報告内容をインターネットで調べたら以下に出ていました。
http://www.kek.jp/press/2003/belle3.html
http://belle.kek.jp
学会発表されたOHPのpdf(約1MB)は以下です。
http://belle.kek.jp/press/13Aug03/browder_s05.pdf
(なんで浮世絵が出て来るんだろう?)
ニュートリノの質量発見に続いて、またまた日本の素粒子
実験設備から新しい知見が広がりそうですね。
日本の実験素粒子物理屋さんはけっこう効率的な税金の使い方を
していることになるのかな??
私には詳しいことはわかりませんが、
『B中間子が崩壊する際、従来のカビボ-小林-益川行列を
3世代クオークから構成されいるとして説明されるCP対称性の
破れをペンギンダイアグラムで説明した時、sin2φ1(Raw
Asymmetry・・カビボ-小林-益川行列の位相δ相当??)が
従来の標準理論と一致する実験値(+0.731+-0.056)から大きく
異なる実験値(-0.96+-0.50)となる現象が発見された。
これは現在のクオーク・レプトン3世代構成の標準理論の範疇では
確率0.1%以下でしか導けない値なので、現在のクオーク・レプトン
3世代で構成される粒子以外の粒子が存在する可能性が大きい。』
と理解しました。(間違っていたら修正願います。)
これにより超対称性粒子やもっと未知の粒子が存在する可能性が
あるとの事ですが、ここで言う超対称性粒子やもっと未知の粒子とは
第4世代のクオーク・レプトンということになるのでしょうか?
それとも全然別の超対称性粒子??
いずれにしても21世紀になり、物理の世界も新しいフェーズに
着実に入っているのが感じられますね。
きむら@茅ヶ崎
> これにより超対称性粒子やもっと未知の粒子が存在する可能性が
> あるとの事ですが、ここで言う超対称性粒子やもっと未知の粒子とは
> 第4世代のクオーク・レプトンということになるのでしょうか?
> それとも全然別の超対称性粒子??
この分野の専門ではありませんが、
第4世代のクオーク・レプトンではなく、
フォティーノ、ニュートラリーノ
などの超対称性粒子の存在を示唆しているのではないでしょうか?
# クオーク・レプトンの超対称性パートナーかも知れませんが。
> ニュートリノの質量発見に続いて、またまた日本の素粒子
> 実験設備から新しい知見が広がりそうですね。
> 日本の実験素粒子物理屋さんはけっこう効率的な税金の使い方を
> していることになるのかな??
前提となった
「小林・益川理論」
も大事ではないですかね?
# 理論は税金をそれほど使ったわけではないが。
あ、それから、人類の知性の水平線広げることに意義を感じる人にとってのみ、
> 日本の実験素粒子物理屋さんはけっこう効率的な税金の使い方を
> していることになるのかな??
という感想は意味を持ちますね。
--
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Kiyohide NOMURA
Department of Physics,
Kyushu University,
812-8581 Fukuoka
JAPAN
e-mail:kno...@stat.phys.kyushu-u.ac.jp
http://maya.phys.kyushu-u.ac.jp/
TEL,FAX:+81-92-642-2566
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素粒子論を専攻してましたが正直言ってここらへんの解析は
細かくてわかりません。どんなダイアグラムからの寄与を
見ているのかはおよそわかりますが、詳しい解析については
ノーテーションやら何やらいろいろ決め事があって実験屋さん
じゃないと良くわかりませんね。
要は最近になってbクォークの絡んだ精密実験もできるようになってきて
CP対称性を破る過程としてペンギンダイアグラムからの寄与を見たら
そこを飛んでる仮想粒子に標準理論で出てくるものだけを飛ばしていたら
理論と合わないって話なんだと理解してます。
K中間子の崩壊に関する同様なペンギンダイアグラムによるCP非保存
過程では標準理論と矛盾することは見つかっていないのでしょうけど
B中間子(bクォークが絡んでます)の崩壊過程では理論と合わない
ところが見えてきたってことなんでしょうね。
> > ニュートリノの質量発見に続いて、またまた日本の素粒子
> > 実験設備から新しい知見が広がりそうですね。
> > 日本の実験素粒子物理屋さんはけっこう効率的な税金の使い方を
> > していることになるのかな??
>
> 前提となった
> 「小林・益川理論」
> も大事ではないですかね?
> # 理論は税金をそれほど使ったわけではないが。
もし、超対称性粒子の発見につながったのであれば確実にノーベル賞です。
ニュートリノに質量があったことの発見に対してノーベル賞はほぼ約束されている
と思ってますから、今回ので2つは堅いのかなぁ?
まぁ、さらなる解析が必要なのかもしれませんが・・・
> > > ニュートリノの質量発見に続いて、またまた日本の素粒子
> > > 実験設備から新しい知見が広がりそうですね。
> > > 日本の実験素粒子物理屋さんはけっこう効率的な税金の使い方を
> > > していることになるのかな??
