将来の確率を予測す
るので、事前確率だと思います。これは健康保険や失業保険が行っている社会
保障とは別の考え方です。
健康保険や失業保険は、一定の要件を満たす人は強制的に加入させられますが、
保険業の保険は任意が原則ですから、同列には論じられません。
# 自賠責の強制保険は能う判らんが
>例えばさ、船の保険が決まった後、その船が欠陥船だとわかったと
>しますよね。じゃ、保険はどうする? 事故が起きた後にわかったら
欠陥の種類や質、欠陥を見落とした原因等に拠って違うでしょう。入級審査に
当って、船主側 (含造船所・荷主等) に明らかな虚偽や不正が有った結果であ
れば入級は取消だし、保険契約も解除されるでしょうね。
船級規則に不備が有って規則上は問題無い欠陥だったら、と言うか従来の規則
でカバー出来ない欠陥が新たに編み出されたら、当面は船級も保険契約も有効
です。但し、通常は規則が改正されて、一定の猶予期間の間に改造しなければ
船級の継続が出来なくなります。
>この時に、「欠陥を隠した方がメリットがある」ということになれ
>ば、みんな隠すよね。
入級審査は、書類審査だけでなく建造段階で実地の検査も行われます。その為
にサーベイヤーが造船所に常駐してます。
# 蛇蝎の如く嫌われてます :-)
100%の審査は不可能ですが、見付かると後々面倒なんで、あんまり酷い隠し事
は出来ないのが実情です。
事故が起こった時には、保険会社や船級が調査に入ります。調査を拒否したら
保険金は出ません。事故時に入るドックは必ずしも建造した造船所じゃないの
で、隠し事をするメリットも少ないし。
> ミクロな選択 ( 事故を起こしにくくするような選択をする方向 )
> マクロな選択 ( 起きた事故をなんとかする方向 )
これは違うと思います。ミクロってのは個々の事例や契約者・保険契約に着目
した物で、マクロってのは、国や地域の人全部とかある保険商品の契約者全部
とか云うレベルでしょう。マクロでも、統計を取る条件を変えると意味が違っ
て来る。
保険会社は、統計を取る条件に明らかな不良因子を除いて保険料を安くしてい
る訳です。勿論これらを除かずに高い保険料の保険契約を作っても構わないし、
物に拠っては存在します。例えば地震保険とか。
--
椎野正元 (しいの まさよし)
In article <bshj0i$nds$1...@mozart.shiino.taito.tokyo.jp>, alc...@shiino.taito.tokyo.jp (Shiino Masayoshi) writes
> > 事業に投資すべき
> > 株主に還元すべき
> >のどっちかですよね。保険業には、そういうのないよね?
> 有るんじゃないでしょうか?
ないんだな。それが。保険料と株主の配当の性質を考えるとわかり
ます。保険会社が遺伝情報を用いて保険を運用するのは一種のイン
サイダー取り引きのようなものです。「インチキ」と言ってもいい。
それは、被保険者にも言えます。
> 船級規則に不備が有って規則上は問題無い欠陥だったら、と言うか従来の規則
> でカバー出来ない欠陥が新たに編み出されたら、当面は船級も保険契約も有効
> です。但し、通常は規則が改正されて、一定の猶予期間の間に改造しなければ
> 船級の継続が出来なくなります。
そもそも、これだけ変化の激しい社会で、お役所的な規則は間に合
わない。さらにいうなら、確率を予測できるような事故があるって
のは既に昔のこと。
椎野さんの「今までの規則と保険でうまくいく」ってのは完全に時
代遅れになっているわけさ。例えば、船舶に使われているスズ系の
塗料が環境ホルモン的な被害を生じるって話がありますよね。それ
を補償する保険は存在しますか?
