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C.C. SAKURA OriginalStory#11 (1/4)

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Keita Ishizaki

未読、
2002/02/09 22:05:472002/02/09
To:
石崎です。

現在はとある事情によりNetNewsへの投稿活動を休まれている(読んでは
いるそうです)藤森英二郎さんより、カードキャプターさくらの「さくら
カード編」の新作妄想がメールにて送付されて来ましたので、代理投稿します。

全文で2,000行以上ありますので、以下の4つの記事に分けて投稿します。
この記事は、第11話Aパートです。

アニメ版妄想小説No.11『さくらと鏡と凸レンズ』(Aパート)
アニメ版妄想小説No.11『さくらと鏡と凸レンズ』(Bパート)
アニメ版妄想小説No.11『さくらと鏡と凸レンズ』(エピローグ)
●おまけエピソード 『さくらと知世のクリスマス』

 それでは、藤森さんの妄想をお楽しみ下さい。


(以下、藤森さんのメールより)

藤森@諏訪です。
カードキャプターさくらの番外編小説です。お好きな方のみお読み下さい。

#筆者初の「さくらカード編」の長編妄想。(^^;

アニメ第61話「さくらとカードとプレゼント」では詳しく描写されなかった
4枚のクロウカードのさくらカード化エピソードです。
1999年12月21日にNHK-BS2で放送されたアニメ本編内で
さくらカードになったのはミストだけですが、
ミラーさん他3~4枚がこのお話の直前にさくらカードになっています。

アニメ冒頭のケロちゃんのセリフ:
「今日の騒ぎで4枚もさくらカードに変えたんやもんなあ。」からは、
ミラーさんを含めて4枚かミラーさんを除いて4枚か不明です。

水野さんのホームページ「CCSF - Collected Creations, Selected Features」
(旧カードキャプターさくらF)によると、
http://ccsf.homeunix.org/
この4枚で可能性があるのはスルー(抜)、アロー(矢)、
ツイン(双)、アーシー(地)のようです。
ここでは、ツインを除く3枚とミラーさんの計4枚を
次々にさくらカード化しなければならないような試練を考えてみました。

#毎回試練を考えるエリオルの苦労がよくわかりました・・・(;_;)


アニメ版妄想小説No.11『さくらと鏡と凸レンズ』

#「鏡」を「ミラー」と読んだあなた。あなたはさくらファンとして正しい。
#しかし、このお話では鏡(かがみ)そのものとミラーさんの両方の意味です。


★友枝町商店街 お昼過ぎ

もうすぐクリスマスの日曜日。
友枝町の商店街にはクリスマスツリーが飾られ、
クリスマスソングが流れてクリスマス気分を盛り上げ、
多くのお客さんが行き交っています。

お昼ごはんを食べてから外出したさくらちゃんは、
誰に何を贈るか考えながらプレゼントの下見で商店街を歩いていました。

(はう~っ、贈りたい人がいっぱいいるのに、おこずかい足りないよう。)

ショーウインドウを覗き込み、お値段を確認してから
自分のお財布を開けて覗き込んで、溜め息をつくさくらちゃん。
知世ちゃん、雪兎さんを始め贈りたい人が7人以上いるので大変です。

(お裁縫苦手なんだけど、布地を買って何か作ろうかな?)

去年さくらちゃんが雪兎さんに贈ったのは、手作りの雪兎さん人形。
この予算では、どうやら今年も手作り品が中心になりそうです。

(私の人形を作って雪兎さんに贈ったら・・・雪兎さんの枕元で
 私の人形と雪兎さんの人形が寄り添っちゃったりして・・・)

さくらちゃんは思わず赤くなって、ショーウインドウの前で
「はにゃ~ん」状態となってしまいます。
そのさくらちゃんを、ビルの屋上から見つめている三つの影。

「それでは、さくらさんには私からちょっとした試練を
 プレゼントいたしましょう。」
「さくらちゃんからプレゼントもらえそうもないからって、
 エリオルって意地悪ぅ。」
「それは、全然関係ないのでは?」

エリオルに皮肉を言う奈久留ちゃんと、突っ込みを入れるスピネル。
それには答えず、エリオルはいつものシニカルな笑みを浮かべながら
闇の杖を振り上げ、何やら魔法を使うのでした。

#この時点では、さくらちゃんの「プレゼント予定者リスト」に
#エリオルはもちろん小狼も入っていません。

「はっ!これは・・・クロウさんの気配・・・!」

「はにゃ~ん状態」だったさくらちゃんは、妙な気配を感じてきょろきょろと
あたりを見回し、怪しい気配が友枝小学校の方から感じられるのを確認して、
PHSで知世ちゃんとケロちゃんに連絡を取ってみます。
知世ちゃん、ケロちゃんと友枝小学校の校門前に集合することにして、
さらに小狼にも電話をかけてみるさくらちゃん。

「何かあったら、必ず俺も呼べ。」
「うん。」

少し前に、さくらちゃんが小狼とした約束。
クロウカードが全部封印されたのに香港に帰らないで自分を助けてくれる小狼。
エレベーターでフロートをさくらカードに変えた時、
初めて名前で呼んでもらって・・・
そんなさくらちゃんの回想は、抑揚のない女性の声で中断されます。

『おかけになったPHSは、電波の届かない地域にあるか、
 電源が切れています。』
「ほえ?・・・小狼くん、どうしちゃったんだろ?」

これまでは、さくらちゃんが小狼のPHSに電話した時に留守番電話に
なっていたことはあっても、こんな反応が返って来たことはありませんでした。
仕方がないのでさくらちゃんは小狼に連絡を取ることはあきらめ、
友枝小の方へと走り出します。

その後ろ姿を、ほほ笑みながら見送るエリオル。
エリオルが魔法で電波妨害をしたらしいと気付いた奈久留ちゃんは、
そのことをエリオルに聞いてみます。

「エリオルぅ、なんでさくらちゃんに小狼君を呼ばせないの?」
「ちょっと、今回は彼がいるとまずい事態になりそうなので。」
「へ~、今回はあの子がいればさくらちゃんの助けになるんだ。」
「いえ、いても全然役に立たないでしょう。
 それより、彼がいるとさくらさんが困ることになると思いますよ。」
「?」

これから何が起こるか全て予見しているようなエリオルの言葉に、
首をかしげながらもそれ以上追求しない奈久留ちゃん。
そして、遠ざかっていくさくらちゃんの背中を見ながら、
エリオルは独り言のようにつぶやくのでした。

「そう・・・これから起こる楽しいことは、
 あまり彼には見せたくありませんからね・・・」


★友枝小学校 校門前

「知世ちゃ~ん!ケロちゃ~ん!」
「遅いで!さくら!」

小学校の校門前に停車している知世ちゃんのコスチューム運搬車。
その横にたたずむ知世ちゃんと、知世ちゃんの頭上を漂うケロちゃんを見つけて、
さくらちゃんは遠くから声をかけて手を振ります。
よく見ると、知世ちゃんは右手でさくらちゃんに手を振り返しながら、
左手でビデオカメラ回し、駆け寄るさくらちゃんの撮影に余念がないのでした。

「はあはあ・・・遅れちゃった・・・みんな、速いね。」

近くの商店街にいたのに、知世ちゃんやケロちゃんより
遅くなってしまったさくらちゃん。
空を飛んで来たケロちゃんが速いのはわかりますが、
いくら車で来たといっても知世ちゃんの家は学校からかなり遠かったはずです。

「さくらちゃんのためですもの!いつでも出動の準備はできていますわ!」

以前、さくらちゃんが一度にたくさんのクロウカードをさくらカードへ
変えようとしてダッシュを暴走させてしまった時に、知世ちゃんは
お風呂に入っていてせっかくのさくらちゃんの勇姿を撮り逃しています。
それ以後、知世ちゃんはお風呂の中にまでPHSを持ち込んでいますし、
バスローブ姿でも出動できるようにコスチューム運搬車の中に
自分の下着や靴、着替えまで載せているのでした。

「あら?さくらちゃん、李君はどうされましたか?」
「電話してみたんだけど、つながらなくて・・・」

念のためにもう一度かけてみるさくらちゃんですが、
相変わらず小狼のPHSにはつながりません。

「仕方がありませんわね。
 今日のバトルコスチュームはぜひ李君にもお見せしたかったのですが・・・」
「ほえ~っ!や、やっぱり着替えるの~?」
「もちろんですわ!」
「はうぅ~。(泣)」

いつものようにしぶるさくらちゃんをコスチューム運搬車の中に
連れ込んで、着替えさせてしまう知世ちゃん。
それにしても、李君はいったいどうしたのだろう?
自分はここまでしていつでもさくらちゃんの元に駆け付けられるように
しているのに、よりによってPHSの電源を切っているなんて。

(・・・李君が後でビデオを見て、今日来れなかったことを後悔するくらい
 超絶かわいいさくらちゃんを撮らなければなりませんわ!)

知世ちゃんは、さくらちゃんが好きなくせに肝心な時にいない
小狼に少し腹を立てていたのでした。


★コスチューム運搬車内

とうとうバトルコスチュームに着替えさせられてしまったさくらちゃん。
知世ちゃんはさっそくさくらちゃんをビデオに撮影しています。

「さくらちゃんには、中国風の衣装もよく似合いますわあ~。」
「なんや、こん服、どっかで見たような・・・」
「これって、もしかして・・・」
「ええ。苺鈴ちゃんの式服を参考にして作ったコスチュームですわ。」
「苺鈴ちゃんの・・・」

つい先週日本に来て、またすぐ香港に帰ってしまった苺鈴ちゃん。
苺鈴ちゃんが何をしに来たのかさくらちゃんは知りませんでしたが、
苺鈴ちゃんのために自分の膝まで貸した知世ちゃんは一部始終を知っています。

小狼との婚約を解消し、自分の膝で泣きじゃくっていた苺鈴。
知世ちゃんはその苺鈴ちゃんの思い出を式服風のコスチュームに託し、
この服を着たさくらちゃんを小狼に見てもらいたかったのでした。

「確かに中国風のデザインやけど、やっぱりスカートは付いとるんやな。」
「苺鈴ちゃんのように下が短パンですと、この時期いかにも寒そうですし。
 その点、スカートなら真冬でも全然違和感がありませんから。」
「・・・スカートの方が余計寒いんとちゃうやろか?」
「はう~。」

長い振り袖の付いた中国風の上着に、中国風デザインのスカート。
12月なので生地は厚めで暖かい。
これは苺鈴ちゃんが帰ってからわずか一週間で知世ちゃんが完成させた、
できたてほやほやのコスチュームだったのです。

「で?妙な気配はどっから感じるんや?」
「う~んと・・・やっぱり学校の中からみたい。」
「それでは、カードキャプターさくらちゃんの出動ですわ!」
「はううぅ~。」

クロウさんの気配は学校の中から感じられますので、
さくらちゃんはこの格好で学校の中に入らなければなりません。
夜の学校にはさんざんバトルコスチューム姿で入りましたが、今は真っ昼間です。
おばけは出ないだろうということと、日曜日なのでおそらく誰も
いないだろうということが、さくらちゃんにはわずかななぐさめでした。


★友枝小学校 屋上

閑散として誰もいない学校の中を通り、
クロウさんの気配に導かれるまま屋上までやってきたさくらちゃんたち。
屋上に出てみると、今日は風もなく、
午後の日差しが照り付けていて暖かいくらいでした。

「確かにこの辺でクロウさんの気配がするんだけど・・・」
「おっ?あっこに何や落っこっとるで。」
「あら、虫眼鏡ですわ。こっちには手鏡も落ちていますね。」
「誰か、理科の実験をした時に忘れて行ったのかな?」

さくらちゃんも理科の実験をこの屋上でやったことがありました。
虫眼鏡を使って太陽の光を集めて黒い紙を燃やしたり、
鏡を使って太陽の光を反射させ、どこまで光が届くかやってみたり。

しゃがみこんで、虫眼鏡を拾おうとするさくらちゃん。
しかし、突然虫眼鏡のレンズがはずれて、レンズ部分だけ宙に舞い上がります。

「ほえっ!?」
「な、なんや?」

空に浮かび上がり、見る間にさくらちゃんの頭上で巨大化する凸レンズ。
直径10m以上にもなった巨大凸レンズは、
さくらちゃんの頭上で真冬の太陽光を集め始めます。

「あ、熱っ!」
「さくらちゃん!」

まだ焦点はいいかげんなものでしたが、それでもさくらちゃんには
熱帯の太陽の何倍もの強烈な光が降り注ぐのでした。

太陽光から逃れようと、右へ左へ走り回るさくらちゃん。
しかし、巨大レンズはさくらちゃんの頭上をふわふわとついて回り、
振り切ることができません。
だんだんと焦点が合ってくるにつれ、より熱くなってくるこの攻撃に、
さくらちゃんはたまらずさくらカードを取り出します。

「我を守れ!シールド!」

3週間ほど前、ケロちゃんとユエさんが仮の姿に戻れなくなった時に
さくらカードにしたシールド。
ケロちゃんとユエさんの変身妨害すら防ぐこのシールドならばと、
球形のバリアを自分の回りに展開したさくらちゃん。しかし・・・

