今回は、Oracleの冒頭陳述
http://www.oracle.com/us/corporate/features/opening-slides-1592541.pdf
の内容を見てみたいと思います。
【Oracleは、陪審員に、何を印象づけようとしているのか?】
一見すると、Oracleは、JavaのAPIは著作権で保護されていて、Googleがそれを無断で利用したのは違法だと論証しようとしているように見えます。以下は、僕の個人的な見解ですが、それは、Oracleの本当の狙いではないと思います。す。Oracleの最大の狙いは、大量のOracleのJava
APIとAndroidのJava
APIのページを見せつけ、「全く同じじゃないか」と、GoogleがOracleの技術を丸ごとパクっているという印象を、12人の陪審員に与えようとしているのだと思います。
かつては、Oracleは、Javaの7件の特許を侵害しているとして、Googleを訴えていました。前回も述べたように、米特許商標局はその一部を認めず、Oracleも5つの特許権侵害の訴えを取り下げ、現在は2つの特許のみについて争われていました。裁判所は、両者に和解を勧告、Google側もそれを受け入れる意向を示しましたが、Oracle側は賠償金額を不服として、今回の裁判がはじまりました。先の裁判では、陪審員の判断ではなく、米特許商標局の特許権無効の判断が、決定的な役割を果たしたことに留意してください。
【Oracleが論証すべきこと -- 言語のAPIの著作権保護の正当性】
ただ、今回の裁判の主要な舞台は、特許権の侵害の有無をめぐるものではありませんでした。特許権訴訟が不調と見たOracle側は、戦術を全面的に転換して、GoogleがJavaのAPIを利用していること自体が、Oracleの持つ権利に対する侵害だという主張を前面に掲げます。
これまで、Javaに限らず、言語のAPIの利用は、著作権保護の対象とは見なされてきませんでした。それは、コンピュータの世界では暗黙のうちに了解されてきた常識というべきものです。言語のAPIも著作権保護の対象だと言うOracleの主張は、全く新しいものです。ただ、一般の人がどう考えるかは分かりません。「無断で、全く同じものを使うのは、よくないんじゃないか」と考える人がいても不思議ではありません。そして、それこそがOracleが陪審員に期待していることで、僕が個人的にはもっとも危惧していることの一つです。
今回の訴訟で、本来、Oracleが行うべきことは、言語のAPIが著作権で保護されるのは妥当なことであるという、彼らの新しい主張を論証することであったはずです。残念ながら、そうした展開は、冒頭陳述にはありません。あたかも、それは自明のことであるように、議論を進めています。それが、そんなに自明のことなら、特許なんかで争わないで、最初から、APIの著作権で争うことも出来たはずです。Oracleの主張には、一貫性がないように思います。
【改めて、言語のAPIの著作権保護の主張について】
言語とそのAPIの作成が、創造的な行為であることについては、僕は、全く異論はありません。そのことと、それが著作権の対象として保護されるべきだと主張するのは、全く別のことです。
例えば、Javaでプログラムを書く際、Java.langのStringクラスを使うこと、java.ioのread/writeメソッドを使うこと、java.netのSocketクラスを使うこと、java.utilのArrayクラスを使うこと、これら全てに、APIの著作権者保有者であるというOracleの権利が及ぶのでしょうか?
前回は、JavaのAPIを全面的に取り入れている、Scala,
Groovy等の例をあげましたが、Oracleの主張を額面通りに受け止めれば、こうした主張は、オープンソースのJavaのプロジェクト、Tomcatであろうが、Springであろうが、Hadoopであろうが、それがJavaで書かれたものである以上、潜在的には、Oracleが権利を持っているという主張と異なりません。
前回も述べたように、これまでは、こうしたJavaのAPIを用いて作成されたプログラムのみが、プログラム作成者の著作物と見なされ、権利保護の対象と考えられてきました。そうした了解によって、ビジネスの世界でも、オープンソースの世界でも、Javaの利用は大きく進んできました。今回の訴訟でのOracleの主張は、こうしたイノベーションに水をかける、きわめて危険なものだと思います。
【アメリカの裁判事情】
僕は、Oracleの本当の狙いが、JavaのAPIの著作権を認めさせようというところにあるとは思っていません。それは、Oracleにとっても、多くの開発者のJava離れを誘発し、「OracleのJava」自体を窒息しかねません。裁判所の判事の訴訟指揮を見ても、JavaのAPIの著作権の有無の判断を陪審員に委ねようとはしていないように見えます。冒頭にも述べましたが、Oracleの狙いは、Googleが何かしら不当なことをしているという予断を陪審員に与えるために、APIの著作権問題を持ち出しているのだと思います。どうして、こうした法廷戦術を取っているのか?
