下記 2003/6号 p.41からの引用です。
<<
Nに・に関する逆元を付け加えると、非負の有理数の全体Q+になる。・に関し
ては可換群、+に関しては単位的可換半群、だが、可換環ではない。分配律が成
り立たないからだ。可換群になっている演算の方で分配しないといけないので、
x + (yz) = (x + y)・(x + z)
が要求される。が、これは成り立たない。
>>
分配律は可換群になっている演算の方で分配する、というのは定理に
含まれているのでしょうか?
(それとも自明??)
調べてもそれらしい情報が見つけられませんでした。
--
Shinya Hayakawa <tet...@tokyoprogrammer.com>
In article <2003052423072...@tokyoprogrammer.com> tet...@tokyoprogrammer.com writes:
>今月号の数セミを読んでいて、とても気になった内容がありました。
>下記 2003/6号 p.41からの引用です。
><<
> Nに・に関する逆元を付け加えると、非負の有理数の全体Q+になる。・に関し
>ては可換群、+に関しては単位的可換半群、だが、可換環ではない。分配律が成
>り立たないからだ。可換群になっている演算の方で分配しないといけないので、
> x + (yz) = (x + y)・(x + z)
>が要求される。が、これは成り立たない。
>>>
>分配律は可換群になっている演算の方で分配する、というのは定理に
>含まれているのでしょうか?
「定理」じゃなくて「定義」の問題でしょ。
単に「環の定義」を満たしていないだけの話。
引用元の文章に問題があるとしたら、
「分配律が成り立たないから」
「可換群になっている演算の方で分配しないといけない」
という説明の仕方でしょうね。
一般に知られている加法や乗法から出発して「Q+」を構成しているんだから、
x・(y + z) = (x・y) + (x・z)
という普通の分配側が成立しているという立場で説明するほうが解りやすい。
つまり、
「分配する方の演算が可換群になっていないといけない」
のに、それを満たしていないから「環ではない」と説明する方が
優れた説明だと言えます。
戸田 孝@滋賀県立琵琶湖博物館
to...@lbm.go.jp
On Sun, 25 May 2003 04:21:27 +0000 (UTC)
to...@lbm.go.jp wrote:
> >分配律は可換群になっている演算の方で分配する、というのは定理に
> >含まれているのでしょうか?
>
> 「定理」じゃなくて「定義」の問題でしょ。
> 単に「環の定義」を満たしていないだけの話。
環の定義は色々な教科書で見てきましたが、分配する側の演算を可換群に
限定しているものは初めてでした。
可換群と単位的可換半群の違いは逆元を持つかどうかだと思います。
それがどう分配律に影響するのかが、理解できませんでした。
単位的可換半群の方の演算で分配する事はできない証明
といったものは可能なのでしょうか?
> 「分配する方の演算が可換群になっていないといけない」
> のに、それを満たしていないから「環ではない」と説明する方が
> 優れた説明だと言えます。
単純に、分配律は優先順位の低い方の演算で分配しなければならない
といった説明だと自分のような素人でも合点がいくのですが
それだと語弊が生じてしまうのでしょうか。
そもそも群や環の定義で+が加法である必要も、・が乗法である必要もないと
とらえていたのですが、それだと分配律が説明できないですよね..
--
Shinya Hayakawa <tet...@tokyoprogrammer.com>
「分配する側」というのは曖昧ですが,
In article <2003052515125...@tokyoprogrammer.com>
Shinya Hayakawa <tet...@tokyoprogrammer.com> writes:
> 環の定義は色々な教科書で見てきましたが、分配する側の演算を可換群に
> 限定しているものは初めてでした。
していない教科書の例を挙げていただけますか.
集合 R が二つの演算 φ: R×R → R と ψ: R×R → R を伴い,
一つの演算 φ については可換群となり, もう一つの演算 ψ は
どちらの成分についても (Z-加群 (R, φ) に関して) "linear",
つまり,
∀ r, s, t ∈ R, ψ(φ(r, s), t) = φ(ψ(r, t), ψ(s, t)),
∀ r, s, t ∈ R, ψ(r, φ(s, r)) = φ(ψ(r, s), ψ(r, t)),
になっている(分配律が成り立つ)とき, (R, φ, ψ) を「環」と
呼びます.