「まだ熱いよ~っ!な、なんでぇ?」
「あかん、元々透明なシールドやと、太陽光線は防げんのや!」
「え~っ!そ、それなら、透明じゃなくなればいいんだね?」

さくらちゃんは再びさくらカードを取り出して使います。
今度は2週間ほど前、知世ちゃんを捜すために
さくらカードにしたばかりのシャドウ。

「我を影で覆え!シャドウ!」

球形のシールドの外側からさらにシャドウの黒い影が覆い、
知世ちゃんやケロちゃんからはさくらちゃんの姿は見えなくなります。
そして、さしもの巨大レンズの集光攻撃も、
その光はシャドウに全部遮られてしまうのでした。

「すごいやないか、さくら!これなら、今回はクロウカードを
 さくらカードに変えることなく事件が解決できそうやな!」
「ああっ!さくらちゃんのお姿が見えなくなってしまいましたわ!」
「と、知世・・・(汗)」

今度は大丈夫と思ったところで、またもさくらちゃんの悲鳴が上がります。

「ほえ~っ!よ、余計熱いよ~っ!」
「な、なんやてえ?」

黒い紙に虫眼鏡で光を集めて当てると、白い紙より熱を吸収して燃えやすい。
確かに光を遮ることには成功しましたが、シールドに入ったままの
さくらちゃんにとって、これは温室効果で蒸し焼きも同然だったのです。

あまりの暑さに、上着を脱ぎ捨ててしまうさくらちゃん。
派手な色使いで、長い振り袖の式服風コスチュームの下は、
短い振り袖の付いたこれまた中国風の服。
ただ、赤と白を基調とした上着と違ってピンク色でした。

「さくらちゃん!とりあえず、日影へ!」
「う、うん!」

知世ちゃんのアドバイスに従い、さくらちゃんは屋上の機械室の影に入り、
シールドとシャドウを解除します。
さしもの巨大レンズも、日影に入ったさくらちゃんへ集光攻撃はできず、
うろうろとさくらちゃんの頭上を漂います。

「ふう。」
「ひとまずこれで大丈夫ですが・・・これからどうしましょう?」
「日影におればあっちからは攻撃でけへんけど、
 こっちからはどうやって攻撃したもんやろ。透明なレンズやから、
 レーザーみたいなショットのカードやと素通しになるやろうし。」

日影に集まって一息つき、
巨大レンズをどうやって攻撃するか話し合うさくらちゃんたち。
しかし、その間に落ちていた丸い手鏡からも鏡の部分がはずれて
空へと浮かび上がったことには、誰も気付きませんでした。


★ソーラー反射衛星重力レンズシステム(大げさ)

「あっ!ま、まぶしいっ!」
「な、なんや?」

お日様と機械室を背にして日影にいたはずなのに、
いきなり真正面から強烈な光を当てられてうろたえるさくらちゃん。
手で目を覆い隠し、指の隙間から覗き見るとさくらちゃんの正面上空に
巨大な丸い鏡が浮かんでいて、日光をさくらちゃんの方へと反射しています。
しかも、今まさにさくらちゃんと巨大な鏡の間にさっきの巨大レンズが
入ろうとしていた所だったのです。

「ほえ~っ!」

さっきとは異なり、今度は巨大レンズの焦点が正確に床の上に合っていて、
その部分が丸くまぶしく強烈に輝き、シュウシュウと煙が上がっています。
巨大レンズが動いて焦点が移動すると、
コンクリートの床の上に焼けこげた線が走るのでした。

「あっ!あぶないっ!」

さくらちゃんの撮影に夢中になっていて、
自分の足元に丸く輝く焦点が迫ったことに気付かない知世ちゃん。
さくらちゃんはあわてて知世ちゃんをかばい、突き飛ばします。
その時、さくらちゃんのスカートのお尻を焦点がかすめ、
一部は一瞬で蒸発し、蒸発した周辺の部分には火がついたのでした。

「熱っ!熱っ!」
「さ、さくらちゃん!」

丸く切り取られたようなスカートのお尻部分からパンツ丸見えの状態で
しばらく駆け回り、手でお尻を叩いて火を消そうとするさくらちゃん。
かろうじて火は消えましたが、黒い煙を上げてくすぶり続けるスカートは
触れないほど熱くなっています。

このままではパンツまで穴が空いて、お尻に火傷をしてしまうと考えた
さくらちゃんは思い切ってスカートを脱ぎ捨ててしまいます。

「はう~っ・・・はあはあ・・・」
「さくらちゃん、大丈夫ですか?」
「おのれ、ようもさくらを!」

へたり込んでしまったさくらちゃんに駆け寄る知世ちゃんと、
真の姿に戻り、火炎を吐いて巨大レンズを攻撃するケロちゃん。
しかし、エリオルのあやつる巨大凸レンズはあっさりケロちゃんの炎を
跳ね返し、今度はケロちゃんに焦点を移動させます。

「あち~っ!あちっ!あちぃ!」

自分自身、太陽を象徴する守護獣であるにもかかわらず、焦点温度
数千度にもなる太陽光の集光攻撃に毛皮を焦がして逃げ回るケロちゃん。
レンズに近づくか遠ざかれば焦点がずれて平気になるのですが、
ケロちゃんが近づけば遠ざかり、離れれば近づいて来て、
レンズに直接攻撃することも逃げることもできません。
日影に隠れても巨大な鏡が日光を反射して照らし出し、隠れる所もなし。

そうこうしている内に、体中に攻撃を受けてしまったケロちゃんは、
体の虎縞模様に黒くて丸い焦げ目がいくつもついた豹柄になってしまうのでした。

#さくらちゃんがどんなパンツをはいていたかは、
#ここでは描写しませんのであしからず。
#お尻にあいた穴からくまさんプリントが覗いたりとか、
#中国風の柄パンツだったり、防寒用に毛糸のパンツだったり・・・(爆)


★インターミッション

「ケロちゃん!こっちこっち!」

屋上の機械室の扉を開けて、ケロちゃんを手招きするさくらちゃん。
光が入る隙間のない密室にいれば、さしもの反射集光攻撃も平気なはずです。
機械室には窓がなく、厚いコンクリートの壁で囲まれているので、
この中に入って金属製の扉を閉めてしまえば大丈夫。

ケロちゃんが機械室の入口に飛び込んで、さくらちゃんが内側から
扉を閉めると同時に扉に焦点が合い、間一髪でケロちゃんは助かるのでした。

「わ、わいの美しい毛皮にようもこんな焦げ目を付けてくれよったなぁ!」

一息ついて、ペロペロと自分の火傷している部分を舐めるケロちゃん。
舌が届かない所はさくらちゃんが濡らしたハンカチで拭いてあげます。
知世ちゃんは自分のスカーフを外して広げ、さくらちゃんの腰に巻き、
即席のミニスカートにしていました。

「中国風の半袖振り袖と、洋風スカーフのミニスカート姿のミスマッチも、
 さくらちゃんにはお似合いですわあ。」
「と、知世ちゃん・・・」

あらためて、自分がパンツ丸出し姿だったことに気がついて赤くなる
さくらちゃん。
とりあえず、日が沈むまでここに隠れていれば
巨大な凸レンズも鏡も無力化するはずで、ひとまず安心。

しかし、さくらちゃんは半袖にミニスカートという
とっても寒そうな姿にもかかわらず、あんまり寒くない。
いや、それどころか、さくらちゃんたちは薄暗いコンクリートの機械室に
いるのに、だんだん暑くなってきたのだった。

「はう~、な、なんか暑くなってきたけど・・・?」
「な、なんや?」
「さくらちゃん!と、扉が・・・!」

暑くなっただけではなく、赤い光で少し明るくなった機械室。
なんとさくらちゃんたちが逃げ込んだ鉄の扉が赤熱し、
赤い光と高熱を放ちながら今にも融けそうになっていたのでした。

「ほえ~っ!」


★スルー大作戦 その1

ケロちゃんが逃げ込んだ扉に、そのまま集光攻撃を浴びせている巨大凸レンズ。
焦点温度数千度にもなる高温に、さしもの分厚い鉄の扉も、
シュウシュウと音を立てながら外側から融け、穴があいていきます。
穴が中まで貫通するのも時間の問題でした。

「あ、暑いよ~っ!」
「あかん、こんままやったら扉に穴があく前に蒸し焼きや!」

外に出るべく、扉のノブを掴むケロちゃん。
集光攻撃は続いていますが、自分がおとりになれば
さくらちゃんと知世ちゃんを扉から逃がすことができるはず。

「あちゃあ~っ!!」

見かけは赤熱してはいなかったノブの部分も、既に温度は数百度。
ケロちゃんは今度は右手の肉球に火傷をしてしまい、
またも涙目でペロペロと舐めるのでした。

とにかく機械室から脱出しようと、出口をさがすさくらちゃんたち。
赤熱している扉にはもう触れないので、そこからの脱出は不可能。
この機械室には、もう一つ階段へ通じる扉がありますが、
そちらには鍵がかかっていました。

「だめ!開かないよぅ!」
「窓もありませんし、困りましたわ。」
「こないなったら・・・スルーや!スルーを使うんや!さくら!」
「スルー?」
「確か、壁抜けができるクロウカードさんですわね。」
「そや!今のさくらの魔力なら、分厚いコンクリートの壁もなんのそのや!」
「う、うん!」

スルーのクロウカードを取り出して、
さくらカードへの変換呪文を唱えるさくらちゃん。

「クロウの創りしカードよ、古き姿を捨て、生まれ変われ!
 新たな主(あるじ)、さくらの名の元に!」

「我らをこの壁の向こうへと通り抜けさせよ!スルー!」

「赤い光に照らし出されたさくらちゃんの勇姿・・・
 ああっ!とってもステキですわあ!」
「相変わらずやなあ、知世。」

赤熱した扉とは反対側の壁に向かってさくらカードとなったスルーを使ってみた
さくらちゃんですが、コンクリートの壁も自分たちにも何も起こりません。

「ほえ?何も変化がないみたいだけど・・・」
「もう、歩いて通れるはずや。」

進んで壁に歩み寄るケロちゃん。
さくらちゃんが「ぶつかる!」と思った瞬間、
ケロちゃんは壁の中へと入っていきます。

「わたくしたちもまいりましょう。」
「う、うん。」

知世ちゃんにうながされて一緒に壁に向かって歩くさくらちゃんですが、
壁にぶつかる瞬間、思わず目をつぶってしまいます。
何の抵抗もなく、「通り抜けた」実感がないまま数歩進んで
さくらちゃんが恐る恐る目を開けると、もうそこは壁の外だったのでした。


★スルー大作戦 その2

「ほえ~。すご~い!もう通り抜けちゃった。」
「スルーを使こたら、どんなもんでも素通しや!」
「お日様の光でも・・・ですか?」
「それなら、スルーを使えばあの攻撃も怖くないね!」
「あ、いや、それは・・・」

「攻撃をすり抜けさせながらフライで近づいて、ソードを使えば、
 巨大レンズでもなんとかなるかも。」
「すばらしいですわ!さくらちゃん!」
「スルーは、使いこなすんが難しいカードでやな・・・」

散々酷い目にあわされた巨大レンズを倒せるかもしれないと、
もうケロちゃんの言うことが聞こえていないさくらちゃんは、
さっそくスルーをパワー全開で使ってみます。

「我にあらゆる物を素通しさせよ!スルー!」
「ちょお待たんかい!人の話を・・・!」

知世ちゃんが撮影しているカメラのファインダーの中で、さくらちゃんの体が
一瞬光ったかと思うと、次の瞬間跡形もなく消えてしまいます。

「さくらちゃん?さ、さくらちゃんが消えてしまいましたわ!」
「あちゃあ・・・」
「そうですわ!光も素通しということは、
 さくらちゃんは透明人間になってしまわれたのですね?
 ああっ、これではさくらちゃんの超絶かわいいお姿が撮影できませんわ!」
「ちゃうんや・・・」
「えっ?」

知世ちゃんの足元、床の下からかすかに「ほえぇぇぇぇ~・・・」と
叫び声が聞こえる。しかも、その声もどんどん遠ざかっていくようだ。

「ま、まさか、さくらちゃんは・・・」
「そのまさかや。スルーのパワーは全開にしよったらあかんのや!
 地球の反対側まで抜けてまうでぇ!」
「そ、そんな・・・さ、さくらちゃ~ん!」

本来、スルーの壁抜けの力は魔力の強さに比例するのですが、さくらカードと
なってパワーアップしたスルーは、自身の力の及ぶ限りの「あらゆる物」を
さくらちゃんの体に素通しさせてしまい、さくらちゃんは学校の床と天井を
何回も突き抜けて下へ下へと落ちて行くのでした。


