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クロスファイア/宮部みゆき

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ARAKI Yuusuke

未読、
2002/11/08 8:31:292002/11/08
To:
「火車」が一番と思っていて、超能力モノはさほど好みではない
のですが、これは結構面白かったです。但し、終盤を除き。

こ、このエンディングは何だ…。まるで打ち切りになった週刊少
年ジャンプ作品のような。倉田かおりは、そしてガーディアンはど
うなるんですかー(叫)。
--

田中 洌

未読、
2002/11/12 17:27:202002/11/12
To:

飛脚が後添いの話を持ってくるところから楢山節考の物語は始まる
食物に対する頑として厳しい自然界の戒律に22軒の村人は生死を運命付けら
れていて、共同体の最大の関心は口をどう減らすかに向けられ、収穫をどう増
やすかには向けられない。
孫のけさ吉は辰平の再婚に反対する。16歳だが池の前の松やんのことが念頭
にある。
祭りの日玉やんが来る。
雨屋の亭主が盗人する。雨屋は代々盗人の家系らしい。
玉やんが臨月に近づき、おりんは曾孫を見ることを恥じる。
おりんは心を決める。
息子の辰平は感じる。
楢山行きの経験者を集め、振舞い酒をする。
そして行く。
世界は単純だが岩のようにどうにもならない現実のようだ。そこには搾取も租
税も地主も、従って官憲も存在しない。姥捨てという共同体の叡智の総和が自
然の営みのように、山々とともに連綿と存在するだけだ。原初的な夢、政、摂
理が永劫の彼方から人々を支配していて、まるで幻想のなかの故郷に戻ってき
たかのような安寧と懐かしさがある。語り口にはわらしべ歌を耳にしているよ
うな悲しみとユーモアがある。心地よい入眠現象に似た陶酔と安らかさが響い
てくる。
労働に重きを置いていないからだろうか。
不思議な作品だ。
きれいに死のうとするおりんといぎたなく生に執着する又やんとの対比を通し
て、作者は人間の死を幻想の彼方に謳いあげ、時空を越えて解き放ったかのよ
うだ。
楢山詣でのクライマックスの描写は美しくも慄然とさせられる。おりんは丈夫
な歯を恥じ火打石で砕き、どぶろくを甕いっぱい用意し、しきたりに従って、
きれいな気持ちで楢山に行く。岩場には白骨が散乱し、死骸に烏がたかる。
雪が降る。
辰平は掟を破り、「かーちゃんの言っていたようにやっぱり雪が降ってきた
な」といいに戻る。そこがいい。
縄を噛み切って逃げ惑っていた又やんは、倅に括りつけられて“七谷”へ蹴り
落とされる。縄の隙間から指を出し倅の襟にすがりつく。
谷底では烏が群れ、黒々と湧き上がる。
『ひかりごけ』の人肉食いをはじめ、多くの衝撃的な問題作の遥か対極にあっ
て『楢山節考』は凛然と輝く。

平成11年版新潮文庫で奥付に65刷とあり延々と読み継がれていることにな
ぜともなくひとり感動した。

                                
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田中 洌
   ta...@nifty.com


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