普通の「可換環」なら, 演算 ψ が「結合的」であり「交換的」
であることも要求しているでしょうし, 単位元 e をもつ, つまり,
∃ e ∈ R, ∀ r ∈ R, ψ(e, r) = ψ(r, e) = r,
であることも要求するでしょう. 一方, 「リー環」なら, 演算 ψ
が「結合的」であったり「交換的」であったりすることは要求
されません. が, 他に要求されることは, 勿論, あります.
> 可換群と単位的可換半群の違いは逆元を持つかどうかだと思います。
> それがどう分配律に影響するのかが、理解できませんでした。
元々分配律は可換群となる方の演算 φ ともう一つの演算 ψ
とを対等に扱うものではありません. 分配律がどちらの演算に
ついても対等に成立するのは, 集合 A の部分集合の全体 P(A)
に集合の結び ∪ と集合の交わり ∩ という演算を考えたもの
のような, 特別の場合だけです.
> 単位的可換半群の方の演算で分配する事はできない証明
> といったものは可能なのでしょうか?
「そういう定義(公理)になっている」ということですので,
「証明」するようなものではない訳ですが, どちらの演算でも
分配する事が出来る場合があることは, 上の (P(A), ∪, ∩)
という例で分かります.
> 単純に、分配律は優先順位の低い方の演算で分配しなければならない
> といった説明だと自分のような素人でも合点がいくのですが
> それだと語弊が生じてしまうのでしょうか。
二項演算を演算子を間に挟む形で書くことにして, φ(r, s)
を r # s で, ψ(r, s) を r & s で, 表したときに,
r & t # s & t
を
(r & t) # (s & t)
のこととする習慣のことですね. この習慣も分配律も二つの
演算を同等に考えてはいないことの結果でしょうが, それが
どちらで分配するかの理由という訳ではないでしょう.
カニエ先生の
In article <2003052423072...@tokyoprogrammer.com>
Shinya Hayakawa <tet...@tokyoprogrammer.com> writes:
% 今月号の数セミを読んでいて、とても気になった内容がありました。
% (おそらく初歩的なモノ..)
%
% 下記 2003/6号 p.41からの引用です。
% <<
% Nに・に関する逆元を付け加えると、非負の有理数の全体Q+になる。・に関し
% ては可換群、+に関しては単位的可換半群、だが、可換環ではない。分配律が成
% り立たないからだ。可換群になっている演算の方で分配しないといけないので、
% x + (yz) = (x + y)・(x + z)
% が要求される。が、これは成り立たない。
% >>
の突っ込み所はそこではなくて,
N = {0, 1, 2, 3, ... } に, その 0 の「積」に関する逆元は
どのように付け加えるのか.
「非負の有理数の全体」は「積」に関して可換群ではない.
「正の有理数の全体」は「積」に関して可換群であるが,
「和」については「単位的」(単位元をもつ)ではない.
というところでしょうか.
--
塚本千秋@応用数学.高分子学科.繊維学部.京都工芸繊維大学
Tsukamoto, C. : chi...@ipc.kit.ac.jp
In article <03052519361...@ims.ipc.kit.ac.jp>
Tsukamoto Chiaki <chi...@ipc.kit.ac.jp> writes:
> 元々分配律は可換群となる方の演算 φ ともう一つの演算 ψ
> とを対等に扱うものではありません. 分配律がどちらの演算に
> ついても対等に成立するのは, 集合 A の部分集合の全体 P(A)
> に集合の結び ∪ と集合の交わり ∩ という演算を考えたもの
> のような, 特別の場合だけです.
この場合, (P(A), ∪) も (P(A), ∩) も可換群ではないですね.
上のは単に, 二つの演算について, どちら側に付いても分配律の
成立する場合があるということだけなので,
> 「そういう定義(公理)になっている」ということですので,
> 「証明」するようなものではない訳ですが, どちらの演算でも
> 分配する事が出来る場合があることは, 上の (P(A), ∪, ∩)
> という例で分かります.