> >
> > 前提となった
> > 「小林・益川理論」
> > も大事ではないですかね?
> > # 理論は税金をそれほど使ったわけではないが。
>
> もし、超対称性粒子の発見につながったのであれば確実にノーベル賞です。
>
> ニュートリノに質量があったことの発見に対してノーベル賞はほぼ約束されている
> と思ってますから、今回ので2つは堅いのかなぁ?
>
> まぁ、さらなる解析が必要なのかもしれませんが・・・
数年前にミューオンのアノマリー解析で
「標準理論の破れ」
と騒がれたことあったけど、実はばかばかしいミスだったことありますからね。
それはそうと、
> もし、超対称性粒子の発見につながったのであれば確実にノーベル賞です。
だけじゃなく、21世紀の高エネルギー実験の幕を開いたともいえるんじゃないかな。
CERN を先取りして超対称性粒子の発見になるわけだから。
超対称性といっても複数可能性あるようなので、次はそのどれが正しいかとい
うことか。
それから、
> と思ってますから、今回ので2つは堅いのかなぁ?
というのは、日本の高エネルギー実験(ニュートリノは変だけど)に関してで
すよね。
素粒子理論の
小林・益川理論
それから
南部 陽一郎
の見込みは?
詳しく見てないのでよくわかりませんが、今回の解析では超対称性粒子と
同定することは不可能だと思います。裸のSUSY粒子が発見されたわけで
なく、多分ペンギンダイアグラムの内線を飛んでる仮想粒子にSUSY粒子が
飛んでたらCP-violationの混合角が説明できるのでは?って話でしょうから。
まぁ、精々傍証ってところでしょうね。
> それから、
> > と思ってますから、今回ので2つは堅いのかなぁ?
> というのは、日本の高エネルギー実験(ニュートリノは変だけど)に関してで
> すよね。
>
> 素粒子理論の
> 小林・益川理論
> それから
> 南部 陽一郎
> の見込みは?
「対称性の自発的破れ」の考え方は素粒子に限らず多くの分野に影響を与えた
わけですから、南部 陽一郎さんにはノーベル賞を与えるべきだと思いますね。
よく言われている小林さんと益川さんは、こんなに時間が経ってるのにいまだに
取れないところを見ると賞味期限が過ぎちゃってるのかもね。それか海外の人で
根強く反対している人がいるのかも?
ちなみに、小林さんは私が大学院時代の夏の学校のとき来られてて、食事のとき
私のとなりに座られたんですが、私は全然気付かずに単なる事務のおっちゃんかと
思ってたら小林さんだったんで驚いた思い出があります。着てたのが何か事務服
みたいな地味な感じだったんでそれこそノーベル賞候補の人だという印象は全然
ありませんでしたね。
逆に、いかにも教授みたいな風貌や格好をしている人が単なる講師だったり塾の
先生だったりするのを見ると、「人は見かけに拠らぬ者」ってことを思い知らされます。
私の経験では本当にすごい人って格好じゃないんだなぁって印象です。
確かにそうかもしれませんね。
ひょっとすると現存の粒子構成でも別のペンギンダイアグラム相当が書けて
その物理過程で今回の実験結果の混合角が説明できて、その過程を見落としていた
なんていう結論も考えられないこともないですよね。
でも、現存のクオーク・レプトン構成で説明できる可能性が0.1%以下と
言うのですから、ある程度調べていると思うので、新しい物理過程が含まれて
いる可能性の方がずっと大きいと考えているのだと思います。
現在の実験技術的には、ペンギンダイアグラムの内線を飛んでる粒子(仮想粒子
ですか?)の生成・崩壊過程を直接観測できないでしょうから、これからできる
ことは理論屋さんの出番になるのではないでしょうか? 理論屋さんが理路整然に
説明してくれて、みんなが信じれるレベルで実験結果と一致する数値が出せれば
傍証から確証になれるのかな??
もちろん、実験的にもまだ得られたデータ量が少ないようですし、もっと多く
データを取ることと、別の実験設備での追証も必要だと思います。もっとも、
将来観測技術が上がり、ペンギンダイアグラムの内線を飛んでる粒子を
直接観測できれば問題なく確証になるのでしょうけれども。
直接観測は将来的にも理論的には不可能なんでしょうか?それとも実験技術レベル
が上がれば可能なんでしょうか?
> >
> > 素粒子理論の
> > 小林・益川理論
> > それから
> > 南部 陽一郎
> > の見込みは?
>
> 「対称性の自発的破れ」の考え方は素粒子に限らず多くの分野に影響を与えた
> わけですから、南部 陽一郎さんにはノーベル賞を与えるべきだと思いますね。
>
> よく言われている小林さんと益川さんは、こんなに時間が経ってるのにいまだに
> 取れないところを見ると賞味期限が過ぎちゃってるのかもね。それか海外の人で
> 根強く反対している人がいるのかも?
2000年7月の2年前に『KEKで90%以上の確率でCP対称性の破れを示唆する
実験結果を得た。』という新聞記事に中で、次の小林教授の言葉が載っていました。
新聞記事に書かれている内容を全文下記に掲載します。
『この実験の重要な目標は、素粒子物理学の標準理論では説明できない現象が
起きているかどうかを明らかにすることだ。まだ統計的にははっきりしていないが、
標準理論に矛盾していない結果である限り、理論の研究者としては折り込み済み
だった。自分達の理論の実証につながって嬉しい反面、理論の研究者としては
何か新しいことを、という気持ちもあった。この調子で行けば近いうちに確かめら
れる、と思われるので、注目していきたい。』
(この時自分の理論の検証がされた話題なのに、良くわからない先の事を中心に
話していることに違和感をもった記憶が有ります。)
この発言を見るとすでに、今回の新発見もすでに視野に入れて実験を進めていた
ことがわかります。自分の理論が正しいことは、Bファクトリーよる直接的な実験結果
を待つまでもなく、標準理論が精度よく検証されていることから、自分的には明らか
だったのだと推測します。
そう考えると理論と実験面から『CP対称性の破れ』を解き明かしたことはノーベル賞に
値すると大いに思いますが、御本人的にはすでに標準理論を超える新理論の実験的な
足掛かりを得たいという構想をもってBファクトリーを建設したことになるのではない
でしょうか?
きっと自分の理論の検証だけに膨大な費用をかけているんではないという気持ちと
次期戦略的政策があったんでしょうね?!
きむら@茅ヶ崎
『CP対称性の破れ』のメカニズムは小林・増川理論における混合角による説明以外にも
いくつかありますよね?より高次のダイナミクスによるものなのか?それとも標準理論の
枠内で説明できるものなのか?どっちかはっきりさせることができる実験なのかわかりません。
『CP対称性の破れ』のメカニズムが小林・増川理論における混合角による説明以外にあるのは
知りませんでした。ゲージ対称性、その対称性の自発的崩壊/ヒッグス機構と合わせて、
素粒子の世代構造とその混合を表現する小林・益川理論は 標準理論の骨格になっていると
思っていました。
もっと高次の超標準理論(SUSY-GUTs)等少しずつ情報を集めて行きたいと思います。
ありがとうございました。
きむら@茅ヶ崎
「より高次の」というのは標準理論(模型?)(Standard Model)を超える理論のことです。
これらは宇宙のバリオン生成との関連でしばしば引き合いに出されます。
B-LのU(1)対称性をもった理論とか、もちろん最小超対称性標準モデル(MSSM)とか
標準モデルを超えたモデルから説明するという方向性もあります。あるいは非平衡過程の
ダイナミクスが絡んでいるとか・・・
直接関係はありませんが、QCDにおいてはその量子効果においてCP対称性を破るアノマリが
あるのですが、それが何故か強く制限されていて何故そうなのかよくわかっていない現象が
あります。いわゆるStrong CP Problemと呼ばれているものです。それを解決する方法として
PecceiとQuinnはある種のU(1)対称性を理論に導入することでその破れの効果として説明
しようというものがあります。これなんかも「より高次の」ダイナミクスの結果としてCP問題を
解決しようとする方向性になってます。
つまり、標準モデルによってすべてが説明つくという立場で説明しようとすれば、小林-増川の
CPフェイズにおいて無理が生じるということなんだろうと思いますから、より高次な理論が
背後にあるだろうことは容易に予想がつきます。それがどんなものかは現段階ではわかりま
せんが、すでに多くのモデルは出ています。
わたしが大学院の時に研究してた内容に絡みますが、実はそれらの多くは大統一理論の
エネルギースケールと標準模型の対称性が破れるエネルギースケールとの間に何らか
対称性を破る中間スケールが存在すると、うまく説明がついてしまうという話があります。
そのような理論では太陽ニュートリノの問題も強い相互作用におけるCP問題も暗黒物質
の問題もバリオン生成の問題もニュートリノの質量の問題も一気に解決してしまう可能性
を持っています。さらには重力をも含めた超統一理論への道筋にも合致するものでもあります。
そのようなモデルとしてSO(10)モデルが考えられていてこれらはとっても面白い性質を
たくさん有しています。Pecci-Quinn対称性からフェルミオンの階層性の問題へアプローチ
したものもあって大変興味深いものになってます。
とにかくSO(10)モデルとその対称性の破れの系列は豊かなダイナミクスを提供していて
興味深いものになってます。柳田さんのシーソーメカニズムにしてもSO(10)モデルから
するとニュートリノの質量問題に対して極めて自然な説明を与えてくれます。ここらへんも
はっきりとわかればノーベル賞ものですね。
# ただ、中間スケールとはいえ10^12GEVにも上る大きなスケールなので
# 実験的には不可能かもしれませんが・・・