★大地のクッション

「アーシーを使うんや!スルーの上位カードたるアーシーなら、
 スルーの力を押さえられるはずや~っ・・・!
 絶対、スルーを解除したらあかんで~っ・・・!」

果てしなく落ちて行くさくらちゃんの耳に、
かすかにケロちゃんの叫び声が届いた。
スルーを急に解除することによる危険性はさくらちゃんにもわかる。
空中で解除したら地面に激突してしまうだろうし、
壁の中で解除したら身動きできなくなってしまうのだろう。

この時、さくらちゃんは壁の中や土の中でのスルー解除による
究極の危険性を把握してはいない。
いわく、自分自身と壁との「原子核融合」による核爆発である。

そこまではさすがに想像もできないさくらちゃんだが、
さくらちゃんがケロちゃんにせがまれて買ったゲームの中には
かの「ウィザードリィ」も含まれており、「石の中にいる」は
最悪の恐怖としてさくらちゃんにも刻み込まれていたのだった。


とうとう1階の床も通り抜けてしまい、
地面の中へと突入してしまっているさくらちゃん。
真っ暗で何も見えない中、手探りでアーシーのカードを取り出し、
さくらカードへと変換して使う。

「我を受け止めよ!アーシー!」

さしものパワー全開のスルーも、
自分の上司(?)たるアーシーに足止めをくらっては通り抜けられない。
「スルーでも通れない大地」へと変化したアーシーに
壁抜けの力を押さえ込まれ、受け止められてしまう。
アーシーは優しくさくらちゃんを受け止めて、
龍の姿となって地面の上まで押し上げてやるのだった。

「さくらちゃん!」
「ふ~。なんとか間に合ったようやな。」

地龍の頭の上に乗って校庭に姿を見せたさくらちゃんを見て、
安心する知世ちゃんとケロちゃん。
さくらちゃんはスルーとアーシーを解除すると、
フライを使って校庭から飛び立ち、再び屋上へと降り立ちます。
だが、この騒ぎでさくらちゃんたちがとうに機械室の中にいないことを
巨大レンズに気付かれてしまいました。

機械室の扉に集光するのをやめ、再び動き出す巨大凸レンズ。
しかし、スルーで失敗したさくらちゃんたちに、
この集光攻撃を防ぐ手段はあるのでしょうか・・・?


★アイキャッチ入りま~す★
#後半はさらにHになってしまいますのでご注意下さい。(^^;

(引用はここまでです)

 では、Bパートの記事へと続きます。


--
Keita Ishizaki mailto:kei...@fa2.so-net.ne.jp

Keita Ishizaki

未読、
2002/02/09 22:14:182002/02/09
To:
石崎です。

現在はNetNewsをお休み中の藤森さんによるカードキャプターさくらの
妄想小説の続きです。
アニメを題材とした二次小説(若干Hです)が好きな方のみ。

全文で約2,000行程ありますので、以下の4つの記事に分けて投稿します。
この記事は、第11話Bパートです。

・アニメ版妄想小説No.11『さくらと鏡と凸レンズ』(Aパート)
 <a44o2f$1od$1...@news01dj.so-net.ne.jp>からお読み下さい

・アニメ版妄想小説No.11『さくらと鏡と凸レンズ』(Bパート)
 この記事です。

(以下続けて投稿します)
・アニメ版妄想小説No.11『さくらと鏡と凸レンズ』(エピローグ)
・おまけエピソード 『さくらと知世のクリスマス』


それでは、藤森さんの妄想小説の続きをお楽しみ下さい。


(以下、藤森さんのメールより)

アニメ版妄想小説No.11『さくらと鏡と凸レンズ』(Bパート)


★スルー大作戦 その3

まだスルーで集光攻撃を素通しさせることをあきらめていないさくらちゃん。
ゆっくりと巨大凸レンズがさくらちゃんの方へと向かってくる中、
今度は地面の中にまで落っこちないように呪文を工夫してみます。

「我が体の、足の裏を除く部分にあらゆる物を素通しさせよ!スルー!」

「ああっ、今度こそさくらちゃんは透明人間になってしまわれ・・・?
・・・ませんですわね・・・」
「ほえ?」

コツーン!

さくらちゃんの手をすり抜けて屋上の床の上に落ち、音を立てる星の杖。
続いて、さくらちゃんの腰に巻かれていた知世ちゃんのスカーフがずり落ち、
結び目がほどけてひらりと星の杖の上に舞い落ちます。

そして、はらはらとさくらちゃんの体をすり抜けて、
次々に床に落ちる中国風バトルコスチュームと下着。

「ほええぇぇ~~っ!!」

そこには、靴と靴下以外はすっぽんぽんになってしまったさくらちゃんが・・・
しかも、そのさくらちゃんがケロちゃんにも知世ちゃんにも見えるということは、
さくらちゃんは服まですり抜ける体になってしまったにもかかわらず、
まだ光が通り抜ける体にはなっていなかったのでした。

「あちゃあ~」
「ああ・・・さくらちゃん・・・」(ポッ)
「さ、さっきは服も杖も一緒だったのにぃ!」
「ビッグやスモールはちゃんと服のことも考えてくれるんやけど・・・
 抜けちょるスルーを使いこなすんは大変なんや。」
「ほえ~ん!」

思わずその場にしゃがみこんで、前を隠すさくらちゃん。
そして、目の前にあるスカーフでなかば隠れた星の杖を拾おうとしますが・・・

すかっ!すかっ!

「つ、杖が拾えないよう!」
「こりゃ、スルーの魔力が切れるまでそのまんまやな。」
「そ、そんなあ!」

その時、さくらちゃんに近づいて来ていた巨大凸レンズが
再びさくらちゃんに光を集め始めます。
ケロちゃんを攻撃した時とは違って焦点は甘く、
さくらちゃんの全身が丸い光の輪の中に入るように。

「あ、暑い~っ!」
「スポットライトを浴びた、超絶美しいさくらちゃんのお姿・・・
 ああっ!なんてステキなのでしょう・・・くらっ」
「さくら~っ!」

光り輝くさくらちゃんのあられもないお姿に、知世ちゃんはどうやら
めまいを起こしたようで、撮影しながら足元がふらついています。
ケロちゃんはさくらちゃんをかばい、巨大レンズとさくらちゃんの間に
割って入って羽を大きく広げ、影を作ってやるのでした。


★知世ちゃんのシンクロ作戦 その1

ケロちゃんがさくらちゃんへの光路を遮ると、巨大凸レンズは巨大な鏡と
連携して移動し、別の方向からさくらちゃんへの集光攻撃を続けます。

「こら~っ!なんでさくらばっかり狙うんや!
 わいにもスポットライトを当てんか~い!」

ケロちゃんが怒っても、巨大レンズも鏡も知らんぷりで前から後ろから、
四方八方からさくらちゃんに太陽光線を集める。
杖もカードも持てず、魔法が使えないさくらちゃんは
ふらふらと歩いて逃げ回ることしかできません。

「このままでは、さくらちゃんが全身日焼けしてしまわれますわ!」

暑さでふらふらになったさくらちゃんを見て、ようやく我に返った知世ちゃん。
さくらちゃんの服が落ちている所に走り、
星の杖とクロウカードを拾ってケロちゃんの元に駆け寄ります。

「ケロちゃん、これをお願いします!」

ビデオを連続撮影にセットして撮影ボタンを固定した知世ちゃんは、
なごり惜しそうにケロちゃんにビデオカメラを渡し、
ピコピコと動くケロちゃんの耳に耳打ちします。

「今からさくらちゃんを撮っていただけましたら、
 ケロちゃん用に大きなクリスマスケーキをお作りしますわ。」
「な、なんや?どないするんや、知世?」
「お願いしますね~っ!」

戸惑いながらも、両手で知世ちゃんのビデオカメラを抱えて構える
ケロちゃんを後にし、暑さで逃げ回る気力をなくしてしゃがみこむ
さくらちゃんに近づいて声をかける知世ちゃん。

「さくらちゃん!」
「・・・ほ、ほえ?」
「わたくしがさくらちゃんの体に重なって杖をお振りしますので、
 さくらちゃんは呪文を唱えて下さい!」

強烈なスポットライトを浴びているように見えるさくらちゃんと知世ちゃんを
撮影しながら、知世ちゃんのアイデアにケロちゃんは驚きの声を上げます。

「お~っ!それなら、カードが使えるはずや!」
「そうか!知世ちゃん、お願い!」
「そして、使うカードは、これと、これですわ。」

知世ちゃんが取り出した2枚のクロウカードの内1枚を見て、はっとなって
振り返り、まぶしい凸レンズではなく巨大な鏡の方をを見上げるさくらちゃん。

「・・・どうして、気がつかなかったんだろう・・・」

ずっと大きなヒントが目の前にあったのに気付けず、スルーを使うことに
こだわっていたさくらちゃんは照れくさそうに赤くなるのでした。

「知世ちゃん、タイミングはわかる?」
「大丈夫ですわ!」

さくらちゃんと一緒に、集光された強烈な光を浴び続ける知世ちゃんの顔にも
玉の汗が噴き出しているのに気付いたさくらちゃんは知世ちゃんをうながし、
自分も元気さを取り戻して急いで立ち上がります。

「それでは、失礼いたします・・・」

一旦しゃがんで杖とクロウカードを置き、自分の靴と靴下を脱ぐ知世ちゃん。
さくらちゃんがまぶしさで目を閉じながら知世ちゃんに影を作るように
巨大レンズの方へ向くと、しゃがんでいる知世ちゃんの目の前に
ちょうどさくらちゃんのお尻がきます。

見とれてしまいそうになるのをぐっとこらえて、知世ちゃんはしゃがんだまま
立っているさくらちゃんのお尻にキスするような格好でさくらちゃんの体に
重なっていき、さくらちゃんがはいている靴下と靴に足を通していくのでした。

「さくらちゃん、痛くありませんか?」
「うん、大丈夫だよ。」

さくらちゃんの足の裏を踏む格好になってしまっている知世ちゃんは
さくらちゃんを気遣って声をかけますが、足そのものを踏まれている
わけではないさくらちゃんはあまり知世ちゃんの体重を感じません。

さくらちゃんといっしょの靴をはいた知世ちゃんが
さくらちゃんの体に重なったまま星の杖とクロウカードを手に立ち上がると、
二人の体は完全に重なり、一人に見えるようになります。

「知世ちゃんの体の中、あったかい・・・」
「ああっ!今、わたくしはさくらちゃんと文字通りひとつになれたのですわ!」

すーっ、はーっ、すーっ、はーっ・・・
とくん、とくん、とくん・・・

さくらちゃんの体温、さくらちゃんの息吹(いぶき)、
さくらちゃんの鼓動まで自分の中に感じられ、
あまりの幸福感から気が遠くなりそうな知世ちゃん。
しかし、ここで倒れてはいられません。
気を取り直してさくらちゃんと呼吸を合わせ、
杖とクロウカードをさくらちゃんのように構えるのでした。

「よっしゃ!がんばるんやで!さくら!知世!」
「うん!」
「おまかせください!」

撮影しているケロちゃんから見ると、服を着ていず、
髪の毛が短いさくらちゃんが知世ちゃんに重なっているので、
その姿はほとんど知世ちゃんそのもの。
わずかに知世ちゃんの顔にさくらちゃんの顔がダブって見える程度です。

「行くよ、知世ちゃん。」
「はい!」
「クロウの創りしカードよ、古き姿を捨て、生まれ変われ!
 新たな主(あるじ)、さくらの名の元に!ミラー!」

杖を持てないさくらちゃんに代わり、知世ちゃんが杖を持ち、
いつものさくらちゃんの腕の振りに合わせて杖を振ってカードを使います。
二人の動きは指の位置まで完全にシンクロしており、
ケロちゃんが持つビデオカメラに写る映像はどう見ても一人にしか見えません。

「すごいで、知世!タイミングぴったしや!」
「杖をお振りになるさくらちゃんのお姿は、何百回となく見ていますもの。」

元々、さくらちゃんの決めポーズは知世ちゃんが考案したものです。
もちろん知世ちゃんは自分でもやってみていて、その中からさくらちゃんが
最もりりしくかわいく見えるポーズを選んだのでした。
そして、これまでに撮影したさくらちゃんの決めポーズシーンは
他のシーンよりもさらに繰り返し繰り返し、何度も何度も見ており、
目をつぶって動いても、自分で指先まで再現できるほどだったのです。


★知世ちゃんのシンクロ作戦 その2

知世ちゃんの活躍によりさくらカードとなったミラーのカードから
雲のように魔力が流れて二人の前に集まり、固まって巨大な鏡が現れます。
ショットの時はさくらちゃんが手に持てるほどの小さな鏡でしたが、
さくらカードとなってパワーアップしたミラーさんは、
上空に浮かぶ巨大な鏡よりさらに巨大な鏡を巨大レンズと
さくらちゃん&知世ちゃんの間に出現させ、光を反射する。

もちろん、ショットの時とは異なり反射するだけではレンズも鏡も倒せない。
間にミラーさんがいては近づいてソードを使うわけにもいかないが、
知世ちゃんが選んだもう一枚のクロウカードがここで力を発揮するのだ。

光を遮られた巨大レンズは回り込んでさくらちゃんに集光しようとしますが、
ミラーさんはその動きに合わせて二人をかばい、日影を作り続けます。
ミラーさんの影に入ってようやく涼しくなったさくらちゃんは続けて呪文を
唱え、それに合わせて知世ちゃんは再び杖を振るってカードを使うのでした。

「クロウの創りしカードよ、古き姿を捨て、生まれ変われ!
 新たな主(あるじ)、さくらの名の元に!アロー!」

「かの物を撃ち砕け!アロー!」

二人が重なったままでは解除できないスルーをカードに戻すのは後回しにして、
二人でアローをさくらカードへと変えて使うさくらちゃんと知世ちゃん。
実体化したアローの放った矢はいくつにも分裂し、
上空に浮かぶ巨大なレンズと鏡を同時に貫きます。

ピシッ・・・ピシッ・・・ビシビシビシッ!ガッシャーン!