は「環」においての話ではありません.
考えてみれば, (R, +, *) が環であるときは, + についての
単位元 0 と任意の元 r とについて r * 0 = 0 * r = 0 で
あることが (R, +) が加群であることと分配律から出ますから,
もしもう一つの「分配律」も成立しているとすれば,
r = r + 0 = r + ((-r) * 0)
= (r + (-r)) * (r + 0) (!!!)
= 0 * r = 0
となって, 0 以外の元はないことになりますね.
Tsukamoto Chiaki wrote:
> しまった.
もう遅いワ。 ヽ(^。^)ノ
"Shinya Hayakawa" <tet...@tokyoprogrammer.com> wrote in message
news:2003052515125...@tokyoprogrammer.com...
> 環の定義は色々な教科書で見てきましたが、分配する側の演算を可換群に
> 限定しているものは初めてでした。
普通は書いてあると思いますが,当たり前だから書いてないものもあるかもしれ
ません.
> 単位的可換半群の方の演算で分配する事はできない証明
> といったものは可能なのでしょうか?
集合Rに演算+と*が定義されていて,
+について可換群
*について単位的可換半群
a+(b*c)=(a+b)*(a+c)が任意のa,b,cで成立……(A)
とします.+についての単位元を0,*についてに単位元を1,+についてのaの逆元
を-aと記します.
このとき,
0=a+(-a)=a+((-a)*1)=(a+(-a))*(a+1)=0*(a+1)
であり,aは任意ですからa+1も任意なので,任意のaに対し,
0=0*a
となります.これを用いると,任意のaに対し
a=a+((-a)*0)=(a+(-a))*(a+0)=0*a=0
となり,R={0}となります.
以上,条件(A)を満たす代数系はtrivialであることが示されました.
> 単純に、分配律は優先順位の低い方の演算で分配しなければならない
> といった説明だと自分のような素人でも合点がいくのですが
> それだと語弊が生じてしまうのでしょうか。
>
> そもそも群や環の定義で+が加法である必要も、・が乗法である必要もないと
> とらえていたのですが、それだと分配律が説明できないですよね..
ここはおっしゃる意味がよく分かりません.
On Sun, 25 May 2003 19:36:15 +0900
chi...@ipc.kit.ac.jp (Tsukamoto Chiaki) wrote:
> > 環の定義は色々な教科書で見てきましたが、分配する側の演算を可換群に
> > 限定しているものは初めてでした。
>
> していない教科書の例を挙げていただけますか.
例えば「新数学講座-代数学」ISBN4-254-11434-6 (p.6)
「環と体の理論」(p.4-5)
http://www.rimath.saitama-u.ac.jp/lab.jp/fsakai/bk.html
「群の発見」(p.95)
http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/00/5/0067910.html
手元にないので確認できませんが近所の図書館で借りた本も全て同様で
和について可換群となっていなければならない、と明言したものは
無かったと思います。
> 集合 R が二つの演算 φ: R×R → R と ψ: R×R → R を伴い,
> 一つの演算 φ については可換群となり, もう一つの演算 ψ は
> どちらの成分についても (Z-加群 (R, φ) に関して) "linear",
> つまり,
>
> ∀ r, s, t ∈ R, ψ(φ(r, s), t) = φ(ψ(r, t), ψ(s, t)),
> ∀ r, s, t ∈ R, ψ(r, φ(s, r)) = φ(ψ(r, s), ψ(r, t)),
↑文脈よりrをtに置き換えて読みました
>
> になっている(分配律が成り立つ)とき, (R, φ, ψ) を「環」と
> 呼びます.
