マイナスイオンを発生させて云々という説明は、技術的・科学的
にはほぼ間違いなく嘘なのですが、その前提でこの手の良さっぽい
ものを謳うことの、法的な規制というのはあるのでしょうか。
すぐ消え去ると思っていたのですが、この数年根強くはびこって
いるようですし、私の周りにも信者っぽい人が出ていて、困ったも
のです。
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頼光 mailto:rai...@mug.biglobe.ne.jp
関心・専門分野:
宗教学、歴史学、社会学、情報工学
>From:頼光 <rai...@mug.biglobe.ne.jp>
>Date:2003/12/07 16:40:36 JST
>Message-ID:<bqulhj$ra8$1...@bgsv5647.tk.mesh.ad.jp>
>
> マイナスイオンを発生させて云々という説明は、技術的・科学的
>にはほぼ間違いなく嘘なのですが、その前提でこの手の良さっぽい
>ものを謳うことの、法的な規制というのはあるのでしょうか。
現時点ではないと思います。
というのはマイナスイオン関係の商品のCMは
一方で科学的には証明されない類の効果をうたっているのが多いので
その部分を技術的・科学的に否定することもできないのであれば
法的にどうこうという話にならないのも理の当然だと思います。
ですから将来的にはどうなるかわかりません。
例えば
超音波でゴキブリだったかノミだったかを撃退するというふれこみの商品は
撃退できないことが証明されてしまったので
そのような効果を謳うことができなくなりました。
技術的・科学的に否定できる効能を謳ったものについては
問題になると思います。
それは個別の購入者との関係で詐欺の問題が出る他
(もっともおろかにも売り手がそうだと信じている場合
詐欺は難しいですな。)
公正取引委員会が所管するような法律に基づく規制の対象となりそうです。
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Talk lisp at Tea room Lisp.gc .
c...@nn.iij4u.or.jp 佐々木将人
(This address is for NetNews.)
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「まさと先輩、模範六法をたかだか2冊調達するのに、
本屋を4軒まわらなきゃいけないって間違っていると思いません?」
規制は無しですか。むう。
>というのはマイナスイオン関係の商品のCMは
>一方で科学的には証明されない類の効果をうたっているのが多いので
>その部分を技術的・科学的に否定することもできないのであれば
>法的にどうこうという話にならないのも理の当然だと思います。
では、ちょっと違う方向で。
例えば、嘘のファクターとして私がイメージしているものは、
1. マイナスイオンという物質の定義
2. マイナスイオンの生成
3. 人体への良さそうな効果
という所です。
1. は、少なくとも私の知る範囲では、きちんとした合意のあ
る定義がなされていない代物です。なので、 1 だけではまだ否
定とか肯定の対象ですらないので、技術的・科学的に否定とい
うことは無理ですね。
1 & 2 & 3 の絡みだと、どうでしょう。
例えば、てきとうに検索して見つけた下記のサイトの記述。
http://www.ecoten.com/mametisiki/mainasuion.html
> 空気中には目に見えない微粒子や分子が漂っていて、これらは
> 電気的にプラスかマイナスの電気を帯びていて、これをイオン
> と呼んでいます。電気的にマイナスになっているものをマイナ
> スイオン、プラスになっているものをプラスイオンと呼びます
はっきり言って噴飯ものの定義なんですが、こういう自分勝手
な定義をした上でそれを生成させていると主張するのは、この点
では嘘では無いと言えるでしょう。
が、その上で、次のようなことを言っています。
マイナスイオン プラスイオン
血管 拡張される 縮まる
血圧 正常になる 高くなる
血液 アルカリ性傾向になる 酸性傾向になる
(以下略)
ここでの定義による「マイナスイオン」や「プラスイオン」に
よって、こういう作用があることは、少なくとも統計的に有意で
はないという形で否定することは、可能です。
問題は、そういうデータが無いことなのかな。
でも逆に、彼らがこういう主張をするのなら、3た論法ではな
いデータが無いといかんと思うのですが。
ここからは一般論ですが、技術的・科学的という制約がある場
合は、なんらかの作用を主張するときは、そのためのデータを実
験条件とかをちゃんとした形で持って示すものです。例えば人体
への効用では、3た論法のデータは、ちゃんとした形としては認
められません。で、たぶんマイナスイオンの人々にはそれは無い
と推定しています。
そこで、この推定に基づいて、仮に主張者がまともなデータを
持っていないで主張をしているという状況にあるとき、これは技
術的・科学的に否定されているわけではないのですが、詐欺になっ
たりはしないのでしょうか。
>技術的・科学的に否定できる効能を謳ったものについては
>問題になると思います。
>それは個別の購入者との関係で詐欺の問題が出る他
>(もっともおろかにも売り手がそうだと信じている場合
> 詐欺は難しいですな。)
未確認情報ですが「マイナスイオンという代物による効果が言
えないのは承知だが、そう書くと売れるから」というメーカの人
の発言もあるそうです。
けっこう大手のメーカもマイナスイオン製品を出していますか
ら、ちゃんと検証した人はいるでしょうし、否定的な結果しか出
ないことは容易く想像が付きます。
この発言がガセでなかった場合、詐欺になるんですかねえ。
>公正取引委員会が所管するような法律に基づく規制の対象となりそうです。
これは、ちょっとピンと来ないのですが、どのような規制なの
でしょうか。
>From:頼光 <rai...@mug.biglobe.ne.jp>
>Date:2003/12/07 23:02:39 JST
>Message-ID:<bqvbtt$cua$1...@bgsv5647.tk.mesh.ad.jp>
>
> ここからは一般論ですが、技術的・科学的という制約がある場
>合は、なんらかの作用を主張するときは、そのためのデータを実
>験条件とかをちゃんとした形で持って示すものです。例えば人体
>への効用では、3た論法のデータは、ちゃんとした形としては認
>められません。で、たぶんマイナスイオンの人々にはそれは無い
>と推定しています。
> そこで、この推定に基づいて、仮に主張者がまともなデータを
>持っていないで主張をしているという状況にあるとき、これは技
>術的・科学的に否定されているわけではないのですが、詐欺になっ
>たりはしないのでしょうか。
結論から言えばこのような分析では
「詐欺になるかならないか言えない。
なぜなら詐欺の要件を検討していない。」
ってことになるからです。
一応、商品の売買を想定しているようなので
民事上の詐欺に限定しますが
売買ということは買う側が買う旨の意思表示をしている訳で
その意思表示というのは例えば
「その商品を1000円で買おう」ってことな訳です。
そしてこれに対する詐欺というのは
もし真実を知っていればそのような意思表示をしないはずなのに
売る側の何らかの行為により
勘違いをしてしまった(錯誤におちいってしまった)時に
成立するものです。
そして効能をうたい文句にする類の商品であるなら
効能が全くないのに効能があるように言えばこれは詐欺になり得ますが
効能が全くないと言えないものを
効能の存在の可能性を合理的に説明できないからといって
直ちに詐欺になる訳ではないのです。
この例としては漢方薬をあげることができます。
(もっとも漢方薬は薬事関係の特別法の規制は受けますが。)
漢方薬のメカニズムは西洋医学で解明しきれている訳ではありませんし
データというのは結局歴史でしかない訳ですが
だからといって漢方薬を「効きますよ」と言って売るのが
だめな訳では全然ありません。
また極端な例としては寺社のお守りもそうですね。
まして効能の有無の問題をふっとばして
効能があるというための過程を問題にするのは
詐欺かどうかの判断基準としてはあさっての方向です。
その過程が間違っていたとしても効能があるなら
「効能があると思って買った」という点について問題がない以上
詐欺にはならないし
逆に効能が全くないのであれば
全くないものをあるかのように言った点で既に詐欺になるのです。
効能があるかないかわからないなら……
やはり効能の存在についての証明過程は問題にならず
「効能が全くないとまでは言えない。」
でしょう。
最近やはり多い通販番組のパターンとして
「これこれはこんなところがいいです。」と使用者の声があがって
テロップで
「これは効能をうたうものではなく
使用者の感想を述べてもらったものです。」
的なものが流れるもの。
これも以上の話の延長線にあると見ていいでしょう。
効能は結局「わけわからんけど使用者の9割がいいと言っている」
でもいいわけです。
で、これが本当なら詐欺にはならない。
……それは法律で規制する領域ではなく
市場原理で雌雄を決すればいい領域だということなのです。
また効能をうたい文句にする類の商品特有の問題として
「多少の誇張のような軽微な欺罔は詐欺にあたらない」
ってルールの存在もあげられます。
これの有名な例は洗剤のCMで
必ずしもCMが言うほどきれいになる訳ではないのですが
だからといってあれで詐欺になる訳ではありません。
> この発言がガセでなかった場合、詐欺になるんですかねえ。
でも開発者が売る訳ではないでしょうから。
>>公正取引委員会が所管するような法律に基づく規制の対象となりそうです。
>
> これは、ちょっとピンと来ないのですが、どのような規制なの
>でしょうか。
つい先日fj.soc.lawで話題になった
「不当景品類及び不当表示防止法」(特に4条関係)
「不正競争防止法」(特に2条1項13号関係)
「消費者契約法」(特に4条2項関係)
などがそうです。
詳細は公正取引委員会のホームページをどうぞ
( http://www.jftc.go.jp/ )
報道発表資料中の10月30日付け警告
(やせ薬会社に対するもの)
は、詐欺を認定した訳ではありませんが
公正取引委員会がどういう点に着目して警告を発しているかが
参考になると思います。