アローの矢に何ヶ所も貫かれた所からピシピシとヒビが広がり、
さしもの巨大凸レンズも鏡も粉々に砕け散る。
太陽の光を乱反射してキラキラと舞い落ちるガラスと鏡の破片は
落ちるにつれて小さくなり、元の大きさに戻った時には
砂粒のようになって屋上へと散らばるのでした。

「ようやった!さくら!知世!」
「やりましたわね!さくらちゃん!」
「お、終わった・・・の・・・?」

さくらちゃんがふらついて、しゃがみこんでしまったために
知世ちゃんには自分の足元に重なってさくらちゃんの背中と頭が見える。
どうやら、魔法の使い過ぎでさくらちゃんは眠くなってきたようだ。
何しろ、今日は4枚ものクロウカードをさくらカードへと変えた上に、
シールドやシャドウ等でさくらカードを10回近く使っている。

知世ちゃんがそっとさくらちゃんの靴と靴下から自分の足を抜くと、
さくらちゃんの魔力がなくなったためにスルーもアローもカードへと戻る。
しかし、ミラーさんはそのまましゃがみ込んでいるさくらちゃんの姿を写し、
鏡の外へと出てくるのだった。

「あ、あの、大丈夫ですか?」
「あ・・・ミラーさん・・・?」
「はい。」
「ね、眠い・・・」
「大丈夫ですか?さくらちゃん!」
「無理もあらへんわ。今日は大変やったもんなあ。」
「わ、私がまた眠り込んじゃったら、お父さん心配しちゃう・・・」

最近は魔力が上がってきていたため、眠り姫になることが少なくなっていた
さくらちゃんですので、また眠り病になったら家族が心配する。
そう考えたさくらちゃんは、
目の前にいる自分とそっくりな姿の少女の手を握り、懇願するのでした。

「お、お願い、私の代わりに家に戻って・・・」
「は、はい!」

ミラーさんの返事を聞いて安心したさくらちゃんは、
そのままミラーさんにもたれかかって、とうとう眠ってしまいます。
しかし、さくらちゃんにいきなりもたれかかられたミラーさんは、
ささえきれずにその場でさくらちゃんと一緒に倒れてしまう。

「あっ・・・」
「ああっ!さくらちゃんに押し倒されるさくらちゃん!
 はたまた、さくらちゃんを押し倒すさくらちゃん!
 な、なんて美しい映像なのでしょう!」

すかさずケロちゃんからビデオカメラを取り返した知世ちゃんは、
この世にも美しい光景を自らの手で撮影します。
そう、今現在のさくらちゃんの姿をそのまま写し取ったミラーさんの姿は、
さくらちゃん同様「靴と靴下だけ」の超絶美しい姿だったのです・・・

「お~い、わい専用のクリスマスケーキ、忘れんといてや~っ!」

はだしのまま撮影に集中している知世ちゃんの耳には、
ケロちゃんの言葉など全く届きませんでした。


★友枝小学校 屋上

『くしゅっ!』

ミラーさんに抱き付いた格好で眠っているさくらちゃんが小さなくしゃみをし、
同時にミラーさんもくしゃみをするのをファインダーの中に見た知世ちゃんは、
あわててビデオカメラをケロちゃんに渡し、さくらちゃんの服を拾い集めます。

「ミラーさん、さくらちゃんに服を着せるのを手伝って下さいませんか?」
「は、はい!」

ぐっすり眠っているさくらちゃんをミラーさんが抱き起こし、足を持ち上げたり
手を上げさせたりしている間に、知世ちゃんが下着や服を着せていく。
お尻に大穴の開いているスカートはやめて、
再び知世ちゃんのスカーフがスカート代わり。

「ケロちゃん、さくらちゃんを車までお運びして下さい。」
「お、おう。」
「・・・と、その前に・・・」

ビデオカメラを置いて、横たわるさくらちゃんの側に四本足で立つケロちゃん。
その背中にミラーさんと協力して服を着せ終わったさくらちゃんを
乗せようとする知世ちゃんですが、ミラーさんの姿がどうにも気になります。

「あの、ミラーさんも服を着た姿になっていただけませんか?」
「あっ、はい。」

元々鏡の精霊のため、写す対象が服を着ているかどうかなんて
全然気にしないミラーさん。
もちろん、写した結果自分の姿がどうなったかも気にしません。
鏡の役割は写す対象の姿を正確に写し取ることなのですから。

知世ちゃんにすっぱだかでいることを指摘されてようやく気がついた
ミラーさんは、あらためて中国風バトルコスチュームを着た
さくらちゃんの姿を写し、自分も服を着た姿になるのでした。

「ケロちゃん、三人乗りしても平気ですか?」
「まかせんか~い!真の姿のわいなら、百人乗っても大丈夫や!」
「どこかの物置みたいですわね。」

百人分の重さには耐えられても、さすがに百人乗るスペースを作るには
ビッグを使って大きくなる必要がありそうだと思いながら、
自分の靴下と靴を履き、ケロちゃんが置いたビデオカメラを拾う知世ちゃん。

見渡せば、屋上には粉々になったレンズと鏡の砂粒のような破片が散らばり、
冬の陽光を乱反射してキラキラと光っている。
だが、きれいなのはそれだけで、屋上の床の上はあちこち焼けこげているし、
機械室の扉は半ば融けて穴があきかけている。
他に落ちているものといえば虫眼鏡の枠と手鏡の枠。

(また、友枝小学校七不思議が増えてしまいそうですわ。)

「校庭と教室に作られた机と椅子のオブジェ」(クロウカード編シャドウ)
「グランドピアノの投身自殺」(さくらカード編ソング)
ほどではないにしても、またも奈緒子ちゃんが好きな噂が立ちそうだ。

さくらちゃんに関して悪い噂が立つようなら知世ちゃんは全力で阻止するが、
七不思議が増える程度なら隠蔽工作をする必要はないだろう。
それに、さくらちゃんのおかげでその程度で済んでいるのだから、
そういう噂はさくらちゃんが活躍した証でもある。

とりあえず屋上はこのままにしておくことにして、
ミラーさんと一緒に、眠っているさくらちゃんをケロちゃんの背中に乗せ、
落っこちないように支えながら自分もケロちゃんの背中に乗る知世ちゃん。
さくらちゃん、知世ちゃん、ミラーさんの三人を背中に乗せたケロちゃんは
大きく翼を広げて屋上から飛び立ち、校門前に停めてある
知世ちゃんのコスチューム運搬車まで運ぶのでした。


★コスチューム運搬車内 夕方

「あ、あの、私、そろそろ行かないと・・・」
「おなごり惜しいですわ。」

散々着せ替えたあげくに、さくらちゃんが着ていた普段着ではなく、
少し派手目の服を着せてミラーさんを送り出した知世ちゃん。

さすがにミラーさんをさくらちゃんと同じバトルコスチューム姿のまま
送り出すわけにはいきませんし、木之本家に行ったミラーさんがパジャマに
着替えるためにも、ミラーさんには本物の服を着せなければなりません。

そのためには、ミラーさんが裸になる必要があり、
そうするにはさくらちゃんをすっぽんぽんにして、
あらためてその姿をミラーさんに写させないと・・・

というわけで、知世ちゃんはぐっすり眠っているさくらちゃんから
ミラーさんに手伝ってもらいながら再び服を脱がしてしまい、
その姿を写してすっぱだかになったミラーさんとさくらちゃんに、
お手製下着も含めて様々な服を着せてみては撮影するということを
繰り返していたのでした。

木之本家の晩御飯の時間が迫り、しぶしぶミラーさんを送り出した
知世ちゃんですが、さくらちゃん本人はまだ眠っていますので撮影は続行中。
さくらちゃんが心配なケロちゃんは仮の姿に戻って留まり、
さくらちゃんの枕元でさりげなくビデオに写ろうとしています。

「ああっ・・・今日は、本当にすばらしい一日でしたわ・・・」
「わいもさくらも大変やったけどな。」
「そういえば、どうしてスルーさんを使ったさくらちゃんは
 透明人間になられないで裸になってしまわれたのでしょうか?」
「う~ん・・・やっぱ、スルーが抜けちょるせいやと思うんやけど・・・」

「でも、最初の壁抜けはちゃんと成功しましたし、
 次の時にも床まですり抜けて落っこちてしまいましたのに、
 さくらちゃんの服も杖も一緒に壁抜けしてましたが・・・?」
「まさか・・・スルーは間抜けのふりして、わざとやっとるんやろか・・・」

光まで素通しできないのはスルーの能力限界だとしても、最初の二回は
ビッグやスモール同様ちゃんと服のことまで考えてくれていたスルーなのに、
最後の一回だけどうして服まで脱げてしまったのか二人で考えてみるが、
どうにもうまく説明できない。
とうとうケロちゃんは全部クロウ・リードのせいにしてしまうのでした。

「『性格の悪い』クロウ・リードが創ったもんやから、
 スルーは間抜けな上に意地悪なんやろ!」

#そう言うケロちゃんもクロウが創った物なのでは?
#(<筆者が突っ込んでどうする)


★エリオル家 同時刻

「・・・ひどい言い草ですねぇ・・・」
「だって、そうなんでしょ?」

エリオルが操る巨大凸レンズと鏡を破壊された後、家に帰って
魔法でコスチューム運搬車内を覗き見しているエリオル家の人々。
クロウ・リードとエリオルは同一人物というわけではありませんが、
自分自身の前世をけなされるといい気はしません。
奈久留ちゃんの突っ込みには直接答えず、エリオルは
どうして三回目だけさくらちゃんの服が脱げてしまったのか説明します。

「スルーは『我』とだけ言ったら服や杖まで含めて、
 『我が体』と言ったら言葉通り『体だけ』を素通し対象とするんです。
 三回目の時は呪文がまずかったのですよ。」
「ふ~ん。」

うなずいてはいるものの、いまいち納得できかねる風の奈久留ちゃん。
続けてスピネルも、疑問に思っていたことをエリオルに質問してみます。

「すると、結局スルーでは太陽光線を防ぐことはできないのですか?」
「いくらスルーが抜けていても、
 呼吸する空気まで素通しでは術者が死んでしまうだろう?
 だから、最低限人間に必要なものは透過できないようにしてあるんだ。」
「太陽光線も、人間に必要なものだと?」
「そうでないと透明人間になるだけではなく、
 光が目を素通りするので自分自身も何も見えなくなってしまう。」
「なるほど。眼球がレンズの役をなさなくなる上に、
 網膜の上に何の像も結べなくなるのですね。
 そして、シールドはその逆で光も空気も素通しだと。」

「むつかしいことはともかくぅ、つまりぃ、スルーがわざと
 さくらちゃんをすっぽんぽんにしたんじゃなくってぇ・・・」
「クロウ・リードがスルーをそのように創ったからだと。」
「そうそう!それそれ!」

ちらりとスピネルと奈久留の方を見るエリオル。
少し気に障ったのかもしれませんが、それについては何も言わず、
スルーのクロウカードを創った時の話をします。

「あのカードは、入口から入らない大きな椅子を買ってしまった時に
 創ったんですが・・・当時、クロウも使いこなすのに苦労していましたよ。」
「ぷぷっ。」

エリオルは駄洒落を言ったつもりはなかったのですが、普段すましている
エリオルが洒落を言ったと思った奈久留ちゃんは思わず吹き出してしまいました。
それでも、エリオルはポーカーフェイスを崩さず、話を続けます。

「クロウは最初にスルーを使った時、
 せっかく買った椅子を地面の中に落っことしてしまったのです。」
「きゃはははっ!」
「それで、どうなったのです?」
「地球の反対側まで落っこちちゃったんだったりして。」

「今日のさくらさんのように、アーシーを使って拾い上げたのですが・・・
 一足遅く、マグマ溜り近くまで達していた椅子は丸こげでした。」
「あはははははは・・・っ、く、苦しい・・・」

涙を流し、苦しそうにお腹を抱えて笑い転げている奈久留ちゃん。
スピネルはジト汗を流し、はらはらしながらその様子を見ていますが、
エリオルはあくまで冷静なようです。

「まあ、それでもスルーをジャンプ以上の大間抜けにしておいたのは正解ですね。
 おかげで、たった一度で4枚ものクロウカードがさくらカードになりました。」
「しかし、実質的にスルーのせいでさくらカードになったのは、
 アーシーだけなのでは・・・」