ふむぅ、線形性というキーワードがあるのですか。
非負の有理数の全体Q+は、+に関して可換群になりませんが
例え、+、・の両方の演算に関して可換群であったとしても
x + (yz) = (x + y)・(x + z)
が成り立たないのは、明らかですよね。
実は演算φ について可換群であることより、演算ψ が線形性を満たす事
が決め手だったのでしょうか。
それとも前者を満たさないと後者も満たされないのでしょうか。
> > 単純に、分配律は優先順位の低い方の演算で分配しなければならない
> > といった説明だと自分のような素人でも合点がいくのですが
> > それだと語弊が生じてしまうのでしょうか。
>
> 二項演算を演算子を間に挟む形で書くことにして, φ(r, s)
> を r # s で, ψ(r, s) を r & s で, 表したときに,
>
> r & t # s & t
>
> を
>
> (r & t) # (s & t)
>
> のこととする習慣のことですね. この習慣も分配律も二つの
> 演算を同等に考えてはいないことの結果でしょうが, それが
> どちらで分配するかの理由という訳ではないでしょう.
なるほど、確かに。
そうなると、どちらで分配するかの決め手は何になるのだろうと
振り出しに戻ってしまいました..
> の突っ込み所はそこではなくて,
>
> N = {0, 1, 2, 3, ... } に, その 0 の「積」に関する逆元は
> どのように付け加えるのか.
>
> 「非負の有理数の全体」は「積」に関して可換群ではない.
> 「正の有理数の全体」は「積」に関して可換群であるが,
> 「和」については「単位的」(単位元をもつ)ではない.
>
> というところでしょうか.
あれ、、0 の「積」に関する逆元は存在しませんよね?
この記事を読んでいても気になったのですが、そもそも自然数の集合は
0 を含まないですよね??
せっかく謎解きして頂いたのに済みません。
こんな調子では面白みも半減ですよね。。
ただ今回の特集で唯一食らいついていけるレベルの記事なので
繰り返し読んでいます。
--
Shinya Hayakawa <tet...@tokyoprogrammer.com>
On Mon, 26 May 2003 03:57:37 +0900
chi...@ipc.kit.ac.jp (Tsukamoto Chiaki) wrote:
> 考えてみれば, (R, +, *) が環であるときは, + についての
> 単位元 0 と任意の元 r とについて r * 0 = 0 * r = 0 で
> あることが (R, +) が加群であることと分配律から出ますから,
> もしもう一つの「分配律」も成立しているとすれば,
>
> r = r + 0 = r + ((-r) * 0)
> = (r + (-r)) * (r + 0) (!!!)
> = 0 * r = 0
>
> となって, 0 以外の元はないことになりますね.
なるほど!これが自分の求めていたものかもしれません。
-- F.K.が示された例も同様ですよね。ありがとうございます。
+についての単位元は、演算・においても
特別な性質を持つものなんですね。
これは演算が和と積である場合にも限らないのかな?
とちょっと気になりました。
--
Shinya Hayakawa <tet...@tokyoprogrammer.com>
On Mon, 26 May 2003 18:27:23 GMT
Shinya Hayakawa <tet...@tokyoprogrammer.com> wrote:
> -- F.K.が示された例も同様ですよね。ありがとうございます。
名前を間違わないようコピー&ペーストしていて
うっかり敬称を付け忘れてしまいました。
大変失礼しました。
塚本さんの文字の用法
In article <03052519361...@ims.ipc.kit.ac.jp> chi...@ipc.kit.ac.jp writes:
>集合 R が二つの演算 φ: R×R → R と ψ: R×R → R を伴い,
>一つの演算 φ については可換群となり, もう一つの演算 ψ は
>どちらの成分についても (Z-加群 (R, φ) に関して) "linear",
>つまり,分配律が成り立つ)とき, (R, φ, ψ) を「環」と呼びます.
を流用させていただくならば、
「R がφについて群になっているかどうか」と
「φとψの間に分配律が成立するかどうか」とは
全く独立な問題です。
「分配律が成立」していて「φについて群にはなっていない」ものを
考えること自体には別に何の問題も無いわけで、
実際元記事の「Q+」がその例ですね。
これ自体は別に何の内部矛盾も無い代数系です。
しかし、そういうものは「“環”とは呼ばない」のです。
ただそれだけの話です。
(勿論、当然の帰結として、環に関する諸定理は適用できませんけど^_^;)
戸田 孝@滋賀県立琵琶湖博物館
to...@lbm.go.jp
In article <2003052701025...@tokyoprogrammer.com>
Shinya Hayakawa <tet...@tokyoprogrammer.com> writes:
> In article <03052519361...@ims.ipc.kit.ac.jp>
> Tsukamoto Chiaki <chi...@ipc.kit.ac.jp> writes:
> > していない教科書の例を挙げていただけますか.