存在しなかったらどうする? もし、それによって大規模な漁業資源
破壊が起きたら、造船業界が環境破壊のつけをすべて払うことにな
ります。
> 100%の審査は不可能ですが、見付かると後々面倒なんで、あんまり酷い隠し事
> は出来ないのが実情です。
希望的実情だね。
> > ミクロな選択 ( 事故を起こしにくくするような選択をする方向 )
> > マクロな選択 ( 起きた事故をなんとかする方向 )
> これは違うと思います。
頭から否定するようなものでもないと思うけど。
ミクロな選択の例
酒を飲んだら運転しない。携帯電話をかけながら運転しない。
マクロな選択の例
車の運転者には保険を義務づける
みたいな感じ。もちろん、それだけに限るわけではないけど。
DNA鑑定結果(ミクロ)を使って保険料(マクロ)を操作する
個々の医療ミス(ミクロ)に膨大な賠償金(マクロ)を課す
これはミクロとマクロを混同していると指摘しているわけです。
> 保険会社は、統計を取る条件に明らかな不良因子を除いて保険料を安くしてい
> る訳です。勿論これらを除かずに高い保険料の保険契約を作っても構わないし、
> 物に拠っては存在します。例えば地震保険とか。
統計は過去のものでしかありません。一方、保険料は現状では必ず
未来に対して払います。保険会社は、
自分の儲かる方向に予測が外れたときは黙っていて、
自分が損する方向に外れたときは、保険に制約をかける
みたいなことをやっているわけ。それを僕達は知り得ない。何故なら、
保険料率を決定する資料は保険会社の外に出て来ないから。それは、
間違っている。
一方で、保険料を直接統計から導出するとすれば、その統計を明示
しない限り保険料は決定しないので、保険会社がインチキすること
はできません。
約款等、保険契約に予め謳ってあるならインチキではないでしょう。契約後に
勝手に制限を加えると問題ですけど。
# 謳ってあっても字が小さくて読めないけど :-) それは別の話
>そもそも、これだけ変化の激しい社会で、お役所的な規則は間に合
>わない。さらにいうなら、確率を予測できるような事故があるって
>のは既に昔のこと。
だから無制限に保障すべきってのは、私企業の行う保険業に求める事じゃない。
勿論、保険会社が知っていて隠す様な不正を行っているなら別ですが、新たに
判った事柄を以後の契約に盛込むのは仕方ない。
実際には、保険契約には色んな免責事項が有って、個々の事例が免責事項に当
るか当らないかの解釈で揉める可能性は有ります。それは最終的には裁判で決
着付けるしかない。
>椎野さんの「今までの規則と保険でうまくいく」ってのは完全に時
>代遅れになっているわけさ。例えば、船舶に使われているスズ系の
>塗料が環境ホルモン的な被害を生じるって話がありますよね。それ
>を補償する保険は存在しますか?
有るかどうかは知りません。船級の審査迄は多少知ってるけど、保険契約は全
然興味無いのであった :-p
一般論として、将来規制されたり問題になったりする可能性が有って、どうな
るか判らない話ってのは、日本の保険会社辺りじゃ中々手を出せないけど、ロ
イズのネームなら引き受ける可能性は有ります。但し、かなり短期の掛捨で、
結構保険料が高そうなんで、そんな保険を掛ける所が有るかどうかは知りませ
ん。
船の事故に関しては、タンカーの座礁なんかで結構凄い額の保険金が支払われ
てる例があるらしいです。ここ20年位でタンカーの構造が大きく変わったんで
すが、その前は大型タンカーの座礁が大災害を引き起こした。
船の事故だけじゃありませんが、大事故が重なって複数のネームが破産したて
な話を聞いた事もあります。
>存在しなかったらどうする? もし、それによって大規模な漁業資源
>破壊が起きたら、造船業界が環境破壊のつけをすべて払うことにな
船による物なら、一義的には海運業者か塗料メーカですね。ドックから流れ出
たとか塗り方が悪いとかなら造船所だけど。
誰が払うかはどうでも良い話ですが、塗料に関しては、国内法にしろ国際的な
取決めにしろ、色々規制が出ていて、これに反していれば反した所が刑事・民
事の責任を問われますが、反してない時に何処まで民事責任を問えるかは判ら
ない。
日本の現状で見ると、一審レベルでは結構認められそうですが、最高裁迄行っ
て原告敗訴になりそうだなあ…
アメリカなんかだと、規制が緩くて被害が出ると監督官庁が民事で訴えられる
場合が有るそうです。だもんで、米国内の環境とか安全とかには妙に規制がき
つかったりする。
> ミクロな選択の例
> 酒を飲んだら運転しない。携帯電話をかけながら運転しない。
> マクロな選択の例
> 車の運転者には保険を義務づける
>みたいな感じ。もちろん、それだけに限るわけではないけど。
私の考えでは、
ミクロな選択: 酒を飲んだら運転しない、携帯電話を掛けながら運転しない。
マクロな選択: 飲酒運転を禁ずる、携帯電話を掛けながらの運転を禁ずる。
又は、
ミクロな選択: 車持ったら (又は運転するなら) 保険に入る
マクロな選択: 運転者に保険を義務付ける
ですね。
河野さんのは違う物に無理矢理「ミクロ」「マクロ」と名付けてる感じ。
>みたいなことをやっているわけ。それを僕達は知り得ない。何故なら、
>保険料率を決定する資料は保険会社の外に出て来ないから。それは、
>間違っている。
>一方で、保険料を直接統計から導出するとすれば、その統計を明示
>しない限り保険料は決定しないので、保険会社がインチキすること
>はできません。
だったら、明示しない保険には入らずに明示した保険を選ぶとか、自分で
そう云う保険を企画するとかすれば良いでしょう。で、被保険者がどっち
でも選べば良い。仰る様な保険の保険料が幾らになるか、業として成立つ
かどうか判りませんけど。
河野さんの仰る様な事は、やはり業としての保険業よりは社会保険と言う
か、社会保障の範疇でないと難しいと思います。被保険者が他の保険契約
や保険会社に逃げられる様だと成り立たないんじゃないかと云う気がしま
す。
--
椎野正元 (しいの まさよし)