そこには、アメリカの裁判の特殊性が、影を落としています。
ネットで、「パテント・トロール,テキサス州東地区裁判所,そして陪審審理」というドキュメントを見つけました。
http://www.jpaa.or.jp/activity/publication/patent/patent-library/patent-lib/200911/jpaapatent200911_037-048.pdf
僕には、理不尽に思えるOracle側の主張も、以下の観点から見れば、きわめて計算尽くされた合理的なものであるのが分かると思います。ただ、僕は、こうしたアプローチは、どこか間違っていると感じています。
次回は、Oracleが裁判で意図的に語ろうとしなかったものは何かを明らかにして、あわせて、アメリカの特許法改革の動きを紹介したいと思います。
【資料】
「パテント・トロール,テキサス州東地区裁判所,そして陪審審理」からの抜粋。
4.陪審訴訟における勝訴の条件
(a)背景
「米国の特許訴訟における陪審員は,他国では考えられない高額の損害賠償を認めることが珍しくない。」
「特許訴訟は,大きな利益を期待することができるものである。莫大な損害賠償を獲得したり,競争相手を廃業に追い込むことにより,利益を増大させることができる米国特許侵害訴訟は,非常に魅力的なビジネス戦略になり得るのである。この戦略を有効に活用するためには,陪審審理における適切な対応方法を習得しておくことが前提となる。」
(b)主張を単純化する
「米国においては,陪審員は一般市民により構成され,技術や法に関する格別な知識を有していることは要求されていない。このため,単純,明快で,直接的であること,陪審員への対応は常にこれらの基本的な考え方に基づいていなければならない。」
(c)量より質を重視する
「陪審員はしばしば過剰な情報量に圧倒されてしまう場合がある。特許訴訟は特に複雑な問題点を含む場合が多い。それ故,逆に弁護士は,陪審員が判断するのに必要以上の情報を与えることを避けなくてはならない。」
(d)事実に沿った理解し易いストーリーを構築する
「訴訟の勝敗は,紛争における事実関係に法を適用することによって決定される。従って弁護士は,事実関係を,陪審員が理解し共感できるような分かりやすいストーリーを描くように整理すべきである。」
「説得力あるストーリーの構成は,陪審員を「正しい」方向に導くための鍵である。つまり,陪審員は,「なるほど !」と納得できるストリーを求めているのである。」
こんにちは、飯塚です。大変重要なメールありがとうございます。
平成23年 秋期 基本情報技術者 午前 問79
著作権法において,保護の対象とならないものはどれか。
ア インターネットで公開されたフリーソフトウェア
イ ソフトウェアの操作マニュアル
ウ データベース
エ プログラム言語や規約
とあり、正解はエとなっていますので、プログラム言語は著作権保護の対象にはならないのだと思いますが、一方、
String.javaのソースには
* Copyright (c) 2006, Oracle and/or its affiliates. All rights reserved.
* ORACLE PROPRIETARY/CONFIDENTIAL. Use is subject to license terms.
とありますので、APIの著作権を主張しているように思います。
Javaは、HelloWorldを出力するにもAPIを利用しなければいけません。
プラットフォーマーの横暴のようにも思えますが、もう少し自分でも考えてみたいと思います。
2012年4月30日20:48 fujio maruyama <fujio.m...@gmail.com>:
> _______________________________________________
> members mailing list
> mem...@www.java-users.jp
> http://www.java-users.jp/mailman/listinfo/members
>
--
以上、宜しくお願いします。
飯塚 康至
> 平成23年 秋期 基本情報技術者 午前 問79
に、出題されていたのですね。これは、面白い。
IPAは、「プログラム言語や規約」は、著作権保護の対象とは
考えていないということです。これは、これまでの常識だったと思います。
重要なのは、飯塚さんが指摘した、Stringクラスの著作権表示です。
これは、ヒドい。
> * Copyright (c) 2006, Oracle and/or its affiliates. All rights reserved.