>
> 例えば「新数学講座-代数学」ISBN4-254-11434-6 (p.6)
% R1. R は加法に関して加群である. (p. 12)
> 「環と体の理論」(p.4-5)
> http://www.rimath.saitama-u.ac.jp/lab.jp/fsakai/bk.html
% 環(ring)とは加法群であって, ……
> 「群の発見」(p.95)
> http://www.iwanami.co.jp/.BOOKS/00/5/0067910.html
うちの図書館には入っていなかった. どう書いてありますか.
> 手元にないので確認できませんが近所の図書館で借りた本も全て同様で
> 和について可換群となっていなければならない、と明言したものは
> 無かったと思います。
それぞれのテキストで「加群」「加法群」「アーベル群」その他
「可換群」の別名が使われていませんか. 名はともかく, 要求さ
れている事項はどうなっていますか.
> ふむぅ、線形性というキーワードがあるのですか。
本当は単に Z-加群に積が入っている場合でなく, 何かの体 K に
ついての K-加群, つまりベクトル空間に積が入っている場合の
方が身近だったりしませんか. 「環」ではなく「代数」(algebra)
と呼ばれることになるでしょうが.
# でも, Lie algebra には「リー代数」より「リー環」の方が多く
# 使われている.
> 実は演算φ について可換群であることより、演算ψ が線形性を満たす事
> が決め手だったのでしょうか。
> それとも前者を満たさないと後者も満たされないのでしょうか。
(a + b) * (c + d) = a * (c + d) + b * (c + d)
= (a * c + a * d) + (b * c + b * d),
一方,
(a + b) * (c + d) = (a + b) * c + (a + b) * d
= (a * c + b * c) + (a * d + b * d).
和について群になっているなら,
a * d + b * c = b * c + a * d.
二つの数の積になっている数については和は可換であることが
分配律から出ますね. 積が単位的なら可換でないといけない.
積が bilinear とするなら, 和は可換としておくものでしょう.
"Shinya Hayakawa" <tet...@tokyoprogrammer.com> wrote in message
news:2003052703195...@tokyoprogrammer.com...
> -- F.K.が示された例も同様ですよね。
Tsukamoto氏の記事を読む前に投稿したので重複してしまいましたが,私のは,
普通の意味の環であることを使っていないので,少し違うかな?
それにしても,Hayakawaさんの
> 単位的可換半群の方の演算で分配する事はできない証明
> といったものは可能なのでしょうか?
という問には,環の定義を当り前に受け入れていた私は,虚を突かれました.
*について可換半群(単位元の存在を仮定しない)なだけなら,正の有理数全体
Q+というtrivialでない例がありますが,ほかに面白い例があるのでしょうか?
たくさん有るのならそれなりに興味のもてる対象のように思います.(群概念
に対するsemi-group,quasi-group,groupoidのような広がりがあれば面白い.)
SATO Tatsuya <NOS...@NOSPAM.NO.jp> writes:
>
> 可換環Aに対して、A加群(の同型類)の集合に、直和とテンソル積で
これじゃあ「集合」になりませんね。A加群の濃度を、#A×(アレフ0)
以下に制限しておきます。
> たとえばAの無限個の直和に同型なA加群をV とすると A+V = (A+A)+V
「可算無限個の直和」としておきましょう。
--
佐藤達也@SEG
"F.K." <kuw...@ybb.ne.jp> writes:
>
> *について可換半群(単位元の存在を仮定しない)なだけなら,正の有理数全体
> Q+というtrivialでない例がありますが,ほかに面白い例があるのでしょうか?
それを non-trivial だと言うなら、関数環の部分集合で「正値関数の全体」
が同様な例になりますね。しかし環に拡張できるのでは、あまりnon-trivial
という気はしませんので、他の例を。
可換環Aに対して、A加群(の同型類)の集合に、直和とテンソル積で
加法と乗法を定義すると、加法については可換半群ですが、それ以外の
環の公理は成立しています。この可換半群は、可換群に拡張できるとは
限りません。
たとえばAの無限個の直和に同型なA加群をV とすると A+V = (A+A)+V
ですが、加法が群に拡張できるとすると両辺からVを引いて A=A+A となっ
てしまいます。AとA+A はA加群として同型とは限りませんので、群には
拡張できないことになります。
--
佐藤達也
どうも「普通と逆の結合律」を持ち込むのが個人的にも気色悪いし、
人に説明する上でも見通しが悪くなるような気がします。
というわけで、F.K.さんの証明を書き換えてみますね。
In article <basrmq$do9$1...@caraway.media.kyoto-u.ac.jp> kuw...@ybb.ne.jp writes:
>集合Rに演算+と*が定義されていて,
>+についての単位元を0,*についてに単位元を1,と記します.
だけを踏襲します^_^;
そして、通常の結合律
a * (b + c) = (a * b) + (a * c)
が成立するものとして、
「環」の定義とは逆に
+について単位的可換半群
*について可換群
とし、*についてのaの逆元を1/aとします。
次に、F.K.さんは、まず「a」について式変形した後、
>aは任意ですからa+1も任意なので,任意のaに対し,
と進めていますが、混乱の元なので、
最初から「a - 1」改め「a * 1/0」について式変形します。
#この方針を決めることで、やっと問題の本質に気付きました^_^;
>このとき,
1 = (a * 1/0) * 1/(a * 1/0)
= (a * 1/0) * ( 1/(a * 1/0) + 0 )
= ((a * 1/0) * 1/(a * 1/0)) + ((a * 1/0) * 0)
= 1 + ((a * 1/0) * 0)
= 1 + (a * (1/0 * 0))
= 1 + (a * 1)
= 1 + a
(+ について群ではない=逆元の存在が保証されていないので、
直ちに a = 0 とはなりません)
>これを用いると,任意のaに対し
a = a * 1
= a * ((1/a) + 1)
= (a * (1/a)) + (a * 1)
= 1 + a
= 1
>となり,
R={1}
>となります.
以上の証明を追ってみると、*についても+についても可換性を全く使っていません。
(使わなくても良いようにF.K.さんの理路を少し変更してあります)
+については結合律さえ使っていない。
つまり、
乗法加法の双方に単位元が存在
乗法には結合律が成立
という、「環」の定義に較べるとかなりゆるい条件の元で
通常の分配律が成立
乗法の逆元が(零元=加法単位元まで含めて)存在
とすると、系がtrivialになってしまうということですね。
「体」を定義する際に、乗法に関しては
「全体から零元を除いた集合が群になっている」としますね。
これは実数体について「零に逆数は無い」という“常識”の一般化ですから、
何の気なしに受け容れていたのですが、
この「零元を除く」という定義自体に
ここまで深刻な影響力があるということはうっかりしてました。
考えてみれば、塚本さんが「しまった.」となった集合演算についても、
どこが「環」ではないかというと「逆元不存在」が本質的ですよね。
In article <bb0206$i7a$1...@caraway.media.kyoto-u.ac.jp> kuw...@ybb.ne.jp writes:
>それにしても,Hayakawaさんの
>> 単位的可換半群の方の演算で分配する事はできない証明
>> といったものは可能なのでしょうか?
>という問には,環の定義を当り前に受け入れていた私は,虚を突かれました.
まあ、「てきない証明」という言い回しは的外れですけど、
問題提起としては極めて深かったということでしょうか。
戸田 孝@滋賀県立琵琶湖博物館
to...@lbm.go.jp
In article <bb0206$i7a$1...@caraway.media.kyoto-u.ac.jp>
"F.K." <kuw...@ybb.ne.jp> writes:
> 私のは,普通の意味の環であることを使っていないので,少し違うかな?
御意.
> それにしても,Hayakawaさんの
> > 単位的可換半群の方の演算で分配する事はできない証明
> > といったものは可能なのでしょうか?
> という問には,環の定義を当り前に受け入れていた私は,虚を突かれました.
私も質問の意味を少し勘違いしていました.
> *について可換半群(単位元の存在を仮定しない)なだけなら,正の有理数全体
> Q+というtrivialでない例がありますが,ほかに面白い例があるのでしょうか?
+ については可換群で, ということですね. 正の実数の全体.
# 思い付かない.
<y6ar86k...@piloo.lightcone.jp>の記事において
NOS...@NOSPAM.NO.jpさんは書きました。
> 可換環Aに対して、A加群(の同型類)の集合に、直和とテンソル積で
> 加法と乗法を定義すると、加法については可換半群ですが、それ以外の
> 環の公理は成立しています。この可換半群は、可換群に拡張できるとは
> 限りません。
>
> たとえばAの無限個の直和に同型なA加群をV とすると A+V = (A+A)+V
> ですが、加法が群に拡張できるとすると両辺からVを引いて A=A+A となっ
> てしまいます。AとA+A はA加群として同型とは限りませんので、群には
> 拡張できないことになります。
無限次元の加群をひっぱりださなくても、有限次元の加群に限っても
R を実数体, A=R[X,Y,Z]/(X^2+Y^2+Z^2-1) として、
写像 f : A^3 --> A を (u, v, w) --> xu+yv+zw と定義して
E をその核 (Ker(f)) としてやると、
A^3 と A+E (直和) は(A加群として)同型になりますが、
E は自由A加群ではない ( つまり E と A^2は同型でない )
という例もありますね。
桂 英治@(株)横浜インテリジェンス
(kat...@hamaint.co.jp)
1 = 1 + a
を証明したのと同様の手順で
1 = a + 1
を証明しておく必要がありますね。
もう少し「複雑に入り組んでいない」理路は無いかな?
考えてみます。
戸田 孝@滋賀県立琵琶湖博物館
to...@lbm.go.jp
Eiji KATSURA writes:
> # こういう話題にはつい反応してしまう。
塚本さんの返答などを見ると、F.K.氏の「ほかに面白い例があるのでしょうか?」
とは違う話になっているような気もしますが…
> 無限次元の加群をひっぱりださなくても、有限次元の加群に限っても
>
これを期待しておりました。
> R を実数体, A=R[X,Y,Z]/(X^2+Y^2+Z^2-1) として、
> 写像 f : A^3 --> A を (u, v, w) --> xu+yv+zw と定義して
> E をその核 (Ker(f)) としてやると、
> A^3 と A+E (直和) は(A加群として)同型になりますが、
> E は自由A加群ではない ( つまり E と A^2は同型でない )
微分幾何的に言うと
2次元球面上の接バンドルは自明でないが、1次元自明バンドル
(R^3に埋め込んだときの法線の束)とのWhitney和は自明になる。
という事ですね。しかしこれだと、加群(の同型類)の作る代数
(+,×を持ち、分配的だが、+についても半群止まりの代数)を
具体的に書くのが(加群を射影加群に限っても)難しいです。
# 難しい所をバッサリ切り捨てたものがK理論??
私の例だとAを体にすれば簡単ですが、今度は簡単過ぎますねえ。
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**** 佐藤達也@SEG ****
statuya...@seg.co.jp
元々は「逆の分配律を持込むとtrivialになる」という話だったのですが、
これを通常の分配律を前提とした表現で言い換えると
「乗法に関して(全体が)群になっているとtrivialになる」となります。
そして、
In article <bb2a8h$uut$1...@bluegill.lbm.go.jp> I write:
> 乗法加法の双方に単位元が存在
> 乗法には結合律が成立
>という、「環」の定義に較べるとかなりゆるい条件の元で
> 通常の分配律が成立
> 乗法の逆元が(零元=加法単位元まで含めて)存在
>とすると、系がtrivialになってしまうということですね。
つまり、
「零元(加法単位元)に乗法逆元が存在するとヤバい」
ということが判ってきました。
#というわけで、この先、加法単位元の存在は当然に仮定しますし、
#乗法逆元の有無を考えるということは、
#乗法単位元の存在も当然に仮定するということになります。
ここで「実数体」や「整数環」に関する“常識”を振り返ってみると、
「零元には乗法逆元が存在しない」ということは、
「零元に何を乗じても零元である」……(*)
ということと裏腹です。
一般論として、(*)が成立してかつ「零元に乗法逆元が存在」する場合、
乗法に結合律が成立するならば、加法と乗法の単位元が等しくなり、
その結果、系はtrivialになります。
1 = 1 * 1
= (0 * 1/0) * 1
= 0 * (1/0 * 1)
= 0 * 1/0
= 0
このとき、任意のaについて
a = a * 1 = a * 0 = 0
では、(*)が成立するのはどういう場合でしょうか?
例えば、
(A) 通常の分配律が成立して、乗法に結合律が成立する場合、
乗法逆元が存在する元については(*)が成立する
a * 0
= 0 + a * 0
= (1 * 0) + (a * 0)
= ((a * 1/a) * 0) + (a * 0)
= (a * (1/a * 0)) + (a * 0)
= a * ((1/a * 0) + 0)
= a * (1/a * 0)
= (a * 1/a) * 0
= 1 * 0
= 0
(左右逆も同様:ただし要求される分配律の左右が逆となる)
#なお、体など「零元にのみ逆元が存在しない」系の場合、
#この方針だと零元同志の積については別証明が必要ですが、
#以下のように結合律を仮定せずに分配律のみで証明可能です。
0 * 0
= (0 * 0) + 0
= (0 * 0) + (0 * 1)
= 0 * (0 + 1)
= 0 * 1
= 0
あるいは、
(B) 通常の分配律が成立して、加法に結合律が成立し、
加法逆元の存在も保証されている場合、(*)が成立する
a * 0
= (a * 0) + 0
= (a * 0) + ((a * 0) - (a * 0))
= ((a * 0) + (a * 0)) - (a * 0)
= (a * (0 + 0)) - (a * 0)
= (a * 0) - (a * 0)
= 0
(左右逆も同様:ただし要求される分配律の左右が逆となる)
というわけで、
(A)と「零元に乗法逆元が存在」
(B)と「零元に乗法逆元が存在」と「乗法に結合律が成立」
の2通りの条件を発見したのですが、
もっと緩い条件ってあるでしょうか?
戸田 孝@滋賀県立琵琶湖博物館
to...@lbm.go.jp
In article <bb4e81$mv3$1...@bluegill.lbm.go.jp>
toda <to...@lbm.go.jp> writes:
> 「零元に何を乗じても零元である」……(*)
> 一般論として、(*)が成立してかつ「零元に乗法逆元が存在」する場合、
> 乗法に結合律が成立するならば、加法と乗法の単位元が等しくなり、
> その結果、系はtrivialになります。
乗法の結合律は必要ありません. 1/0 を 0 の乗法逆元とすれば,
1 = 0 * 1/0 = 0.
ついでに言うと、
「1 = 0」の証明に際しては、
(A)では、加法単位元についてのみ乗法逆元の存在を仮定し、
(B)では、乗法単位元についてのみ加法逆元の存在を仮定すれば足ります。
((A)では直接には 1/0 の乗法逆元を要求するが、
1/0 自身が存在すれば定義より自明
(B)では直接には -(1/0 * 0) の存在を要求するが、
1/0 の定義より -1 に等しい)
しかし、その後で「a * 0 = 0」を証明する際に、
任意の元について逆元が必要になります。
(厳密には(B)では「a * 0」の形で表現可能な任意の元)
というわけで、この件に関しては、最終的な必要条件は同じです。
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ゴチャゴチャになってしまったので、整理し直すと以下のようになります。
単位元を有する閉じた演算が2種類(「加法」「乗法」と呼ぶ)存在する系で
・加法と乗法の間に「通常の分配律」が成立する
・加法単位元(零元)に乗法逆元が存在する
という条件を満たすものが
trivialなもの(元が1個しか無いもの)しか存在しなくなる条件の例
(A)乗法に結合律が成立し、全ての元に乗法逆元が存在する
(B)加法に結合律が成立し、全ての元に加法逆元が存在する
戸田 孝@滋賀県立琵琶湖博物館
to...@lbm.go.jp