体験記
何時の頃だったか記憶が曖昧ですが、おそらく20年ほど前のことだと
思います。当時、私はよく軽い疣痔になっていました。清潔にして軟膏
でも塗っておけば自然に消えていたのですが、その時はあまり良くなら
ず、おまけに友人の兄さんが痔を手術して大変だったと聞かされたの
で、診察を受けてみることにしたのです。近所は恥ずかしいのでバスで
20分ほどの所にある診療所を選びました。
行ってみると70歳くらいの男性医師と50歳代の看護婦しかいない
小さなところで、外科と肛門科を専門にしていました。患者も多くな
く、町はずれなので好都合です。
待合室で待っているとき気づいたのですが、そこは診察室との境が型板
ガラスのスクリーンで、それに面して診察台があり、ボンヤリとでは
あっても患者の様子が見えるのです。当然ながら声も少し漏れてきてい
ました。不安を抱えながら診察室にはいると、一番奥に手術台(足置き
台が装着)の置かれた小部屋があり、下の診察はそこでするのだろうと
安心しましたが、現実は一番恐れていた診察台でした。
ズボンと下着を膝まで下げさせられ、両膝を抱えた姿勢での診察です。
なにもかも丸出しの状態で医師の指を肛門に挿入されるのも嫌でした
が、そんな姿を中年とはいえ、女性に見られるのは本当に情けないもの
でした。
疣痔で脱肛気味(脱肛はないと思いましたが、医学的にはそうなのか)
とかで、肛門内部に薬を塗布されてから、堅く丸めた大きな脱脂綿を当
てられ、長い絆創膏で何重にも肛門を封印されました。私は不安になっ
て、排便はどうするのかと質問しましたら、看護婦が平然と答えまし
た。
「毎日通院して貰って、その時に浣腸で排便して貰います」
翌朝、私は強い便意を感じながら診療所を訪れました。なぜなら昨日は
朝の排便(私の習慣)を済ませる前に処置を受けたので2回分の便意を
抱えていたからです。
診察台で恥ずかしい姿勢をとると、絆創膏が次々に外されるのですが、
肛門の毛にも張り付いているので相当な痛みです。そこへ看護婦がニコ
ニコとビーカーをかき混ぜながらやってきて「浣腸しますから」と大き
な声で言いました。待合室まで筒抜けです。医師は100ccほどの液
体をガラス製の浣腸器に吸い上げると、カテーテルなしで肛門に直接挿
入しました。注入が終わると、私はカーテンで隔てられたもう一つの診
察台に移動させられ(側にはトイレが設置されていました)、看護婦が
タイマーをセットします。すぐに次の患者(女性)が呼ばれて、隣では
診察が始まりました。
強い便意がある上に受ける100ccのグリセリン浣腸の効き目は強烈
で体の震えが止まりません。看護婦がいれば排泄を許されたでしょう
が、タイマーですし、恥ずかしくて隣に声を掛けることも出来ませんで
した。私は今でもトイレまで行くことができ、下着を汚さずに済んだの
が奇跡だと思っています。
一日中、肛門に違和感を覚えながら生活し、それが許されるのは浣腸
されるときだけという生活が10日間ほど続いたと記憶しています。私
は病院で浣腸された経験は何度かありますが、この医院での浣腸は毎回
強烈で、おそらく看護婦が1日1回しか排泄できない私のためにグリセ
リン濃度を高めていたのだろうと判断していますが、毎回ニコニコしな
がら浣腸液を持ってきたところをみると、濃度を決めるのが彼女の密か
な楽しみだったのかもしれません。
当初から診察結果と処置には疑問を抱いていましたが、一向に治癒する
気配もなく、結局私は他の肛門専門病院に移りました。そこでは脱肛と
診断されませんでしたし、浣腸も無しで比較的簡単に治りましたから、
あの診療所はやはり変だったと思っています。