> * ORACLE PROPRIETARY/CONFIDENTIAL. Use is subject to license terms.
僕、Javaとのつき合い長いのですが、こんな著作権表示、今まで
なかったと思います。今、帰省中で、以前のJavaのソースコードに
アクセス出来ないので確かめられないのですが、絶対、こんなのなかったはずです。
どこかの時点で、改悪されたのですね。
どうして、これが、オープンソースなんだろ。
2012年5月1日9:34 飯塚康至 <iiz...@aa.mbn.or.jp>:
> --
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> このグループに投稿するには、android-g...@googlegroups.com にメールを送信してください。
> このグループから退会するには、android-group-j...@googlegroups.com にメールを送信してください。
> 詳細については、http://groups.google.com/group/android-group-japan?hl=ja からこのグループにアクセスしてください。
>
| 第10条第3項で以下のように言語や規約やアルゴリズムは著作物じゃないと書いてあります。 第一項第九号に掲げる著作物に対するこの法律による保護は、その著作物を作成するために用いるプログラム言語、規約及び解法に及ばない。この場合において、これらの用語の意義は、次の各号に定めるところによる。 | |
| 一 プログラム言語 プログラムを表現する手段としての文字その他の記号及びその体系をいう。 | |
| 二 規約 特定のプログラムにおける前号のプログラム言語の用法についての特別の約束をいう。 | |
| 三 解法 プログラムにおける電子計算機に対する指令の組合せの方法をいう。 | |
> このグループに投稿するには、android-group-ja...@googlegroups.com にメールを送信してください。
> このグループから退会するには、android-group-japan+unsubscribe@googlegroups.com にメールを送信してください。
> 詳細については、http://groups.google.com/group/android-group-japan?hl=ja からこのグループにアクセスしてください。
>
java.langパケージのStringクラスのCopyRight表記に着いてです。
いろいろ、情報があったのですが、最近出たばかりの、Java SE 7u4の
ソースコードを、http://www.oracle.com/technetwork/java/javase/downloads/index.html
からダウンロードして確かめてみました。
/*
* Copyright (c) 1994, 2010, Oracle and/or its affiliates. All rights reserved.
* DO NOT ALTER OR REMOVE COPYRIGHT NOTICES OR THIS FILE HEADER.
*
* This code is free software; you can redistribute it and/or modify it
* under the terms of the GNU General Public License version 2 only, as
* published by the Free Software Foundation. Oracle designates this
* particular file as subject to the "Classpath" exception as provided
* by Oracle in the LICENSE file that accompanied this code.
*
* This code is distributed in the hope that it will be useful, but WITHOUT
* ANY WARRANTY; without even the implied warranty of MERCHANTABILITY or
* FITNESS FOR A PARTICULAR PURPOSE. See the GNU General Public License
* version 2 for more details (a copy is included in the LICENSE file that
* accompanied this code).
*
* You should have received a copy of the GNU General Public License version
* 2 along with this work; if not, write to the Free Software Foundation,
* Inc., 51 Franklin St, Fifth Floor, Boston, MA 02110-1301 USA.
*
* Please contact Oracle, 500 Oracle Parkway, Redwood Shores, CA 94065 USA
* or visit www.oracle.com if you need additional information or have any
* questions.
*/
となっています。
飯塚さんのおっしゃる、
* Copyright (c) 2006, Oracle and/or its affiliates. All rights reserved.
* ORACLE PROPRIETARY/CONFIDENTIAL. Use is subject to license terms.