つんつん

エリオルに突っ込みかけて、しっぽを引っ張られる感触に振り向くスピネル。
そこには、まだ笑いが止まらないらしい奈久留ちゃんが、
スピネルのしっぽをつまんで引っ張っていました。

(何をするんです!)
(いーのいーの!エリオルがむっつりスケベなのは今に始まったことじゃ
 ないでしょ?こうしてさくらちゃんの着替えまで覗いてるんだし。
 どーせ、お間抜けスルーのせいでさくらちゃんがすっぽんぽんになるのも
 予見してたんでしょ。)
「何か言いましたか?」

ひそひそ話をしているスピネルと奈久留に、いつもの笑顔で尋ねるエリオル。
奈久留ちゃんは全然気にしていないようですが、首を横に振りながらも
スピネルは背筋に冷たい物が走るのを感じて、冷や汗をかくのでした。


★コスチューム運搬車内

「はあ・・・」
「ケロちゃん、どうされたのですか?」

さくらちゃんの枕元にいるケロちゃんをビデオカメラのフレームから巧みに
外そうとして、ケロちゃんが溜め息をついているのに気がついた知世ちゃん。
ケロちゃんは、やけど自体はたいしたことがなかったのに元気がありません。

「いやな・・・太陽を象徴するこのわいが、
 よりにもよってお日様の光に負けよるなんてなあ・・・」
「仕方がありませんわ。鉄の扉が融けてしまうほどの高熱だったのですもの。」
「にしてもや。もうちょっと何とかならへんかったんかなあ・・・」

ケロちゃんを励ます言葉が見つからず、
小窓から沈みかけているお日様を見る知世ちゃん。
ふと、太陽に雲がかかっているのを見た知世ちゃんは、
ある重大なことに気がついてしまうのでした。

「あっ・・・!」
「どないしたんや、知世?」
「今、気がついたのですが・・・」
「なんや?」
「クラウド(雲)さんで太陽を隠してしまえば
 よかったのではないでしょうか?」
「あ~っ!そ、そやないか!すっかり忘れとった・・・
 それを言うなら、レイン(雨)でもスノウ(雪)でもよかったんや!」

巨大凸レンズからの攻撃を防ぐことに夢中で、その攻撃のエネルギー源を
元から断つことに気付けず、さらに落ち込むケロちゃん。
自分でもたった今まで気がつかなかった知世ちゃんも、
ケロちゃんを励ますことができません。

「・・・知世、今の話はさくらには内緒やで。
 ただでさえスルーをうまく使いこなせなかったんで落ち込んどるっちゅうに、
 余計落ち込んでまう。」
「はい。そうですわね・・・」

自分自身のことよりも、さくらちゃんを気遣うことができるなら
ケロちゃんも大丈夫だろうと、知世ちゃんも少し安心します。
そのかたわらで、ウエディングドレス風のネグリジェを着せられてしまっている
さくらちゃんは、すーすーと静かな寝息を立てているのでした。


★友枝小学校 5年2組 翌日の朝(?)

「おはよう、知世ちゃん。」
「おはようございます。さくらちゃん。」
「おはよー、さくらちゃん・・・って、さくらちゃん、どうしたの?
 こんな真冬にすっかり日焼けしちゃって!」

びっくりして、朝のあいさつもそこそこにさくらちゃんに駆け寄る千春ちゃん。
つい先週までのさくらちゃんとはうってかわって、
今日のさくらちゃんは真夏でも見たことがないほど真っ黒だったのです。

「あ~っ!また、どっか外国に行ってたんでしょ!うらやましいなあ。」
「そう言えば、去年は香港に行ったんだよね。」
「こんなに日焼けするなんて、今年はハワイかニュージーランド、
 それともシンガポールに行ってたの?」

千春ちゃんが羨望の声を上げると、
続いて奈緒子ちゃんと利佳ちゃんも駆け寄って声をかけます。
友人たちに囲まれて、言い訳に窮するさくらちゃん。
まさか、友枝小学校の屋上で、裸になって日光浴をしたとは言えません。

「ち、違うよ~っ!」
「ちょっと見せて・・・わっ!すごい!中まで小麦色!」
「ほえ~っ!」

さくらちゃんの服の胸元をちょっと引っ張って開け、中を覗き込む千春ちゃん。
さくらちゃんの玉のお肌には水着の跡がなく、
全身きれいな小麦色だったのです。

「こんな奥まで日焼けしたってことは・・・
 ひょっとして、さくらちゃんヌーディストビーチにでも行ってたの?」
「ち、違う~っ!!」

さくらちゃんは首を左右に、手をバタバタと上下に振って否定し、
助けを求めるように知世ちゃんの方を見ますが、
知世ちゃんはすかさずビデオカメラを取り出して撮影を始めてしまいました。
小狼もいますが、日焼けしたさくらちゃんを見て顔を赤くしています。

「日焼けっていうのはね・・・」
「また出た。」

友人たちに囲まれておたおたしているさくらちゃんの目の前に、
すかさず出現する山崎君。
山崎君の後ろでは、千春ちゃんが「またか」というように
諦め顔で溜め息をついています。

「日焼けっていうのは、古代ギリシャでオリンピックの元となった、
 かのオリンピアの祭典が発祥なんだ。」
「そう、祭典に出場する選手たちは競技の成績だけではなく、
 いかに健康的に美しく日焼けしているかも競ったんですよ。」

いつのまにかエリオルも山崎君の隣に来ていて、
うんちく合戦、というか大嘘大会。
しかし、この二人に散々だまされたはずのさくらちゃんも小狼も、
相変わらず真面目に話を聞いています。

「そうそう。体の隅々まで美しく日焼けするために、
 昔の人は練習も競技もすっぱだかでやっていたんだ。」
「もちろん、真冬でも裸で練習をするのでとっても寒かったのですが、
 それでも風邪をひかない健康的な肉体を作るのが彼らの使命だったのです。」
「ほえ~っ。」
「昔の人って、大変だったんだ。」

山崎君とエリオルのダブル攻撃に、
またまただまされてしまうさくらちゃんと小狼。
とりあえず自分の日焼けのことから話がそれて、
さくらちゃんは少しほっとします。

「オリンピアで裸で競技をしていたのは事実なのですが・・・」
「山崎君はともかく、エリオル君まで言うと
 ホントなのかと思っちゃうじゃない。」

さくらちゃんを撮影しながら、
その話の一部だけは本当のことだとつぶやく知世ちゃん。
山崎君だけなら千春ちゃんがすぐに突っ込むのですが、
最近は山崎君とエリオルのダブルパンチなので、
さすがの千春ちゃんも突っ込むタイミングを逸しています。

「それにしても・・・小麦色のさくらちゃんも、とってもステキですわあ。」
「真冬に真っ黒だと、なんか『ガングロ』って感じだけど。」
「ガングロってのはね。」
「また・・・」

千春ちゃんの言葉尻をとらえて、
すかさずまたも新たなうんちくをかましだす山崎君。
もちろんエリオルもそれに続き、こうなるともう誰にも止められません。

「平安時代の貴族がしていたファッションで『お歯黒』ってのがあって、
 それは白い歯をわざわざ黒く塗るお化粧だったんだけど・・・」
「その『お歯黒』が、当時は美人の条件だったのですよ。」
「それで、自分の歯の黒さを見せるため、当時の人たちは大口を開けて、
 歯を見せながらしゃべらなければならなかったんだ。」
「それではどうにもしゃべりにくいというので、
 歯を黒くするのではなく顔を黒して、
 いつでも良く見えるようにしたのが今のガングロというわけなんですよ。」

にっこりとほほ笑み、がっしと手を握り合う山崎君とエリオル。
さすがの千春ちゃんも、この二人のコンビには突っ込めません。
それどころか、エリオルまでさも本当そうにまくしたてるので、
「ひょっとしたらホントなのかも」と思ってしまうありさまなのでした。

「う、う~ん、う~ん・・・」
「さくら!どないしたんや?さくら!」
「さくらちゃん!さくらちゃんがうなされていますわ!
 ああ、どうしたら・・・
 でも、うなされているさくらちゃんも、やっぱりかわいいですわあ。」
「と、知世・・・(汗)」

(藤森さんの記事はここまでです)

 では、エピローグの記事へと続きます。

Keita Ishizaki

未読、
2002/02/09 22:32:392002/02/09
To:
石崎です。

現在はNetNewsをお休み中の藤森さんによるカードキャプターさくらの
妄想小説の続きです。
アニメを題材とした二次小説(若干Hです)が好きな方のみ。

全文で約2,000行程ありますので、以下の4つの記事に分けて投稿します。
この記事は、第11話エピローグです。

・アニメ版妄想小説No.11『さくらと鏡と凸レンズ』(Aパート)
 <a44o2f$1od$1...@news01dj.so-net.ne.jp>からお読み下さい

・アニメ版妄想小説No.11『さくらと鏡と凸レンズ』(Bパート)
 <a44oif$bk8$1...@news01di.so-net.ne.jp>からお読み下さい

・アニメ版妄想小説No.11『さくらと鏡と凸レンズ』(エピローグ)
 この記事です。

(以下続けて投稿します)
・おまけエピソード 『さくらと知世のクリスマス』


それでは、藤森さんの妄想小説の続きをお楽しみ下さい。


(以下、藤森さんのメールより)

アニメ版妄想小説No.11『さくらと鏡と凸レンズ』(エピローグ)


★エピローグ その1 エリオル家の人々

今度は、魔法でさくらちゃんの夢の中まで覗き見しているエリオル。
いや、覗き見するだけではあきたらず、
エリオルみずからさくらちゃんの夢の中に出演しています。
もちろん、山崎君との一人二役で、さらに
よりリアルになるようにさくらちゃんの周囲の演出までしていました。

「真冬に全身小麦色のさくらさんは少しかわいそうなのでは?」
「キャハハハ、さくらちゃん、ガングロ小学生~っ!」
「さくらさんが真っ黒に日焼けした夢を見ていたので、
 私はそれに少し演出を加えただけですよ。
 巨大凸レンズには紫外線をカットさせましたから、
 実際にはさくらさんはあまり日焼けしないはずです。」

「エリオルって、やっさし~い。」
「どうも。」
「でも、こうしてさくらちゃんの夢まで操作して、
 悪夢にしちゃってるんだから元も子もないけどねっ。」
「・・・」

奈久留ちゃんの突っ込みで険悪な雰囲気になりそうなのを感じ、
スピネルは汗をかきながら話題を変えます。

「それにしても、よくあれほどの大嘘がスラスラと出てきますねえ。」
「山崎君がいたら、どうしただろうと考えたらすぐに思い付くよ。」
「山崎君ってば、エリオルに毒されちゃったのかな?」
「・・・」

奈久留ちゃんもスピネルも山崎君とはあまり面識がありませんので、
さくらちゃんの夢の中に出てきた山崎君の性格は、
エリオルに影響されたものだろうと勘違いしています。
実際には山崎君は元々あの通りの性格で、
エリオルの方がそれに合わせて友情を育んだのですが。

「・・・まあ、これにこりて、
 さくらさんは将来も絶対ガングロなんてしないでしょう。」
「エリオルは『ガングロ』なるファッションは嫌いなのですか?」
「大嫌いですね。自然に日焼けしたものならともかく、
 あの奇異なファッションセンスは理解できません。」
「エリオル、おじんくさ~い。」
「・・・#」(怒)

にっこりとほほ笑んだまま、奈久留ちゃんの方へ
くる~りと顔を向けるエリオル。
その微笑はいつもと同じだったが、凍り付いたように動かない。
スピネルは全身総毛立ち、にぶい奈久留ちゃんすら
背筋に冷たいものが走って、その場にしりもちをついた。

椅子から立ち上がり、奈久留ちゃんの方へとゆっくり歩み寄るエリオル。
奈久留ちゃんは脂汗を流しながら、蛇に睨まれたカエルのように動けない。

スピネルも全身痺れたように動けなかったが、「この場にいたくない」という
思いの方が勝ち、なんとか足を動かすことに成功し、ソファーから転げ落ちて
部屋から逃げ出すのだった。

「え、エリオル、やめて・・・」
「・・・」
「や、やめて、お、お嫁に行けなくなっちゃう!」

捨て身でギャグを入れ、なんとかごまかそうとする奈久留ちゃん。
しかし、エリオルの表情は変わらない。
いや、今のギャグでかえって凍り付いたようだ。

「や、やめてぇ~っ!『エロ』オルぅ~っ!
 観月センセに言いつけちゃうんだから~っ!」

これにはピクリと反応したエリオル。
奈久留ちゃんはかわいこぶりっ子して、グーにして合わせた両手をあごに当て、
いやいやをしながらうるうるお目々で懇願しています。

「そうですか・・・それでは、ますます見逃せませんね・・・」
「きゃ~っ!!」

後日のエリオル家。
なぜか普段通りに振る舞っている奈久留ちゃんとエリオル。
スピネルは、かえってそれが不気味で、思い切ってエリオルに聞いてみます。

「ルビーに何をしたんです?」
「・・・ユエと同じことさ・・・」
「ユエと?」
「術で身動きできないようにして、こう抱き上げて、手を体に這わせ・・・」

エリオルは、奈久留ちゃんを抱き上げて、体をさするそぶりをして見せます。
はた目にはいやらしい手つきですが、
スピネルにはエリオルがルビーに何をしたのかわかりました。

「記憶を消したんですね?」
「・・・つまらないねえ。きみは。」
「あなたの作品ですから。」

言った後で、しまったと思ったスピネル。しかし、もう遅い。
再び、凍り付いた笑顔で立ち上がったエリオルは、
お茶うけのアップルパイをお皿ごとその手に持っていた。
スピネルは全身から滝のように脂汗を流しながらも、その場から動けません。
黒いスピネルの上に、エリオルの影が黒々と覆い被さり・・・

そして、それから。

「ねーねー、エリオルぅ。お腹すいちゃったぁ。なんかおやつなぁい?」
「すみませんねえ、奈久留さん。
 今、ちょっと家中のお菓子を切らしてしまいまして・・・」
「え~っ!そんなあ!」

スピネルの「んちゃ砲」で壊れた屋根の修理をしているエリオル。
大穴の明いた屋根の上にいるエリオルに、
穴の下から声をかけた奈久留ちゃんはその答えを聞いてがっかり。
ふと、側のソファーの上を見ると、スピネルがよだれを垂らしながら寝ています。

「ふみゃ~ん、ゴロゴロ・・・もう食べられにゃ~い・・・」
「あ~っ!スッピー、あんたまた家中のお菓子食べちゃったわね~っ!」

酔っ払ってソファーで眠りこけているスピネルの
首根っこを摘み上げる奈久留ちゃん。

「んもう、お菓子が嫌いだなんて言ってるくせに、
 家中のお菓子がなくなる時はいつもあんたのせいなんだから!
 え~い、こうしてやるう!」

奈久留ちゃんはスピネルの首根っこから、
尻尾に持ち替えてぶんぶん振り回してしまいます。

「ふ、ふみゃあ~?@@@@??」

すぽっ!

「あっ!」

ガッシャーン!・・・キラッ!

酔っ払った上に振り回されて、完全に目を回したスピネル。
さらに奈久留ちゃんが手を滑らせて尻尾をはなしたため、スピネルの体は
ガラス窓を突き破り、はるか遠くに放り投げられてしまうのでした。

「あ~らら。ま、いっか。自業自得よね!
 あっそうだ!エリオルぅ、何か作ってよぉ!
 この際、甘くなくてもいいからさあ。
 お腹すいた!お腹すいた!お腹すいた~っ!」
「はいはい。そうですね、私も食べ損ねたので、
 またアップルパイでも作りましょう。」
「わ~い!」
(はあ・・・屋根と窓の修理は、お茶を飲んでからにしましょう・・・)

こうして、エリオル家の一見平穏な(?)日常は過ぎていくのであった。
自業自得と言えば、ルビー・ムーンとスピネル・サンを創ったエリオル自身も
自業自得だったが、少なくとも退屈はしないであろう。


「すっぴぃ・・・おんどれ・・・
 ようやっとボスを倒せた所やったのに・・・よくも~っ!」
「んみゃ?」

突然、天窓から飛び込んできたスピネルに体当たりされた上に、
ゲーム機のリセットボタンまで押されてしまったケロちゃん。
怒り心頭に発したケロちゃんと、酔っ払ったままのスピネルの
果てしない戦いが、再び始まるのであった。ちゃんちゃん。


★エピローグ その2 大道寺家 深夜

夜中にようやく目覚めたさくらちゃんに青い服、こげ茶色のショートパンツ、
黄色いロングソックスを着せて送り出した知世ちゃん。
遅くなったので、さくらちゃんはフライを使って飛んで行きました。

丸いお月様を背景に、飛び去るさくらちゃんを撮影した後、
知世ちゃんは自分の家に戻って本日の収穫物の確認と編集作業。

ビデオ編集室で、ケロちゃんが撮影した映像を一生懸命編集します。
カメラワークが甘い上に、撮影ボタンが押しっぱなしだったので冗長な
映像ですが、写っているシーンは何度見ても飽きない美しさ。

知世ちゃんは自分自身が写っている映像を見ることはほとんどありませんが、
ケロちゃんが写した部分にはさくらちゃんと一緒に知世ちゃんも写っています。
それでも、知世ちゃんの目が追うのは超絶美しいさくらちゃんのお姿のみ。

そして、知世ちゃんがさくらちゃんと重なって杖を振るシーンでは、
映像としてはほとんどさくらちゃんの姿が確認できないにもかかわらず、
自分の中にさくらちゃんを感じたことを思い出して体が震えます。
まさしく、これらの映像は「家宝中の家宝」として
厳重に保存するにふさわしいものでした。

「はあっ・・・すばらしい映像が撮れましたが・・・
 さすがにこれは、李君にはお見せできませんわね。」

小狼に見せるために苺鈴ちゃんの式服風バトルコスチュームを作ったのだが、
後半のコスチュームを着ていないさくらちゃんのお姿はとても見せられない。
また、バトルコスチュームを着ている前半だけ見せれば、
当然「どうなったか、最後まで見たい」と言われるだろう。

小狼を心配させたり、鼻血の海で溺死させたりするのは知世ちゃんの本意では
ないから、結局この映像は知世ちゃんだけが見る秘蔵の品となりそうだ。

知世ちゃんの編集作業は進み、場面はさくらちゃんが
ミラーさんを押し倒すシーンとなった。

「ああっ!さくらちゃんと、ミラーさくらちゃん・・・」

知世ちゃんには一目で二人の区別がつきますが、
それでもこれがさくらちゃんが二人いるほどのウルトラスーパーデラックス
てんこもりに美しい映像であることは変わらない。

そしてこの後、眠っているさくらちゃんと、ミラーさくらちゃんの二人に
コスチューム運搬車内の服を片っ端から着せては撮り、脱がしては撮り、
また着せては撮り・・・
そう、それは知世ちゃんにとって、かってないほど幸福な時間。

撮れている映像も、また素晴らしい物でした。
ただ一点、本物のさくらちゃんが眠ったままだったことが惜しまれるのですが。

「今度は、さくらちゃんとミラーさくらちゃんに
 ツインさんを使っていただいて、
 四人になったさくらちゃんに同時にお着替えさせたいですわあ。」

「そうですわ!わたくし自身もツインさんに二人にしていただければ、いろんな
 角度から同時に四人のさくらちゃんのお姿をビデオに撮影できますわ!」

四人のさくらちゃんと、二人の知世ちゃんが入り乱れての6P、
もとい、着せ替え撮影会を妄想してしまう知世ちゃん。
それは、ドリームのクロウカードの時に見た知世ちゃんの夢・・・
「バトルコスチュームを着たさくらちゃんがいっぱい」に近く、
文字通り「知世ちゃんの夢」であった。

#この少し後、知世ちゃんは初詣で「望み事叶う」の大吉おみくじを引くので、
#来年にはこの夢も叶うことでしょう。(^^;

「そうそう、さくらちゃんへのクリスマスプレゼントも準備しなくては!」

いつまでも繰り返し見ていたい素晴らしい映像ですが、
クリスマスまではあとわずか。
いつでもできるビデオ編集作業を中断した知世ちゃんは、
もう深夜過ぎであるにもかかわらず作りかけの服を引っ張り出します。

ツインさんはまださくらカードになっていないはずなので、
さくらちゃんからのクリスマスプレゼントとして
「四人のさくらちゃんとお着替え」を望むのはさすがに無理ですが、
クリスマスにはさくらちゃんにぜひこの服を着てもらいたい。

この服を着たさくらちゃんがクリスマスの夜を華麗に舞うお姿を
妄想しながら、知世ちゃんはちくちくと針を進めるのでした。


おしまい。


●少し後書き

筆者初のさくらカード編長編妄想、いかがでしたでしょうか?
これの元ネタは、スルーのクロウカード封印エピソード
アニメ版妄想小説No.9『さくらのトイレの幽霊退治!?』において、
投稿していただいた佐々木さんにメールでもらったフォロー、
>スルーって全ての攻撃が「すり抜けて」しまうので戦闘時には強力かも。
に対してフォロー返しメールで書いた、
「使い方を間違えて大変なことになってしまった場合」の
「お約束な展開」(地面の中に墜落)「鬼畜な展開」(服がすり抜ける)
「さらに鬼畜な展開」(杖が拾えず元に戻れない)が元になっております。

#メールならではの鬼畜な展開だったのに・・・長編妄想にしてしまったあ!
#なんだか話数が進むほどさくらちゃんの露出度が上がってしまっている。
#ごめんよ、さくらちゃん。

さて、アニメで描写されなかった部分を妄想で補完したお話ですので、
できるだけアニメの設定に合わせて書いています。
アニメ第61話冒頭で木之本家まで戻ってきたさくらちゃんは
疲れてはいても全然日焼けしていませんので、
「さくらちゃん日焼け」エピソードは夢オチに。
また、巨大レンズと鏡をアローで破壊されたので、翌日エリオルは破壊しても
再生する手摺で攻撃することを考え付くというつながりにしています。

#厳密には、少し矛盾があると思われますが。


それにしても、さくらちゃんのアニメが終わってから
ずいぶん時間がたっており、細かい所をすっかり忘れてしまいました。
さくらちゃんの感想記事を書き、数々の長編妄想を考えてきた筆者にして、
このお話を書くためにアニメ第61話とその前後を見直す必要があったほどです。

読者も忘れていると思いましたので、登場させたカードに関して
いつさくらカードにしたのか、簡単な説明を入れてみました。
そして、苺鈴ちゃん来日と帰国がこのお話のすぐ前だったので、
さくらちゃんのバトルコスチュームを苺鈴ちゃんの式服風にしてみました。
苺鈴ちゃんの式服がどんなだったかもすっかり忘れていたのですが。(^^;


以下、おまけのお話が付けてあります。

知世ちゃんからさくらちゃんへのクリスマスプレゼントのお話。
アニメ第61話内で以下のような会話があったので、それが元になっております。

「プレゼントに乗って、さっそうとクリスマスの夜を舞うさくらちゃん。
 速く撮影の準備をしなくては。」
「も、もしかしてトナカイとかいるの?」
「おほほっ。お先に失礼しま~す。」

さくらちゃんが乗れる知世ちゃんのクリスマスプレゼントとは・・・?

(メールはここまでです)

 では、おまけのエピソードへと続きます。

Keita Ishizaki

未読、
2002/02/09 22:34:412002/02/09
To:
石崎です。

現在はNetNewsをお休み中の藤森さんによるカードキャプターさくらの
妄想小説の続きです。
アニメを題材とした二次小説(若干Hです)が好きな方のみ。

全文で約2,000行程ありますので、以下の4つの記事に分けて投稿します。
この記事は、第11話エピローグです。

・アニメ版妄想小説No.11『さくらと鏡と凸レンズ』(Aパート)
 <a44o2f$1od$1...@news01dj.so-net.ne.jp>からお読み下さい

・アニメ版妄想小説No.11『さくらと鏡と凸レンズ』(Bパート)
 <a44oif$bk8$1...@news01di.so-net.ne.jp>からお読み下さい

・アニメ版妄想小説No.11『さくらと鏡と凸レンズ』(エピローグ)
 この記事です。

(以下続けて投稿します)
・おまけエピソード 『さくらと知世のクリスマス』


それでは、藤森さんの妄想小説の続きをお楽しみ下さい。


(以下、藤森さんのメールより)

アニメ版妄想小説No.11『さくらと鏡と凸レンズ』(エピローグ)


★エピローグ その1 エリオル家の人々

奈久留ちゃんの突っ込みで険悪な雰囲気になりそうなのを感じ、
スピネルは汗をかきながら話題を変えます。

椅子から立ち上がり、奈久留ちゃんの方へとゆっくり歩み寄るエリオル。
奈久留ちゃんは脂汗を流しながら、蛇に睨まれたカエルのように動けない。

これにはピクリと反応したエリオル。
奈久留ちゃんはかわいこぶりっ子して、グーにして合わせた両手をあごに当て、
いやいやをしながらうるうるお目々で懇願しています。

「記憶を消したんですね?」
「・・・つまらないねえ。きみは。」
「あなたの作品ですから。」

そして、それから。

酔っ払ってソファーで眠りこけているスピネルの
首根っこを摘み上げる奈久留ちゃん。

奈久留ちゃんはスピネルの首根っこから、
尻尾に持ち替えてぶんぶん振り回してしまいます。

「ふ、ふみゃあ~?@@@@??」

すぽっ!

「あっ!」

ガッシャーン!・・・キラッ!



★エピローグ その2 大道寺家 深夜

丸いお月様を背景に、飛び去るさくらちゃんを撮影した後、
知世ちゃんは自分の家に戻って本日の収穫物の確認と編集作業。

知世ちゃんは自分自身が写っている映像を見ることはほとんどありませんが、
ケロちゃんが写した部分にはさくらちゃんと一緒に知世ちゃんも写っています。
それでも、知世ちゃんの目が追うのは超絶美しいさくらちゃんのお姿のみ。

「はあっ・・・すばらしい映像が撮れましたが・・・
 さすがにこれは、李君にはお見せできませんわね。」

小狼を心配させたり、鼻血の海で溺死させたりするのは知世ちゃんの本意では
ないから、結局この映像は知世ちゃんだけが見る秘蔵の品となりそうだ。

知世ちゃんの編集作業は進み、場面はさくらちゃんが
ミラーさんを押し倒すシーンとなった。

「ああっ!さくらちゃんと、ミラーさくらちゃん・・・」

知世ちゃんには一目で二人の区別がつきますが、
それでもこれがさくらちゃんが二人いるほどのウルトラスーパーデラックス
てんこもりに美しい映像であることは変わらない。

撮れている映像も、また素晴らしい物でした。
ただ一点、本物のさくらちゃんが眠ったままだったことが惜しまれるのですが。

「今度は、さくらちゃんとミラーさくらちゃんに
 ツインさんを使っていただいて、
 四人になったさくらちゃんに同時にお着替えさせたいですわあ。」

「そうですわ!わたくし自身もツインさんに二人にしていただければ、いろんな
 角度から同時に四人のさくらちゃんのお姿をビデオに撮影できますわ!」

「そうそう、さくらちゃんへのクリスマスプレゼントも準備しなくては!」

いつまでも繰り返し見ていたい素晴らしい映像ですが、
クリスマスまではあとわずか。
いつでもできるビデオ編集作業を中断した知世ちゃんは、
もう深夜過ぎであるにもかかわらず作りかけの服を引っ張り出します。

この服を着たさくらちゃんがクリスマスの夜を華麗に舞うお姿を
妄想しながら、知世ちゃんはちくちくと針を進めるのでした。


おしまい。


●少し後書き

#厳密には、少し矛盾があると思われますが。


以下、おまけのお話が付けてあります。

知世ちゃんからさくらちゃんへのクリスマスプレゼントのお話。
アニメ第61話内で以下のような会話があったので、それが元になっております。

さくらちゃんが乗れる知世ちゃんのクリスマスプレゼントとは・・・?

(メールはここまでです)

 では、おまけのエピソードへと続きます。


Keita Ishizaki

未読、
2002/02/09 22:42:242002/02/09
To:
石崎です。

現在はNetNewsをお休み中の藤森さんによるカードキャプターさくらの
妄想小説の続きです。
アニメを題材とした二次小説が好きな方のみ。

全文で約2,000行程ありますので、以下の4つの記事に分けて投稿します。
この記事は、おまけのエピソードです。

・アニメ版妄想小説No.11『さくらと鏡と凸レンズ』(Aパート)
 <a44o2f$1od$1...@news01dj.so-net.ne.jp>からお読み下さい

・アニメ版妄想小説No.11『さくらと鏡と凸レンズ』(Bパート)
 <a44oif$bk8$1...@news01di.so-net.ne.jp>からお読み下さい

・アニメ版妄想小説No.11『さくらと鏡と凸レンズ』(エピローグ)
 <a44pom$7g6$1...@news01ch.so-net.ne.jp>からお読み下さい。

・おまけエピソード 『さくらと知世のクリスマス』
 この記事です。


それでは、藤森さんの妄想小説の続きをお楽しみ下さい。


(以下、藤森さんのメールより)


●おまけエピソード 『さくらと知世のクリスマス』

空を飛んで太陽光線を集めて攻撃してくる巨大凸レンズと鏡との戦い、
破壊しても再生する動く手摺との戦いから数日後・・・今日はクリスマスイブ。

木之本家でもささやかなクリスマスパーティーとプレゼント交換が
予定されていますが、いかんせん今年のイブは平日です。
大学教授である藤隆お父さんはもちろん学校に行っていますし、
桃矢兄ちゃんは書き入れ時のケーキ屋さんで夕方からアルバイト。

二人とも夜遅くなってしまいそうなので、
クリスマスのお料理当番は必然的にさくらちゃんとなりましたが・・・

「まあ、それではクリスマスイブは夜まで時間があるのですね?」
「その日は、私は早く帰って晩ご飯作らないと・・・」
「料理はわたくしが用意いたしますから、
 ぜひわたくしの家にいらしてください。あ、ケロちゃんも一緒に。」
「で、でも・・・」
「だめですの?(うるうる)」

知世ちゃんにうるうるお目々で懇願されては、
さくらちゃんには断ることなどできません。
たとえ、行けば知世ちゃんのプレゼント攻撃とビデオ撮影攻撃が
待っていることがわかりきっていたとしても。


・・・というわけで、さくらちゃんは夜までの約束で
大道寺家のクリスマスパーティーにお呼ばれしています。
といっても、おもちゃ会社社長の園美お母さん自身が
クリスマス商戦と年末年始商戦の販売戦略会議のため家にいませんので、
知世ちゃん演出による個人パーティーなのでした。

「おう!来たで~っ!」
「こんばんわ、知世ちゃん。お招きありがとうございます。」
「いらっしゃい、さくらちゃん、ケロちゃん。
 今日はわたくしだけですので、お気軽になさってくださいな。」
「ほえ?知世ちゃんのお母さんも、メイドさんもいないの?」
「母はまだ会社ですわ。それと、ケロちゃんがいらっしゃいますので
 メイドさんには別室で待機していただいています。」
「知世ちゃんのお母さん、相変わらず忙しいんだね。」
「んなことより、ケーキや、ケーキぃ~っ!」
「はいはい。」

さくらちゃんとケロちゃんを自分の部屋に案内する知世ちゃん。
知世ちゃんの部屋はクリスマス風に飾り付けられており、
クリスマスツリーがないと思ったら窓の外の杉の木に電飾が施され、
巨大なクリスマスツリーとなっていました。
そして、部屋の中央には大きなテーブルが出されていて、
様々な料理が並んでいます。

「こ、こんなに食べられないよう!
 それに、この後私の家でもパーティーがあるのに・・・」
「余ったお料理は全てお持ち帰りで、
 さくらちゃんのお家のパーティに出せば大丈夫ですわ。」
「わいがおるんやから、大丈夫や!」

どんと胸を叩くケロちゃんを見て呆れ顔のさくらちゃん。
いつも思うのだが、どう見てもケロちゃんは自分自身の体積よりも
たくさん食べている。いったい体のどこに入るのだろう?

「えと、知世ちゃん、これ、クリスマスプレゼント・・・」
「まあ!さくらちゃんに来ていただいただけで充分ですのに!」
「ちょっと時間が足りなくて、簡単な物になっちゃった。」
「さくらちゃんからいただける物でしたら、何でもわたくしの宝物ですわ。」
「・・・(汗)」

さっそく料理を平らげ始めたケロちゃんをよそに、
おずおずとさくらちゃんが差し出したのは、
一応リボンが付いている小さな紙袋に入ったプレゼント。
知世ちゃんが感激しながら開けて見ると、一見してさくらちゃんの
手作りとわかる、ハンカチともスカーフともつかないようなレース付の布。
それに、簡単な刺繍と知世ちゃんのイニシャルが入っていました。

その大きさと手触りから、これはスカーフだとわかった知世ちゃんは、
さっそく自分の首に巻いてみます。

「ありがとうございます!大切にいたしますわ!」
「もっと時間があれば、毛糸でマフラーを編んでみたかったんだけど・・・」

これをスカーフだと判断したものの、
少し自信がなかった知世ちゃんもさくらちゃんの様子を見て一安心。
知世ちゃんの手にかかれば、どんなスカーフでも襟巻きでも美しく着こなす
自信がありますから、少々つたないとはいえさくらちゃん手作りの品は
本当に嬉しいものだったのです。

「わたくしからのプレゼントは、帰る時のお楽しみということで・・・」

コンコン!

「あら?どなたかしら?
 メイドさんには呼ぶまで来ないように言ってありますのに。」

いきなりドアがノックされたため、ケロちゃんは口一杯にほうばった料理を
慌てて呑み込んで、テーブルの上でぬいぐるみのふりをします。
それを確認して知世ちゃんがドアを開けると、
そこには園美お母さんが立っていたのでした。

「ああっ!さくらちゃ~ん!いらっしゃ~い!」
「ほえ~っ!」

知世ちゃんの部屋の中に走り込んで、
いきなりさくらちゃんに抱き付いてしまう園美お母さん。

「お、お母様、今日は遅くなるっておっしゃっていたのでは・・・?」
「だってぇ~。さくらちゃんが来るって聞いて、
 いても立ってもいられなかったんだもの。」

園美お母さんはさくらちゃんのほっぺたに
自分のほっぺたをすりすりしながら、苦しい言い訳をします。

「だから、会議を途中で抜け出して来ちゃった。(てへ。)」
「お母様・・・(ふう。)」

片目をつぶって舌を出した母の姿に溜め息をつく知世ちゃん。
結局、自分の娘のためよりもさくらちゃんのために来てくれた母が嬉しいのだ。
自分でもおかしいとは思うが、嫉妬の感情はさくらちゃんに
ほっぺたすりすりしている母がうらやましいという程度にしか感じない。

(うぐぐ・・・)
「?」

知世ちゃんがふとテーブルの上を見ると、どうやら慌てて呑み込んだ料理を
喉に詰まらせたらしいケロちゃんが目を白黒させながら脂汗をかいている。
「動くぬいぐるみ」程度なら大道寺TOYSでも扱っているから
ごまかしようがあるが、さすがに「汗をかくぬいぐるみ」はごまかせない。

「わ、わたくしは次の料理の準備をしてまいりますわね。」

さくらちゃんに合図をしてから、
さりげなくケロちゃんを持って部屋を出て行く知世ちゃん。
知世ちゃんの演技も、かってケロちゃん曰く「アカデミー賞もん」の
演技からさらに数段パワーアップしており、園美お母さんに
全然気付かれずにケロちゃんを部屋から連れ出すことに成功したのでした。


*三つ子の魂

「そうそう!さくらちゃんへのプレゼント、いっぱい持ってきたのよ!」

思いっきり抱き締められたさくらちゃんがのぼせた頃、
ようやくさくらちゃんを開放して部屋の入口に放り出していた
プレゼントの袋を持ってくる園美お母さん。
社長権限で会社から開発中の物まで持ち出してきたのです。

「さくらちゃん、ゲームが好きだって知世から聞いたから、私の会社から
 この冬発売の最新ゲーム機とゲームソフトを全部持ってきたわ。」
「ほ、ほえ~っ!こ、こんなに・・・」
「ほんとは、私の会社のおもちゃを全部あげたいくらいなんだけど・・・」
「と、とんでもないです!」
「さすがに持ち切れなかったから。ゲームなら、あんまりかさばらないし。」
「あ、ありがとうございます・・・」(・・・ケロちゃんが喜びそう。)

大きな袋の口を開けて覗き込み、嬉しそうな顔をしているさくらちゃんを見て
にこにこしている園美お母さん。

「喜んでもらえて嬉しいわ。うちの知世もねえ・・・」
「ほえ?」
「知世も、小さい頃は私が会社から持ってきた着せ替え人形や
 ぬいぐるみをとっても喜んでくれたのに・・・」

園美お母さんは、知世ちゃんがいないので、
少しさくらちゃんに知世ちゃんのぐちをこぼしてしまいます。

「いつのまにか、人形の服を自分で作ったり、
 ぬいぐるみを自分で作るようになってしまって。」
「・・・」
「せっかく私がおもちゃ会社にいるのに、自分の娘におもちゃや
 お人形じゃなくて、手芸用品だとかミシンだとかをねだられるのよ?
 ぜ~んぜん、はりあいがないじゃないっ!」
「・・・そ、そうですね。」

(知世ちゃんって、ちっちゃな頃からお洋服を作ったりしてたんだ・・・)

三才くらいの知世ちゃんが、ちくちくとたどたどしい手つきで
お人形の服を縫っているシーンを妄想するさくらちゃん。
自分で作った服をお人形に着せてはクレヨンで絵に描き、
また着せ替えては絵に描き移しているちっちゃな知世ちゃんの姿が
容易に想像できたさくらちゃんは思わずくすくす笑ってしまいます。

「今では、さくらちゃんが着る服を作っているんですって?」
「え、あ、はい。」
「あの子がお人形に作ってあげてた服って、
 すんごい派手な服が多かったけど・・・
 さくらちゃん、あの子が作る服が気に入らなければ、
 無理に着なくてもいいのよ?」
「いえ!知世ちゃんの作る服、とってもかわいいし、ステキです!
 私、知世ちゃんの作る服が大好きです!」
「そう・・・なら、いいんだけど。」

思わず知世ちゃんを弁護するさくらちゃん。
知世ちゃんの作るバトルコスチュームは派手だが、かわいい服であるのは
間違いないし、さくらちゃんが知世ちゃんの作る服が好きなのも確かなことだ。
もちろん、着るのは少し恥ずかしいのだが・・・

「私も、こうしておもちゃを『作る』仕事をしてるわけだし、
 知世も『作る』のが好きなのは、やっぱり血筋なのかしらね。」
「お母さんの、血筋・・・」

そう言えば、さくらちゃんのお母さんはモデルの仕事をしていた。
血筋から言えば、さくらちゃんも『いろんな服を着る』のと、
『撮ってもらう』のが好きということになりそうだ。
さくらちゃんが恥ずかしいと思いながらも知世ちゃんの作った服を
着るのを断れなかったり、ビデオに撮られるのを断れないのも、
本当はそれが好きだからかもしれない。

・・・こんな話をしている内に、知世ちゃんのプレゼントが
超ど派手な服なのかもしれないと気になり出したさくらちゃんは、
そわそわと落ち着かなくなってしまうのでした。


*ケロちゃん専用クリスマスケーキ

部屋から外に出て、ケロちゃんの背中をポンポンと叩いてやる知世ちゃん。
ようやくケロちゃんは喉に詰まった料理を呑み込むことができるのでした。

「う・・・うぐっ!ぷはあ~っ!知世、助かったで。」
「よかったですわ。ついでに、お約束のケロちゃん専用
 クリスマスケーキをお出ししますわね。」
「それや!どうもなんか足らへんと思とったら、ケーキがなかったんや!」

喉に詰まらせるほどさんざん料理を食べ散らかしておいて、
まだ食べる気満々のケロちゃん。
元々、今日来たのは先日の巨大凸レンズと鏡の事件の時に約束した、
「ケロちゃん用の大きなクリスマスケーキ」を食べるためだったのですから。

「それでは、オーブンで暖めなおしてまいりますので、
 少々こちらのお部屋でお待ち下さい。」
「へ?お、オーブン?」

スポンジケーキの土台ならオーブンで焼くだろうが、
完成したケーキをオーブンで暖めなおす?
知世ちゃんが用意したケーキに一抹の不安を覚えたケロちゃんを
自分の別室に押し込んで、知世ちゃんはキッチンへと向かうのでした。

「お待たせいたしました!」

ケロちゃんが不安な気持ちのまま待っていると、ドアを開けて入ってきたのは
ドーム状の金属の蓋がお皿の上に乗ったワゴンを押す知世ちゃん。
半球状の巨大な金属のボールのようなものを知世ちゃんが持ち上げると、
中から湯気を立てた巨大な物体が現れます。

「こ、こりゃ・・・」
「おほほっ。」

それは、直径三十センチ級の三段重ね巨大お好み焼き。
段と段の間には生クリームの代わりに焼きそばが挟まれ、
一番上にはたこ焼きが丸くトッピングされていて、
マヨネーズが生クリーム代わりに塗られている。
そして、真ん中にはソースで「Merry Christmas to KERO!」と書いてあった。

これを見て、だらだらとよだれを垂らすケロちゃん。
しかし、知世ちゃんにちょっと文句をつけてみます。

「・・・ものごっつうおいしそうやしとってもうれしいんやけどな、知世・・・
 クリスマスケーキっちゅうのとはちょっとイメージがかけ離れとらんか?」
「お気に召しませんか?」
「いや、気に入らんっちゅうわけやないんやけどな・・・」
「もちろん、生クリームとイチゴのケーキもありますわ。
 これを食べ終えられたら、デザートとしてそちらもお食べ下さい。」
「そ、そやったんか!ほなら、遠慮なく・・・」
「それで、またケロちゃんにお願いがあるのですが・・・」

舌なめずりをしながらナイフとフォークを手に、巨大お好み焼きケーキに
いどもうとしているケロちゃんになにやら耳打ちする知世ちゃん。
この部屋にはケロちゃんと知世ちゃんしかいないので、
ヒソヒソ話にする必要はないのですが、これは気分の問題です。

(・・・ひそひそ・・・)
「なんや、そんなことなんか!まかせとかんか~い!」
「お願いしますね。それでは、わたくしは準備をしてまいりますので。」
「いっただっきま~す!」

こうして、部屋を出て行く知世ちゃんをよそに、
ケロちゃんはむさぼるように食べ始めるのでした。


*知世のクリスマスプレゼント

「知世ちゃん、遅いな・・・」
「ほんと。何しているのかしら?」

園美お母さんと二人で、料理をつまみながら
知世ちゃんを待っているさくらちゃん。
知世ちゃんが用意しているプレゼントがどんなものなのか
気になるさくらちゃんは、さっきからもじもじ、そわそわ。
しかし、園美お母さんの方は落ちついて料理を食べながら
さくらちゃんに熱い視線を送っています。

(ああ、さくらちゃんと二人っきり・・・
 知世、もう少し遅くてなってもいいわよ。)

ぷるぷるぷる・・・(<PHS着信音)

「んもう!せっかくさくらちゃんと二人っきりなのに!」

もちろん、その電話は社長に重要な会議を抜け出されてしまった会社から。
しばらくけんか腰で相手とやり取りしていた園美お母さんですが、
溜め息をつくと電話を切ります。

「はあ・・・私がいないと、なんにも決められないんだから!
 まったく、うちの会社の男共ときたら・・・」

コンコン!ギィ~ッ。

「お待たせいたしました。」

ちょうどその時、大きなクリスマスケーキを乗せたワゴンを押して、
知世ちゃんが入ってきます。
まるでウエディングケーキのように大きいイチゴと生クリームのケーキですが、
なぜか半分しかありません。

「ごめんなさいね、さくらちゃん。
 私は会社に戻らなくちゃいけなくなっちゃったの。
 でも、ゆっくりして行ってね。知世、さくらちゃんのことをお願い。」
「はい。おまかせください。」

会社の重役に泣き付かれたらしい園美さんが名残を惜しみながら出て行くと、
今度は知世ちゃんがさくらちゃんの相手をします。
知世ちゃんが大きなケーキをさくらちゃんに切り分けようとすると、
もう時間が時間なのでさくらちゃんは首を横に振って断るのでした。

「私、そろそろ帰らないといけないんだけど・・・」
「まあ!もうそんなお時間ですの?おなごりおしいですわあ。
 それでは、余った料理は全部お持ち帰り下さいな。」
「で、でも、こんなに持って帰れないよう。」
「それはおまかせください!そして、いよいよわたくしのプレゼントを
 さくらちゃんに着ていただきたいのですが・・・」
「や、やっぱり、服なの?」
「おほほっ。さあさあさあ。こちらですわ。」

内線電話で呼び出されたメイドさんが手早く料理やケーキを箱に詰めている間に、
知世ちゃんはさくらちゃんの手を引き、隣の部屋へと連れ込みます。

「じゃ~ん!これが、本日のメインですわ!」
「こ、これって・・・(汗)」

知世ちゃんがさくらちゃんに差し出したのは、
真っ赤な布地に白のアクセントがある服。
それは、まさしくサンタさんの衣装そのものだったのです。

まさかトナカイに乗れとは言われないでしょうが、
これを着て帰るのはさすがに恥ずかしい。
それでも、目をキラキラさせている知世ちゃんを見ると、
とても断れそうもないさくらちゃんなのでした。

(お兄ちゃんも、サンタさんの格好でケーキを売るって言ってたっけ・・・)

クリスマスイブの今日なら、サンタクロースの格好をしていても
それほど恥ずかしくはないかもしれない。
とうとう観念したさくらちゃんは、仕方なくこの衣装に着替えるのでした。

「ああっ!やっぱり、さくらちゃんに超絶お似合いですわあ!」

さっそくサンタクロース風さくらちゃんを撮影している知世ちゃん。
さくらちゃんのお姿は本物のサンタさんとは異なり、
某「マンガ本付フィギュア レイ&アスカ」に近く、
もちろんミニスカートである。
恥ずかしさで赤くなったさくらちゃんが元いた部屋に戻ると、
たくさん残っていたお料理はもうどこかへ片付けられていました。

「こちらですわ。さくらちゃん。」
「ほえ?」

知世ちゃんが次にさくらちゃんを案内したのは、大道寺邸の中庭。
そこには大きなそりが用意されていて、その上には大きな白い袋と
リボンのかけられた大きな箱がいくつも乗せられていました。

「遅かったやないか!さくら!」
「ほえ~っ!け・・・ケロちゃん?」

そのそりを引いているのはトナカイならぬトナカイのコスプレをした、
真の姿に戻ったケロちゃん。
頭に大きな2本の角を付け、顔には丸い赤鼻、首には鈴、
背中には羽を出す穴の開いた赤い鞍を乗せています。

ケロちゃんの口の回りやひげにはソースにマヨネーズ、青海苔に
生クリームまでくっついていて、何を食べていたのかすぐわかる。
どうやら、さすがのケロちゃんも小さな仮の姿のままでは
巨大なお好み焼きケーキとクリスマスケーキを持て余したようで、
真の姿に戻ってぱくついていたらしい。

「そりの上に乗っている荷物は、さくらちゃんへのプレゼントとお料理、
 それに先程のケーキですわ。」
「で、でも、このそり、このままケロちゃんに引いてもらって帰ったら、
 大騒ぎになっちゃうよう!」
「心配あらへん!フロートのカードを使うんや!」
「ほえ?」
「さくらがフロートでそりを浮かせたったら、わいがそのまま空を飛んで
 引っ張ってったるさかい、誰にも見られることはないで。」
「で、でも・・・(汗)」
「だめですの?(うるうる)」

さくらちゃんから知世ちゃんへのプレゼントが簡単な物だったこともあり、
いつも山ほどプレゼントをくれる知世ちゃんに悪いと思っていた
さくらちゃんは、知世ちゃんのお願いを断れません。

「・・・う、うん、やってみるね。」
「ありがとうございます!それではさっそく・・・」

さっそくビデオ撮影を始める知世ちゃんの前で、
星の鍵とフロートのさくらカードを取り出すさくらちゃん。
フロートは一ヶ月ほど前に小狼とエレベーターに閉じ込められた時、
クロウカードからさくらカードへと変換されています。

「星の力を秘めし鍵よ、真の姿を我の前に示せ。」

「このそりを浮かび上がらせよ!フロート!」

さくらちゃんはそりに乗り込み、ミニスカサンタ姿で星の鍵を杖に変換し、
フロートのさくらカードを使うのでした。

「ああっ!サンタさんの衣装を着て、そりに乗って
 クリスマスの夜を舞うさくらちゃん!超絶かわいいですわあ!」
「はうぅ~。」

ふわりと宙に浮かび上がったそりの上から、お別れのあいさつをして手を振る
さくらちゃんと、左手でビデオ撮影しながら右手で手を振り返す知世ちゃん。

「それじゃ、知世ちゃん、さようなら。」
「おやすみなさい、さくらちゃん。」
「あ・・・」
「・・・雪ですわ・・・」

二人の間に舞い落ちる白い雪。
さくらちゃんが雰囲気出しにスノウを使ったわけではないので、
これは自然の雪である。

「今年はホワイトクリスマスになりそうですわね・・・」
「うん・・・」
「行くで!さくら!しっかりつかまっとるんやでぇ!」
「ほええ~っ!」

シャンシャンシャン・・・

大きく翼を広げて飛び上がり、宙に浮かぶそりを引っ張るケロちゃん。
しがみつくさくらちゃんを乗せたまま急角度で高度を上げたそりは、
鈴の音も高らかに、知世ちゃんへのサービスで大道寺家の上空を
三回ほど回ってから木之本家へと進路をとる。

降りしきる雪の中、大道寺家のサーチライトでライトアップされたその姿を、
知世ちゃんのビデオカメラはいつまでも追い続けるのでした。

「ああっ!最高のクリスマスプレゼントですわ~!」


*エピローグ 木之本家クリスマスパーティー

「せっかくバイト先からケーキ持って来てやったのに・・・
 なんだよ、このでかいケーキは。」

バイト先での売り子のサンタさんの格好のまま帰って来た桃矢兄ちゃん。
忙しく料理を並べていたさくらちゃんも着替える暇がなく、
まだサンタさんの格好をしていました。
桃矢兄ちゃんは自分の格好が格好なので、かわいいと思いながらも
さくらちゃんの着ている服には突っ込まず、ケーキの方に突っ込みを入れます。

「しかも、なんで半分しかないんだ?そうか、怪獣がつまみ食いしたんだな。」
「さくら、怪獣じゃないもん!」
「つまみ食いしたことには反論はないわけだ。
 こんなでかいケーキを半分も食っちまうとは、やっぱり怪獣だな。」
「ち、ちがうもんちがうもん!お兄ちゃんの意地悪~っ!」

「誰が」ケーキを半分食べたのか薄々気付いていながら、
相変わらずさくらちゃんをいじめてしまう桃矢兄ちゃんであった。


おしまい。


#ああっ!おまけのつもりが、また異様に長くなってしまった。
#途中で園美お母さんなんか登場させたりするから・・・

それでは、これにて。

(メールはここまでです)

 藤森さんからの妄想はひとまずこれまでです。
 さて、感想を書かないと。

#…といって、実は夏の感想もまだでした。

 では、今後とも宜しくお願いします>藤森さん。

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