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太陽もほえろ

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Norimasa Nabeta

未読、
2002/08/10 20:24:412002/08/10
To:

戸口を叩く音がする。響子(仮名)は台所の仕事の手を休めて、
ぬれた手をエプロンのはしで拭きながら、いそいそと玄関に向
かった。

響子(仮名)
 「はい、どなたでしょうか。」

戸口には複数の人がいるようで、ものものしい感じがした。
もしかして、主人の会社でなにかあったのでは、響子(仮名)
の心に悪い予感が過ぎるのであった。
玄関を開けると、堅気ではないような人達が目に入ったが、
先頭の男は極めて丁寧な物腰であった。


 「ご主人さまはご在宅ですか。」

響子(仮名)
 「はい、少々お待ちください。」

玄関から居間に抜ける廊下で、響子(仮名)は夫を呼んだ。
こどもと遊んでいた夫は、ふんとも言わずに立ち上がって
出てきた。そのまま台所に戻ろうとする響子(仮名)の背中
から、先ほどの物静かそうな男が大声をあげるのを聞いた。


 「夢沢那智(仮名)だな、
  業務上過失致詩の容疑で逮捕する。」

おどろいて、振り向くと、すでに夫は屈強な男達に両脇を固め
られて、困ったような顔をしてこちらを見ている。
この騒ぎに驚いた息子の真慈(仮名)が出てくるのを、ようやく
響子(仮名)は抱きかかえてとめた。

響子(仮名)
 「あ、あなた…、」

那智(仮名)
 「大丈夫だ、きっとなにかの間違いだ。
  心配しなくてもいい、ちょっと出かけてくるから
  しばらくの間、真慈(仮名)たのむ。」

照れたような笑みを浮かべながら、そういい残す夫の言葉には、
力がなかった。
いつのまにか家の中にあがり込んでいた刑事が「詩とメルヘン」
の束を鷲づかみにして出て行く姿を見送りながら、響子(仮名)
は呆然と玄関に揃えられた自分の靴を見つめるのだった。

--
のりたま@つづく(わけないじゃん)

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