という表記は、JDK1.7からはなくなっているようです。
ソースレベルでは、OpenJDKと同じです。
現在では、JDK1.6も、先のOracleのページからダウンロード出来るものは、
OpenJDK1.6のソースですね。
そのあたりの関係は、http://openjdk.java.net/projects/jdk6/ の
Genealogyというセクションの図に、まとめられています。
The decision to open source the JDK code base came late in the life
cycle of the development of JDK 6 so a build of JDK 7 was the first to
be published as open source. By the time JDK 7 was published as
OpenJDK 7, the first post-GA update to JDK 6, 6u1, had already
shipped.
要するに、Javaをオープンソースにするという決定が、JDK6の開発途中で
なされたために、オープンソースとして公開されたのは、JDK7が最初であること。
このJDK7が出た時には、別の系統のJDK6,6u1が、既に公開されていた。
However, an open source implementation of the Java SE 6 specification
was needed as well. After considering the alternatives, OpenJDK 7
build 20 was chosen as the basis of a backward branch to create
OpenJDK 6 by removing from the OpenJDK 7 sources changes inappropriate
for a Java SE 6 implementation.
ただ、Java SE 6のオープンソース化のニーズがあったので、OpenJDK6を、OpenJDK 7 build 20
をベースに作り出した。(これは、普通の順序とは、逆ですね)
これで、すっきりしました。
オープンソース化以前の、JDK1.3, 1.4, 1.5は、Sunのライセンス下にあったのですが、
JDK6, JDK7は、きちんと、GPLv2のCopyRight表記がされているということです。
2012年5月2日21:33 fujio maruyama <fujio.m...@gmail.com>:
> 丸山です。
>
> これは、Sun時代から受け継がれたものなんですね。
> 確かに、かつてのSunのJavaは、オープンなものとは言えなかったのかも。
>
> jdk 1.3.1では This software is the proprietary information of Sun
> Microsystems, Inc. Use is subject to license terms.
> 1.4.2では Copyright 2003 Sun Microsystems, Inc. All rights reserved. SUN
> PROPRIETARY/CONFIDENTIAL. Use is subject to license
> JDK1.5.0_022 では、SUN PROPRIETARY/CONFIDENTIAL. Use is subject to license terms.
> DK1.6.0_031 では、ORACLE PROPRIETARY/CONFIDENTIAL. Use is subject to
> license terms.
>
> でも、JDK1.6は、2006年に出たものですが、今見ると、Oracleの
> CopyRight表示になっていますね。これは、Oracleによる
> Sun買収以前ですね。1.6までは、さかのぼって、CopyRightの変更を
> しているんですね。でも、JDK1.5は、Sunのまま。なんか釈然としません。
>
> 2006年末のJavaのオープンソース化の時に、CopyRightの表示は
> 変わったのでしょうか?
>
> 今、OpenJDKのソースをダウンロードして、StringクラスのCopyRight表示を
> 見てみました、長いですが、こうなっています。
>
> /*
> * Copyright (c) 1994, 2010, Oracle and/or its affiliates. All rights reserved.
> * DO NOT ALTER OR REMOVE COPYRIGHT NOTICES OR THIS FILE HEADER.
> *
> * This code is free software; you can redistribute it and/or modify it
> * under the terms of the GNU General Public License version 2 only, as
> * published by the Free Software Foundation. Oracle designates this
> * particular file as subject to the "Classpath" exception as provided
> * by Oracle in the LICENSE file that accompanied this code.
> *
> * This code is distributed in the hope that it will be useful, but WITHOUT
> * ANY WARRANTY; without even the implied warranty of MERCHANTABILITY or
> * FITNESS FOR A PARTICULAR PURPOSE. See the GNU General Public License
> * version 2 for more details (a copy is included in the LICENSE file that
> * accompanied this code).
> *
> * You should have received a copy of the GNU General Public License version
> * 2 along with this work; if not, write to the Free Software Foundation,
> * Inc., 51 Franklin St, Fifth Floor, Boston, MA 02110-1301 USA.
> *
> * Please contact Oracle, 500 Oracle Parkway, Redwood Shores, CA 94065 USA
> * or visit www.oracle.com if you need additional information or have any
> * questions.
> */
>
> こちらは、きちんとしていますね。
>
> 2012年5月2日19:42 Takayuki Okazaki <takayuki...@gmail.com>: