圭子(仮名)
「はい、どちらさまですか?」
玄関の向こうには複数の男性が居るようで、ものものしい感じがした。
もしかして、主人を良く思っていない人達が本当に来ちゃったのかしら
と、圭子は思ったが「それはそれで楽しいかも」なんて考えちゃって、
笑みがこぼれてしまった。
玄関を開けると、この暑いのに全員ダークスーツを着て、その中のサン
グラスをかけた先頭の男が、丁寧な物腰で
男
「ご主人はご在宅ですか?」
圭子
「はい、少々お待ち下さい」
玄関からリヴィングに抜ける廊下で、圭子は夫を呼んだ。
子供と遊んでいた夫は「バカですか?」とも云わず立ち上がって出てきた。
そのままスパゲッティーニの茹で時間を気にしてキッチンに戻ろうとする
圭子の背後から、先ほどのサングラスの男が大声をあげるのが聞こえた。
男
「日下部陽一(仮名)だな。
業務上過失話し の容疑で逮捕する」
おどろいて振り向くと、すでに夫は屈強な男達に両脇を固められて、
困ったような顔をしてこちらを見ている。
この騒ぎに驚いた娘の香菜子(仮名)がリヴィングから出てくるのを、
圭子は抱きかかえてとめた。
圭子
「あ、あなた……」
陽一
「大丈夫。きっとなにかの間違いだ。
心配しなくてもいい。それよりスパゲッティーニ茹ですぎんなよ。
しばらくの間、香菜子をたのむ」
照れたような笑みを浮かべながら、そういい残す夫の語尾からは
「 ;) 」が抜けていた。
いつのまにか家の中にあがり込んでいた刑事が「作ってわかる C
プログラミング」の束を鷲づかみにして出て行く姿を見送りながら、
圭子はスパゲッティーニを茹でている鍋に向かうのであった。
--
/_/Gus_/_/
asp...@newcomers.ne.jp
/_/_/